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ひろゆき氏「ユーザーも権利者もニコニコに」 新ニコ動の“企み”(1/2 ページ)

» 2007年10月10日 15時50分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 ひろゆき氏

 ニワンゴの「ニコニコ動画(RC)」が10月10日に大幅リニューアルし、「RC2」になった。従来はYouTubeからのアクセス遮断対策といった「後ろ向きなリニューアルが多かった」(同社取締役の西村博之=ひろゆき氏)が、今回は独自スクリプトによる新機能の追加など、ユーザーの利用の幅が広がる「前向きな」もの。大手コンテンツホルダーと提携して動画を配信も発表した。

 「ユーザーの方と、お金を出してくれている(親会社の)ドワンゴさんはニコニコしてくださっているようだ。あとは、動画の権利者の方にもニコニコしていただける仕組みにできれば」(ひろゆき氏)――投稿動画サービスと著作権侵害は常に背中合わせだったが、ユーザー主導でクリエイティブな作品が次々に生まれているのもニコニコ動画の特徴。ニコニコらしい著作権の形や新たなビジネスモデルを模索していく。

急成長中だが「まったく黒字化していない」

 ニコニコ動画は昨年12月のテストサービス以降、急速に成長。登録会員数は10月9日現在で342万人と、開始から1年未満のサービスとしては異例の規模に膨れあがった。月額525円を支払っている有料会員(プレミアムユーザー)も10万3000人に上る。

 1日平均を見ると、総ページビューが5500万、ユニークユーザーが120万、動画再生回数は2200万、コメント数は320万、1人当たり滞在時間は1時間──と、利用状況も順調に伸びている。


画像 ネットレイティングス調べによる、総滞在時間・ユニークユーザーの変化
画像 ニコニコ動画の動画再生回数は「ロングテール」。YouTubeだとランキング上位に再生が集中するが、ニコニコは下位の動画も一定数再生されている
画像 会員しかアクセスできないクローズドサービスなのにブログでの引用が順調に増えている

 広告を収益源に展開してきたが、「まったく黒字化していない」(ニワンゴの親会社・ドワンゴの小林宏社長)のが課題だ。ただ、芽は出始めている。例えば7月に導入した「ニコニコ市場」は、動画の下にAmazonなどの商品販売ページへのリンクをユーザーが貼り付け、商品が売れればアフィリエイト収入をニワンゴが得る仕組み。9月20日までに約60万のリンクが掲載され、多くの購入実績をあげたという。

 7月からはバナー広告も販売。9月までに1800万円を売り上げ、今後も注力する。

初めての「前向きな」リニューアル

画像 ニコニコ動画(RC2)

 3月に「仮」から「γ」へ、6月に「RC」へと2回バージョンアップしたが、γの際は「動画配信元として利用していたYouTubeにアクセスを拒否された」、RCの際は「ばく大なコストを一部でもカバーするために有料サービスを導入する」というのが主な理由だった。「受け身の改良で、後ろ向きな理由が多かった」とひろゆき氏は振り返る。

 これに対し、ソフトウェア業界では製品化の一歩手前とされる「RC2」(Release Candidate 2)と題した今回のリニューアル。「ネットでみんなニコニコ」を目指して敢行する、初の「前向き」で「本格的」な大改造だ。

 目玉は、新開発した独自スクリプト「NICOScript」(ニコスクリプト)。動画を流すだけ・見るだけではなく、投稿者が動画に仕掛けを施し、ニコニコの特徴である動画を使ったコミュニケーションを投稿者・視聴者がもっと楽しめるようにする。

 まず、動画投稿時の新機能として「投稿者コメント」を実装。動画投稿者のみが投稿できるコメント機能で、視聴者コメントが規定数を超えても消えない「字幕.inのパクリのような」(ひろゆき氏)機能だ。コメントの表示タイミングを投稿者が設定できるため、動画の特定の部分に注意文やメッセージを表示するといったったことが可能。新機能を駆使する“職人”も現れそうだ。

 また(1)視聴者に対して特定の数種類の言葉の投稿を促し、その言葉が投稿された回数を集計する「アンケート」、(2)特定の言葉が投稿されると「当たり」などとメッセージを表示できる「クイズ」、(3)再生中に他の動画にジャンプできる「動画ジャンプ」、(4)コメントを目立たせられる「コメント・アート」、(5)動画を丸くくりぬいて一部分だけ見せられる「窓」──など、スクリプトの導入で投稿者が柔軟に“遊び”を仕掛けることができるようになった。

 新機能を利用した動画の閲覧は、当初はプレミアム会員に限る。投稿は一般会員からも可能だ。


画像 コメント欄に「@窓」と入力するだけで利用できる「窓」機能
画像 アンケート集計機能

 不快なコメントを連発する「荒らし」対策を求める声に応え、2ちゃんねる専用ブラウザなどでおなじみの「NGワード」機能を導入する。

 投稿者側は任意のNGワードと、NGワードを置換したい単語を設定でき、NGワード入りのコメントが投稿されると自動置換して表示する。「書かせたくない」言葉をあらかじめブロックできる仕組みだ。投稿されたコメントの削除もできるようにした。

 視聴者も、見たくない単語をNGワードに設定しておけば、動画中のコメントにはその単語が表示されなくなる。特定IDのユーザーごと、コメント全部を非表示にできる「NG ID」も設定できる。「うるさい人を静かにできる機能。ちゃんと使えるかはやってみないと分かりませんが」(ひろゆき氏)

 別の新機能「ニコニコ割り込み」(ニコ割)は、全ユーザーの動画再生を強制的に一時停止し、緊急ニュースなどを割り込ませて配信するリアルタイム情報配信の仕組みだ。「動画の最中に割り込むという微妙な機能だが、昨日テストしてみたら意外と好評だった」


画像 ニコニコ割り込み
画像 ニコニコニュースの題字は藤澤秀行名誉棋聖に依頼した。「すごく珍しいこと」(ひろゆき氏)

 動画の上にテキストで短いニュースを配信する「ニコニコニュース」もリニューアルするが、サービスの題字を囲碁界の大物・藤澤秀行名誉棋聖に依頼した、という。常に表示される目立つ場所だが、広告は掲載しない方針。「目立つからといって広告載せても面白くない」(ひろゆき氏)

 トップページのレイアウトも変更し、ランキング上位の動画やニコニコ市場アイテムを見つけやすくした。

 新機能は、投稿者専用コメント、ニコ割がRC2化と同時にスタートした。NICOScriptを活用した「窓」などの機能は10月18日に、NGワード設定とニコニコニュースは11月に加わる予定だ。「あくまでも予定なので。ずれたらすみません」(ひろゆき氏)

 機能強化も順次進めていく。12月に予定の「サービスパック1」(SP1)ではNICOScriptを強化するほか、他社と共同開発した動画編集ソフトを提供するという。「動画編集ソフトはYouTubeさんも提供している。YouTubeのパクりみたいなもんです」(ひろゆき氏)。また「ニコニコ音楽」なるサービス名も発表されたが「内容についてはノーコメント」(ひろゆき氏)。

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