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本を置くだけで情報検索 千代田図書館で

» 2007年04月25日 20時34分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 5月7日にリニューアルオープンする千代田図書館(東京都千代田区)に、新しい情報検索システムが導入される。専用の台の上に本を置くと、その本に関連する書籍やWikipediaの情報などを検索し、ディスプレイに表示する仕組み。図書館の蔵書だけでなく、近所の古書店の在庫情報も検索できる。見知らぬ本に出会うことで発想を広げてもらいつつ、古書店に誘導して地域活性化にもつなげる狙いだ。

画像 木の台の上に本を置くと、その本に関連する情報がディスプレイに表示される

 システムの名称は「新書マップ」。国立情報学研究所(NII)連想情報学研究開発センター長の高野明彦教授が中心となって開発した。

画像 「発想を広げられるシステム」と高野教授。木製の台の下に、ICタグリーダーを設置した。

 図書館入り口入ってすぐの所に「新書マップコーナー」を設置。ICタグを貼り付けた約3000冊の新書や選書をそろえた。ICタグリーダーを組み込んだ台の上に本を置くと、タグを読み取って書籍情報を取得し、独自の全文検索エンジン「想」に情報を入力する仕組みだ。本は1冊でも複数冊でも検索可能。複数置けば“OR検索”になる。

 想は、大量のテキスト情報をマッチングして全文検索できるシステムで、ネットでも公開している(関連記事参照)。千代田図書館では、図書館の蔵書のほか新書のデータベース「新書マップ」、Wikipedia、近所の神保町古書店街の在庫情報「BookTownじんぼう」、毎日新聞のデータベース、世界大百科事典などからデータベースを選んで検索できる。

 システムは、専用コーナーに12セット設置し、自由に利用できるようにした。“検索キー”として利用できる書籍は、今年度内に7000冊まで増やす計画だ。

図書館を“千代田区の出発点”に

 「千代田区図書館は、公共図書館の構造改革」と石川雅己・千代田区長は言う。館内で本を読んだり借りたりするだけでなく、図書館を拠点に千代田区を知り、区内を散策して欲しいという。

 「新書マップ」を通じて神保町の古書店街を知ってもらうほか、公共図書館としてはおそらく国内初の「コンシェルジュ」を配置。調べ物などの相談に乗るほか、千代田区内の観光スポットや飲食店なども案内してくれる。周辺の古書店や飲食店を案内する大きなタッチパネルも設置した。

 千代田区は、区外から80万人以上が通うオフィス街。ビジネスマンにも便利に利用してもらえるよう、公共図書館として初めて平日は午後10時まで開ける。PC接続用の電源やLAN端子も自習机に設置した。

 「千代田区から知識の価値――“知価”を発信していきたい」(石川区長)


画像 ピンクの制服のコンシェルジュが案内する
画像 電源とLAN端子がある自習机

画像 子ども用スペースには授乳室も
画像 神保町の店舗など50スポットの位置や写真を確認できるタッチパネル。操作しているのは石川区長

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