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ひろゆき氏「ユーザーも権利者もニコニコに」 新ニコ動の“企み”(2/2 ページ)

» 2007年10月10日 15時50分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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「台湾版」「ニコニコ映画祭」も

画像 「審査員は引き受けないポリシーだったのだが、ニコニコ動画にポジティブな可能性を感じて引き受けることにした。文化は掟破りの場から生まれる」と手塚眞氏

 海外からのアクセスも増えているため、国際化対応にも踏み切る。ただ「日本からのアクセスもさばき切れていない状態で、英語版とかだとアクセスが殺到しちゃうので、手近なところで」(ひろゆき氏)と台湾を選択。繁体字中国語で投稿・閲覧できるバージョンを、10月18日に公開する予定だ。

 クリエイターの国境越えも促し、「国際ニコニコ映画祭」も開く。審査委員には「有名なニコニコ動画ユーザー」を迎え、審査委員長はビジュアリストの手塚眞氏が務める。ユーザーにオリジナルコンテンツを投稿してもらい、面白いものなどを表彰する企画だ。発表会に出席した手塚氏は「審査過程も公開するので、コメントで突っ込んでほしい」(手塚氏)とユーザーの活発な参加を期待する。

吉本は「よしよし動画」オープン

 大手動画コンテンツホルダーと提携し、“公認”動画も拡充する。9月に発表したMTV Networksのほか、吉本興業グループ、エイベックス・エンタテインメント、エンドレスコミュニケーションズ、ティーエフエム・インタラクティブ、ショックウェーブエンターテインメント、ランティス、ジェンコの7社が新たに動画コンテンツを提供する。

 各社が配信を始める時期や形態は未定だが、YouTubeの「チャンネル」と同様、パートナー企業専用のスペース開設を検討中。吉本興業のスペースは「よしよし動画」になる予定だ。コンテンツによっては、2次創作に利用してもらうことを前提とした、改変していい“素材”として提供してもらう――といった可能性も視野に入れる。

 ニコニコ市場を活用して共同で広告を展開したり、動画の有料配信といった新手法も検討する。ニワンゴの杉本誠司副社長は「7社以外とも提携の話が進んでいる。動画サイトはただ規制するだけでなく、いかに活用するか、という点にテーマが移ってきていると感じている」と話し、潮目が変わりつつあることを実感している様子だ。

「権利者にもニコニコしてほしい」――著作権問題への取り組みは

 「動画の権利者の方にもニコニコしていただける仕組みにできれば」──とひろゆき氏は語る。著作権問題と動画投稿サービスはほとんど“双子”の関係だ。無断アップされた違法動画の問題は、YouTubeを始めとする同種のサービスに常につきまとってきた。

 ニコニコ動画は従来から権利侵害動画の投稿を規約で禁止しており、権利者からの削除要請に応じて侵害動画を削除してきた。事前登録した権利者には専門の削除プログラムも提供。さらに、1度削除された動画と同じファイルが投稿された場合、自動的に検知して削除するシステムも運用してきた。

 著作権法に厳密に照らせば、ニコニコ動画のサービスや利用のされ方にはグレーな部分が多いのは事実だ。「法律論で語ると“ナシ”になってしまう部分もあるかもしれず、難しい。既存の枠組みでは語れない次世代のサービスなので、権利者のみなさんと話し合いながら、ユーザーさんが楽しめる環境を維持していきたい」(杉本副社長)

 会見に参加した一般ユーザーからは「オリジナル創作物をアップしているユーザーも権利者。クリエイティブ・コモンズライセンス(CC)に対応するなどして、ユーザーの権利を守れる仕組みを提供してほしい。権利者側が削除要請しないと削除されない、という仕組みが納得できない」という要望も。

 ひろゆき氏は「CCは日本の法律に合っていなので『ニコニコモンズを作ろうという話もあったりした。著作権は専門家でも判断が分かれたり、裁判でも判決が覆ることもある難しい分野。どこでラインを引くべきかは難しいが、文句がある人にはきちんと対応し、『困っている人はいない』というサービスにしたい」と答えた。

 「ニコニコ動画では、他人が作った動画に触発されて動画を作ったり、誰かが作った音楽にイラストや動画を合わせたりなど、新しい創作が生まれている。文化的なものをちゃんと残せるような場にしたい」(ひろゆき氏)

「ニコンドライフ」実現へ

画像 「わたしが入社したのは創立3年目。当時はみんな、ハンドルネームで呼び合っていた」と小林社長

 東京・秋葉原で開かれた発表会には、ニワンゴの親会社ドワンゴの小林宏社長も登場した。携帯電話コンテンツ事業などで苦戦が続き、ニコニコ動画への投資負担がかさむなどし、前期(2007年9月期)は最終赤字になる見通しの同社。赤字ながら国内有数のユーザー規模に膨れあがったニコニコ事業を、着メロに代わる新たな柱に据えたい考えで、今期(2008年9月期)中の単月黒字化を目指していく。

 ニコニコのヒットを背景に、同社は創業10年目にして新たに企業理念を設定した。「ネットに生まれて、ネットでつながる」。背景にあるのは「ドワンゴはネットの世界に“移住”した人で作った会社」ということ。ドワンゴはそもそも、オンラインゲームなどネット上で知り合った友人同士で立ち上げたという。

画像 発表会にはユーザーも招待。200人以上のユーザーが詰めかけ、立ち見も出た

 ネット社会での生活を、ドワンゴとニワンゴは「ニコンドライフ」と名付けた。「ニコンドライフという言葉、ぼくは入れたくなかったんですけどね……」とひろゆき氏は苦笑しつつ、ネットを使うことで得をしたり何かを効率的にしたりする、といった従来の考え方から離れ、「ネットは楽しい、そこにいたい」と思ってもらえたら、と話す。

 「メディアによって生活スタイルは変わる。例えばぼくはテレビや新聞をほとんど見ないし、ラジオも聞かない。テレビや新聞も見ないしラジオは聞かないけどネットは見る――そんな人の生活スタイルに合ったサービスを、提供していきたい」

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