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» 2007年10月12日 11時00分 UPDATE

津田大介さんに聞く(後編):「ダウンロード違法」の動き、反対の声を届けるには (3/4)

[岡田有花, 宮本真希,ITmedia]

 でも、それがコンテンツにあまり興味がないネットユーザーに「いわれもない補償金」を払わせる結果になったら彼らからの反発も大きいでしょうから、録音録画に使わない場合、簡単にお金が戻ってくる補償金返還制度を構築することで対応すればいいだろうと。そもそも一銭も補償金払いたくない人に一度払わせてしまうという「手間」はかかりますけど、金額も小さいんだし、一応国が知財立国掲げてコンテンツ振興を謳っているわけですから、それくらいの「コスト」は払ってもいいんじゃないのという考え方ですね。

 もちろん、現行の補償金制度には問題もたくさんあるので、変えていく必要もあるんでしょうけど、「補償金制度そのものが悪なんだ」という原理主義的な考え方には、僕はちょっと賛同できない。むしろ、補償金という不完全な制度をどう業界と利用者の調整役として有効に機能させていくか。それを政治的な観点で考えた方が建設的だろうと。

補償金、2つの問題点

 補償金の問題点は2つあります。1つ目は、お金の流れが分かりづらいということ。「どういう形でどういう風に分配しています」というのがエンドユーザーから見て分かりづらいんですよね。だから「補償金はどんぶり勘定で徴収されていて、ちゃんと分配されていないんじゃないか」という批判もあります。

 ただ、いろいろ話を聞いたり、取材したりしていくと、そこまでデタラメな分配になっているわけでもないんですよね。椎名さんが理事を務めるCPRA(実演家著作隣接権センター)なんかは、かなり分かりやすいルールを作ってデータ管理してます。椎名さんは「100%正しい分配ができるわけないが、分配実績やCDの売り上げなどから考えて8、9割は正しい分配ができているんじゃないか」とおっしゃっていて、僕の感覚でもそれが実態からかけ離れているとは思えない。

 だから、CPRAだけじゃなく、補償金の分配対象である、JASRAC(日本音楽著作権協会)や日本レコード協会は、「分配が見えにくい」という批判に対して分配に関する情報をネットなりを通じて、ちゃんとユーザーに公開したほうがいいと思います。何も具体的な分配額公表しろって言ってるわけじゃないんです。どのような仕組みで、どういう手続きを経て分配しているのか、その「ルール」を開示すれば、どこまで分配が適正に行われているか、判断することができるでしょうから。

有効な返還制度がないという問題

 もう1つの問題点は、返還制度です。権利者団体側は、補償金の課金対象を広くしたいという思惑があり、PCのHDDや携帯電話、ICレコーダー、SDカードからも補償金を取りたい、とも言っている。でもそういったメディアの全ユーザーが動画や音楽を記録するわけではない。

―― メディアを録音録画に利用しなかった場合、補償金が返ってくる返還制度がありますが、「返ってくる額が少ない割には手続きが煩雑すぎる」などと批判があります(関連記事「私的録画補償金、初の返還額は8円」)

 先ほども言いましたが、「録音録画に使いもしないのに、なぜ金を取られなきゃいけないんだ」という気持ちがユーザー側にあります。僕だって音楽プレーヤーとして使っていない携帯電話から補償金取られたらまぁ素朴に腹は立ちますよ。だから、補償金の課金対象を広げるなら、返還制度が有効に機能させるということとセットでなければいけないと思いますね。

―― 分配方法や返還制度の問題点が改善されれば「補償金制度は維持されるべき」と考えますか?

 微妙なところですね。そのあたりは権利者とユーザー間の綱引きだと思います。コピーワンス問題が分かりやすい例ですが、DRMがどんどん厳しくなっていって、録音録画ができなくなるのなら、そもそも補償金制度はいらないだろうという議論にもなるでしょうし。

 「コピーが自由にできると権利者の経済的利益が害される恐れがあるから補償金を支払ってもらうべき」というロジックで、コピーの自由さに対する調整機能として補償金が働いているのは厳然たる事実です。だから、DRMを厳しくかけていくのなら当然、補償金は小さくなっていくべきでしょう。

 ドイツなんかはDRMが組み込まれていてデジタルコピーが不可能なコンテンツの場合、補償金徴収の対象にならないとする著作権法改正を行いましたし、欧州の一部の国では「DRMの強さで補償金額変えよう」という議論があるそうです。そういう視点の議論も当然あっていいと思うのですが、日本の場合は補償金かけるか、かけないかというところでお互いに言い合うだけで終わっちゃってる印象を受けますね。

やっぱり補償金制度はいらない

―― 津田さんは従来「補償金制度は段階的にでもなくなるべき」と主張されてましたが、今回若干トーンダウンしたようにも聞こえます。

 うーん……。補償金の問題って考えれば考えるほど分からなくなるのですけど(笑)、それでも本来的には、補償金制度ってぼくはいらないものだと思ってますよ。

 権利者側は「録画機器が発達したから損害を被っている」と言うんですが、それは一面でしかものを言ってない。メーカーは確かに「録音・録画」機器も売るけれど、「再生」機器も売っているんです。そもそも「DVDプレーヤーやミニコンポとか、再生機器がすごく安くなって発達したから、権利者が権利を持つコンテンツ産業が発達したんでしょ」という部分はある。

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