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» 2007年03月13日 17時34分 UPDATE

「著作権保護期間、作家が選べるシステムを」――延長めぐる議論再び (1/2)

著作権保護期間を70年に伸ばすべきか否かについて考えるトークセッションが開かれた。延長派と延長反対派の溝は埋まらないが、一部で意見の一致も見えてきた。

[岡田有花,ITmedia]

 著作権保護期間を、著作者の死後70年に引き伸ばすか、現状の50年のまま維持するか――昨年から活発な議論が交わされているテーマについて3月12日、都内でトークイベントが開かれた。延長派・延長反対派の溝は埋まらないいものの、「著作物の2次利用形態を作家自身が指定でき、許諾簡易に得られるシステム作りが必要」という方向ではおおむね一致。システムの実現可能性について議論が交わされた。

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 また「死後50年以上も残るのは例外的に長命な著作物。例外処理を法律で一般化すべきではない」という意見や、「議論が“著作権業界”だけで行われているのが気持ち悪い。著作権について考えたこともないような、一般の人も入れた“平場”で考えるべき」とする意見も。松本零二さんが主張する「延長が創作意欲を高める」という考え方には反対意見が多かった。ブログや掲示板、Web日記など一般ユーザーによるネット上での創作は、質が低いものが多いためプロの仕事とは切り分けるべき、という意見も上がった。

 イベントには、延長派と、延長反対派からそれぞれ2人が参加した。延長派は、作家で日本文芸家協会副理事長の三田誠広さんと、写真家で、日本写真著作権協会常務理事の瀬尾太一さん。反対派は、ノンフィクション作家の佐野眞一さん、情報セキュリティ大学院大学副学長の林紘一郎さん。音楽ジャーナリストの津田大介さんがコーディネーターを務めた。

これまでの議論と経緯

 日本の著作権法では、一般著作物の著作権・著作隣接権は著作者の死後50年間保護されるが、米国や英国、フランスなどでは70年間。「日本も国際標準に合わせて70年に延長すべき」という意見が権利者団体などから上がっており、権利者団体から成る「著作権問題を考える創作者団体協議会」が発足。文化庁に対して延長を求める要望書を提出した。

 これを受け、保護期間延長に反対するクリエイターや、中立的な立場の作家などが「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」(「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」から改名)を発足。十分な議論なしに保護期間を延長しないよう訴え、延長賛成派を交えたシンポジウムを開くなど積極的な活動を展開している。今回のシンポジウムも同フォーラムが主催。同フォーラムには12日付けで、ミュージシャンの坂本龍一さんが新たに参加している。

 また、文化庁の文化審議会著作権分科会は12日、この問題に関して議論する「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」をに設置。津田さんや三田さんなど、トークイベントに参加したメンバーも委員に名を連ねている。

著作物の一元管理システムの理想

 著作物の2次利用許諾は、古いものほど取得が難しい。特に、作家が亡くなった後2次利用する際は、死後50年経って著作権フリーにならない限り、相続人全員から許諾を取らなくてはならない。保護期間がさらに20年延びると許諾取得は一層難しくなり、著作物の流通を阻害する――延長反対派からはこんな意見が出ている。

画像 三田さん

 延長賛成派の三田さんは、ネット上に権利者を網羅するデータベースを構築し、権利者を簡便に検索・許諾が取れるシステムを構築することを提案。この仕組みができれば保護期間が50年でも70年でも、手間はそれほど変わらないはずだと語る。

 データベースには、自分の作品の2次利用の形態を、作家自身が指定できる仕組みを内包。例えば「ネット上の再配布はフリーにする」、「死後はパブリックドメインにするが、著作権は保持するから、勝手に書籍化しないように」などと指定できるようにする、という。

 著作者が無名で、亡くなってから何年も経ったものなど、権利者を特定しにくいコンテンツについては、簡便な裁定制度を新設して安価に利用可能になるよう、文化庁などに働きかけていく。「著作者の多くは、死んだ後まで著作権料が欲しいとは思わないだろう。クレームも少ないのでは」(三田さん)

 写真やグラフィックアートの分野では、こういったデータベースがすでに稼働しているという。構築に関わった瀬尾さんは「作るのは大変」としつつも「著作物がどんどん増えていく時代、作品のありかや利用法を、権利者から伝えるシステムを作らなくてはならない」と指摘する。

実現は可能なのか

 客席からは、弁護士の福井健策さんが三田さんに対して、「国立国会図書館の蔵書の著作者は合計79万人いるのに、三田さんが所属する日本文芸家協会はわずか3000人。システムは79万人すべてをカバーできるのか。また、いつまでに、どれぐらいの予算で構築するのか」と質問した。

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