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ゲームショウに「サプライズなし」は当然か

» 2007年09月22日 00時00分 公開
[杉村幸子,ITmedia]

 サプライズのないことがサプライズである。

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 9月20日から4日間、千葉・幕張メッセで開催されている東京ゲームショウ(TGS)。国内最大のゲームイベントで、今後1年のゲーム業界を占うイベントだ。

 ここ数年のゲームショウは、ニンテンドーDSやPSP、Xbox 360、Wii、プレイステーション 3(PS3)と新ハードの話題で盛り上がったが、今年は特にハード関連の大きなニュースはなく、ソフト中心の発表となった。

 ソフトのラインアップは、今までの「定番タイトルのシリーズ化・複線化・マルチ展開」という傾向に全く変化はなく、むしろその傾向はさらに強まっている。今回話題になっているタイトルは、コナミ「メタルギアソリッド」続編やソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「グランツーリスモ」シリーズ、レベルファイブの「レイトン教授と不思議な町」続編など、安定した売り上げが望めるものばかりである。

 そんな中、今年特有の傾向として、特徴的なものが2つあった。

 1つは、男性向け恋愛アドベンチャーゲーム、いわゆる「ギャルゲー」の台頭だ。2004年にPC向けに発売されてヒットした「CLANNAD」が2008年春にXbox 360に移植されることが発表された。記者が取材した21日はビジネスデー2日目ということもあり、順番待ちをしているブースがそれほど多くない中、同作品のポスターを配布していたプロトタイプのブース横には長蛇の列。物販ブースでも、ギャルゲー登場人物の関連商品が非常に目立っていた。

画像 ドラゴンボールZ スカウターバトル体感かめはめ波〜おらとおめぇとスカウター〜

 もう1つの傾向は「ゲーム機以外の商品展開」の展示だ。

 バンダイが試遊機を展示していた「ドラゴンボールZ スカウターバトル体感かめはめ波〜おらとおめぇとスカウター〜」(2007年11月上旬発売予定)は、専用のセットトップボックス(STB)をテレビに直接つなぎ、プレイヤーがスカウターとドラゴンバンド(指センサー)をセットして遊ぶ体感型ゲームだ。

 画面に向かって「かめはめ波」をポーズを取ると、敵を攻撃できるというもので、アーケードゲームやWiiに近い直感型のゲームといえる。ソフトメーカーにしてみれば、STB販売という選択肢ができれば、ハードメーカーが間に入らない分収入が増えるため、新たな収益源となる可能性が出てくるだろう。

 また、山佐から「機動戦士ガンダムII〜哀・戦士編〜」のパチスロ機が登場するなど、ゲームやアニメのコンテンツのパチンコ・パチスロへの移植も増える一方。携帯電話向けゲームも存在感を増しており、ハードの売り上げに左右されない経営をしていく道筋をつけようと、ソフトメーカーが着々と手を打っていることが目に見えるようになってきた。

TGSにサプライズなしは“当然”か

 かつての「プレイステーション 2」のように、業界をけん引するほどのハードがなく、1つのハードに開発費を集中させることもできない現状で、サードパーティは各ハードに全方位外交を行うことを余儀なくされる。そうなると、安定して売れるソフトの開発を優先せざるを得ないだろう。

 全く新しいソフトを作る役割はハードメーカーが担うべきかもしれないが、任天堂以外は売り上げの伸び悩みに苦しんでおり、ソフトになかなか手が回らない。その結果が「定番タイトルのシリーズ化・複線化・マルチ展開」路線のさらなる加速につながるという堂々巡りだ。今回のTGSにサプライズがないのは、当然の帰結だろう。

 TGSの前評判では、在庫過剰となっているPS3の値下げについて、SCEから何らかの発表があるのではないかといわていた。それくらいのサプライズがなければ、PS3の巻き返しは容易ではないと考えられていたからだ。

画像 DUALSHOCK 3の試遊台

 しかし、発表されたのは値下げではなく、6軸検出システムと振動機能を共存させたPS3用新型コントローラ「DUALSHOCK 3」の発売や定番タイトルである「グランツーリスモ5 Prologue」の発売についてであり、PS3普及へのてこ入れにしてはやや弱い感が否めない。

 だが、仮にPS3のタイトルが増え、本体が値下げされたとして、本当に販売台数が伸びるのだろうか。そしてソフトメーカーは本当にPS3向けソフトを懸命に開発するのか。“勝ち組”とされるライバル・Wiiの販売台数もこのところ伸び悩んでいる。開発の難しさや、それに伴うタイトルの少なさのせいもあるだろうが、据え置き型ゲーム機中心だったゲーム業界そのものが大きく変化している――と考えるほうが自然なようだ。

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