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» 2007年06月18日 15時41分 UPDATE

著作権問題はカネ次第? YouTubeや2次創作を考える (2/2)

[岡田有花,ITmedia]
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 「クリエイターはお金が欲しいから物を作るのではない」――久保氏は、権利者はお金を守りたいだけ、という考え方に反論する。「クリエイターは天才。お金だけですべてを切るのは気持ちの上で受け入れられないし、著作権という個人の権利を、国などが制度で押さえつけるのは問題。個々のクリエイターの思いを大きなテンプレートで決めるのに無理がある」(久保氏)

画像 「漫画同人誌といえば2次創作と思われがちだが、コミケも当初はオリジナル作品が多かった。2次創作が主流になるのはコミケが始まってしばらく経ってから」と伊藤氏

 2次創作同人誌に対する態度も、個々のクリエイターによって異なるという。「2次創作は原作のプロモーションになると歓迎するクリエイターもいれば、2次創作を拒絶している人もいるし、悪意のある2次創作でクリエイターが震え上がることもある」(久保氏)

 浦沢直樹さんの元アシスタントで、漫画評論家の伊藤氏によると、漫画家の場合、2次創作への態度はその出自によって異なるという。

 「CLAMPのように同人誌から出てきた作家は同人誌的なものに親和性が高く、2次創作に寛容な傾向があるが、漫画雑誌の新人賞から出てきた作家は拒絶反応を示すことが多い。これはデリケートな話で、クリアカットに制度でしばるのは難しい」

 「従来同人誌は、繊細な調整を踏まえてグレーゾーンでやってきた。それに積極的な意味を見出しつつ、次の制度やテクノロジーを考えてもいいのでは」(伊藤氏)

グレーゾーンの是非

画像 白田氏は、著作権法の研究者で旧い知り合いという女性に、会場から「考えが偏っているから人がついてこない。独仏の著作権法を学ぶべき」などと指摘されたが、「偏っていることは百も承知でやっている。いまの著作権法学会のトップは(著作権を著作者の権利とし、ユーザーの権利の制限とはとらえない)独・仏型だがそれは幻想だ。わたしが主張する米国型は日本の学説から見れば偏っているかもしれないが、5年間の研究の結果わたしが言っていることのほうが筋だと確認した。みんなが言っていないからと言って引っ込めるのは曲学阿世の徒。首をくくられても言い続けるのが学者の仕事ではないか」と反論。会場からは拍手が起きた

 「日本人はグレーゾーン、あいまいが好きだが、法律はそんなものではない」――ここでも白田氏は、米国の例を引きつつ強烈に反論する。「これまでグレーゾーンがあったから話がややこしくなり、2次創作者が逮捕されるようなこともあった。どこまで踏み込むとアウトかはっきりしないと、まじめなユーザーほどグレーゾーンに対して抑圧的になり、自由な言論が制約される。あいまいさが増えていることが問題」(白田氏)

 「権利者は自分の作品に対して、神といえるほどのコントロールを持っていて、『いつでもぶった切るぞ』とカードを取っておける状態。ユーザーは『権利者がいつ何を言い出すか分からない』とおびえ、これが2次創作に影響を及ぼしている。あいまいなラインが増えているので、きちんと線引きしておかないとだめ」(白田氏)

 「作家によって2次創作への意識はまちまちといいうが、それをいったいどうやって知ればいいのか。グレーゾーンをキープしたいなら、ユーザーがクリエイターと直接話して、クリエイターの意識を知る場を作る仕組みづくりをすべき。そのときに初めて『あいまいでいい』と言える。それができないなら、商業作品はもっと強く狭く守るほうに線を引くべきだ」(白田氏)

 ちなみに、漫画編集者経験のある久保氏によると、ユーザーから漫画家に対するの2次創作に関する問い合わせなどは、逐一漫画家に伝えて回答しているという。

“誰かが泣くような著作権法改正”は可能か

 「ぼく自身、ネットに向き合うためには誰かが泣くような法改正が必要だろうと思っている」――現状の著作権法はネット時代に対応していないと、権利者側にいる久保氏も感じているという。「著作権法の下で既得権益も生まれている。改訂しないと、YouTubeのような新メディアに対するビジネスも固まってしまう」(久保氏)

 「これまで著作権法は、権利者側の権利を強くする方向で改正されることが多かった。権利を縮小する方向への改正には慣れていないし、それは大改正になり、3〜4年はかかるだろう。権利者側も、いま目の前にあることで手一杯という現状がある。改正の提案がやれるなら、ぜひやってほしい」――久保氏は白田氏にこう水を向けるが、白田氏は「わたしは10年近く、パブリックコメントを出したりしてそれこそ、外山恒一のように1人で地道にやってきた。だが誰も反応してこない。もう絶望している」という。

コンテンツ共有の“次”へ

画像 自らが経営するバーを「YouTubeバー」に改名したところ、YouTube創業者が訪ねてきてくれたという神田氏。「ロゴもYouTubeのものに似せていたのだが、パクったおかげで本家が来てくれて、ロゴの前で写真を撮ってくれた(笑)」

 「コンテンツは、共有することで価値を創造する時代に入ったと思う」――出演するテレビ番組をYouTubeで公開するなど、著作権をある程度放棄し、コンテンツを無料発信する試みを続けてきた神田さんは言う。

 「コンテンツを持つ者・持たざる者の境界が崩れ、みんなで共有して楽しむという“次のフェーズ”に入ったのでは。作用は、法律が意図していないところで起きる」

 神田氏は「コンテンツのAPI公開」を提案する。「作品そのものではなく、プロセスをAPIとして公開してもらえないだろうか。ぼくはビートルズのファンでギターを弾いて歌うんだが、ビートルズの曲のポール・マッカートニーのパートだけを演奏して披露する権利を売って欲しい」

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