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EU独禁法訴訟のMS敗北、Appleに大きな恩恵も

» 2007年09月19日 15時49分 公開
[Daniel Drew Turner,eWEEK]
eWEEK

 欧州第一審裁判所が、「米Microsoftが欧州独占禁止法に違反した」とする2004年の欧州委員会の裁定に対する同社の控訴を棄却したことで、AppleのMac OS Xがエンタープライズサーバソリューションとして魅力を増す可能性がある。

 欧州委員会は2004年に、Microsoftが独占的地位を乱用して同社のOSとほかのOSの十分な相互運用性の実現を妨げたと認定し、Microsoftに対して同社以外のサーバ製品が同社製品と同等の相互運用機能を備えられるよう情報公開を命じた。Microsoftはこれを不服として控訴していたが、欧州第一審裁判所は9月17日、欧州委員会のこれらの判断と措置を支持する判決を下した

 「現在、Mac OS X、Linux、およびUNIXサーバは、Windowsのみの環境で提供される機能の一部にしかアクセスできない」と米ミネソタ州ミネアポリス在住の技術コンサルタント、マシュー・スパービー氏は語る。

 スパービー氏によると、そのためにWindows以外のシステムは、例えば、クライアントの設定やセキュリティオプションのコントロールなどを行える、クライアントの集中管理ツールを提供できない。

 「完全なMicrosoft環境では、デスクトップの色から、コンピュータにアクセスできるユーザー、ログオン後に行える操作まで、きめ細かく管理できる」と同氏。「エンタープライズマネジメントの観点から言えば、クライアントをロックダウンできなければならない」

 Microsoftが欧州連合(EU)の裁定に従い、サーバプロトコルを十分に公開すれば、Mac OS X ServerやXserveハードウェアといったMac OS Xサーバ製品で、こうした機能が提供される可能性があると、スパービー氏は語る。

 Mac OS Xは、異種混在コンピュータネットワークでファイル共有や印刷をサポートする通信アプリケーションスイートであるSamba(SMB/CIFSとも呼ばれる)を搭載している。

 「新しいプロトコルが実装されれば、Sambaはサーバサイドのより効果的なソリューションになるだろう」(スパービー氏)

 また同氏は、Mac OS X搭載サーバは、価格的に有利な選択肢になるかもしれないと見る。Windowsクライアントおよびサーバのネットワークを利用する場合、各クライアントについてライセンスを購入する必要がある。だが、Mac OS X Serverは10クライアント版が499ドルで、無制限クライアント版が999ドルとなっている、とスパービー氏は語る。Windows Serverではこうした無制限クライアント版は提供されていない。

 MacTech誌の発行人兼編集人ニール・ティクティン氏も、欧州第一審裁判所の判決は、Appleに「大きなプラスの影響を与える可能性が高い」と語る。

 「1つには、多くの人がWindows以外の選択肢に目を向けることになりそうだからだが、それだけではない。さらに重要なことに、これを機に、Mac OS X Serverによってコストを削減できるという理解が広がる可能性があるからだ」とティクティン氏。「Mac OS X Serverは、Windowsサーバが使われる一般的な場合を含めて、異種混在環境への対応が優れている。固定料金であるこのApple製OSを使えば、Windowsの場合とは違ってクライアントごとのライセンス料が不要になるため、コストを大幅に節約できる」

 匿名希望のある開発者も、Appleは今回の判決の恩恵を受ける可能性があると語る。

 「Appleは概して、オープンソースのWindowsネットワーキングプロジェクトの成果にただ乗りしている。基本的に、AppleはGPLプロジェクトの活動に参加しない。同社はコミュニティーにコードを寄付しないというわけではないが、そうしなければならない立場になるのを避けようとしている」と同氏。「いずれにしても、これまでAppleはハイエンドのエンタープライズネットワーキング市場を攻略できなかったが、Windowsネットワークとの相互運用の不確かな部分が少なくなることで、それが可能になるかもしれない。もっとも、そのためにはAppleは企業向け営業に現在よりも力を入れなければならないだろう。同社は消費者ブランドの企業なので、そうした動きに出ることはないと思うが」

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