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» 2007年10月12日 11時00分 UPDATE

津田大介さんに聞く(後編):「ダウンロード違法」の動き、反対の声を届けるには (1/4)

著作権法を改正して違法サイトからのダウンロードを違法にしようという動きが進んでいるが、最も影響を受けるネットユーザーは議論のかやの外。ユーザーの声を届けるには、どうすればいいのだろうか。前編に続き、津田大介さんに聞いた。

[岡田有花, 宮本真希,ITmedia]

←前編:「ダウンロード違法化」のなぜ ユーザーへの影響は 」へ

―― 中間整理案は「ダウンロードを違法化すべき、という意見が“大勢であった”」と書かれる方向でまとまりつつあるようです。ただ、この法改正で最も影響を受けると思われるネットユーザーには「ダウンロード違法化に反対」という人が多い。ユーザーは権利者よりも絶対数が多いはずですし、「違法化すべきという意見が大勢であった」という記述は、小委員会の委員構成の偏りを反映していると思います。委員の顔ぶれを見ると、権利者団体の代表も多かったようですし。

 確かにこの動きに興味を持っているようなネットユーザーは「ダウンロード違法化に反対」という人が多いと思います。少なくともわずか5%(委員20人のうち1人)しか反対しないなんてことはない。言うまでもなく、コンテンツ産業というのはクリエイターと権利者だけでなく、消費者・ユーザーがいないと成り立ちません。そういう前提で考えたときに、初めから偏りのある私的録音録画小委員会の議論で「違法化すべきという意見が大勢であった」という記述するのは、公平性という視点から考えたときにどうなのかなという思いはありますね。

 とは言いつつ、「そもそもあの小委員会はあくまで権利者たちの利害調整のために設けられた場所なのだから、偏っていて当たり前だ」という意見もありますし、こういう問題ですべての人が納得できる結論を出すのが難しい以上、ある程度押し切られる形になるのは仕方ないのかな、とも思います。

 結局「小委員会になぜ権利者ばかり呼んでいるんだ」という話になっていくわけですが、呼ぶ側の文化庁からしてみたら「じゃあ、ユーザーの代表はどこにいるんだ?」という話になるわけです。ネットユーザーの意見を聞くためにブログをチェックするにしても、世の中にあるすべてのブログをチェックできるわけじゃないですし、聞くに聞けないというのが今の状況なんでしょう。

画像 津田さん

 小委員会には消費者団体の代表(主婦連合会事務局長)はいましたが、「消費者団体=ネットユーザー」ではない。だから、僕はこの1年半小委員会での議論に参加してきて、きちんとネットユーザー利益や主張を吸い上げて、政策を作るプロセスに関与させるための団体を作る必要があるということを強く感じました。

 これってたぶん、ネットにおける匿名・実名の議論にも近くなってくるんですけど、ネット上で匿名で文句をいくら言っても「国民の声」にはなりにくいんですよね。ネットユーザーは自分たちの不満をどう政策として顕在化させていけばいいのか、そろそろみんなで考えるべきだと思いますし、顕在化させるための簡単な「仕組み」みたいなものを作っていく必要があるんだろうなと。(その後津田さんはユーザー団体「MIAU」を設立

 ――津田さん自身は、小委員会では「ネットユーザーの代表」という立場で発言されたのでしょうか?

 ぶっちゃけて言えば、そこが一番の悩みどころでしたね。ネットユーザー代表という側面もあったんでしょうが、コンテンツビジネスやITに関する専門家として呼ばれたとも思います。かつ、僕自身は著作権でメシを食っている人間ですから、ネットで違法コピーがまん延して自分たちの生活が成り立たなくなるんじゃないか、という著作者が抱えている不安もそれなりに分かる。

 もっと言えば、ネットユーザーという立場だけじゃなく、自分自身これまで今まで大量にCDやDVDを購入してきたヘビーユーザーだから、音楽業界や映像業界に対して「これだけ“優良な顧客”なんだから、ちょっとくらい話を聞いてくれたっていいだろ」と言いたい部分もある。権利者団体の人は「団体」で決められた主張を淡々と小委員会の場で述べるというのが「仕事」ですが、僕はそういうバックボーンがなかったから、かなり自由に思ったことを発言してきたなと自分でも思います。

 そういう意味では、場面場面に応じてどの立場からも発言したという面があって、そこには良い点も悪い点もあったんでしょうね。でも、僕はコンテンツ業界が盛り上がるためにはどういう施策が必要なのか、業界の保護とユーザーの利便性のバランスはどこで取るのがいいのか、ということを僕なりに考えて、そこについては一貫して発言してきたつもりです。

 だから、ぼくはやっぱり「ネットユーザーの代表」ではないんだと思いますよ。ネットユーザー全体を見れば「音楽がないと生きていけない」とか「毎日数時間テレビやDVD見るのが当たり前」なんて人は、はっきり言って少数派でしょうし。日々の生活でコンテンツを消費することにあまり重きを置いてない人から見れば、「勝手にDRM厳しくすれば? 俺は買わないだけだから」っていうシンプルな結論になるでしょう。でも、僕は業界がかたくなになっていって、その結果、コンテンツ業界がしぼんでしまうのはちょっとイヤだなと。

―― 今回の法改正について反対したいネットユーザーが、それを「国民の声」として届けるためには、どうすればいいでしょうか。

 中間整理案は、10月12日に文化庁著作権分科会で報告された後、パブリックコメントにかけられます(※パブリックコメント募集は10月16日から。募集ページへのリンク)。だから、現時点でユーザーができることというのは、パブコメを提出するしかないですね。パブコメで反対票が多くなれば最終報告書に反対意見を盛り込まざるを得なくなるでしょう。

 パブコメは「一応国民から意見を聞きましたよ」というアリバイ作りに過ぎない、と言われることもありますが、そうでもないと思います。パブコメの結果もネットで公開される時代ですから、反対が多ければ、少なくとも国会に法案が提出される段階で「こんなに消費者から反対意見があるのに押し切るのか」という議論の材料にはできます。

 パブコメの力は今後徐々に大きな存在になっていくと思いますよ。国民とかユーザーの声って、分かりやすく「票」につながる話ですから。政治家を動かすには「金」か「票」しかないわけで、今後ネットと政治の関係が深くなっていかざるを得ない以上、国会で法律を審議する政治家もパブコメを無視できなくなるでしょう。

 ネットユーザーは、どういう法改正が行われる可能性があるのかを「正しく」理解した上で、それでも「おかしい」と思ったら、意思の表明として、パブコメを出せばいいと思います。正しく理解して、というのは、例えば「YouTubeを見たら逮捕される」みたいな二重の誤解があったこともありましたが、YouTubeも今のところ文化庁の見解では見るだけなら大丈夫だし(※次ページ参照)、刑事罰がないから「逮捕」されることもない。そういった状況を正しく理解した上で、それでも「おかしい」「ダウンロード違法化はやり過ぎだろ」と思った人がパブコメを出せばいいんです。

 もちろん、ネットユーザーの中には「違法コピーを減らすためには、違法な著作物のダウンロードを違法化するのもやむなし」という考え方の人もいるでしょうし、そういう人は「ダウンロード違法化賛成」のパブコメを出せばいいんじゃないですかね。

権利者側は「パブコメ動員」する

 過去に、CD輸入権の問題で法改正があった時、権利者側が大量に社員や関係者に対してパブコメの“動員”をかけたということがありました。あのときは輸入権だけでなく、書籍の貸与権に関する法改正もあったのでマンガを出している出版社も社員に対して『「今回の法改正案は賛成です」というパブコメを出しなさい』というメールが回っていましたね。

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