ITmedia NEWS >

著作権法の非親告罪化は「一律は不適当」 小委員会中間まとめ公開

» 2007年10月12日 20時24分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像

 法制問題小委員会の中間まとめが10月11日文化庁文化審議会著作権分科会で報告された。著作権法の親告罪の範囲の見直しについては「一律に非親告罪とすることは不適当」とし、海賊版などの非親告罪化も「慎重な検討が必要」とした。ただ海賊版については、ネットオークションへの出品を禁止すべきとした。

 中間まとめは10月16日から1カ月間、パブリックコメントを募集し、同委員会で議論された後、著作権分科会で報告される。

 著作権法に違反する行為は原則として親告罪。著作権・出版権・著作隣接権、著作者・実演家人格権に対する侵害など、一般的に「著作権の侵害」と呼ばれる行為は、権利者が刑事告訴しない限り、侵害者は罪に問われない(現行規定で非親告罪なのは、死後の人格的利益の保護侵害、プロテクト外し装置・プログラムの公衆譲渡など)。

 だがDVDやCD、PCソフトなどの海賊版の増加が深刻化している上、PCとネットの普及でコンテンツの無断複製と流通が容易になっている現状もある。このため政府の「知的財産推進計画2007」では、著作権法で親告罪とされている現行規定の範囲について見直しが必要であると指摘していた。

 法制小委員会では、

(1)著作権侵害は、組織的な海賊版販売から論文の不適切な引用まで多様な形態がある上、「権利者が処罰するまでもないと許容しているような場合」も実態としてある。多様性や表現の自由を踏まえ、引き続き被害者の意志を尊重すべきだ

(2)財産権と人格権では保護対象となる利益が異なる場合があり、人格権の侵害では訴追により被害者の不利益になる恐れがある場合もあり、財産権と分けて考えるべき

(3)捜査実務上、親告罪であることが捜査の大きな障害になっているという認識はなく、被害者の協力や意向なしに訴追することは非常に難しく、非親告罪化で取り締まりが強化されるとは言いにくいのでは

──といった意見が出た。

 常習犯については「常習侵害罪」として非親告罪化する案や、侵害の結果が「重大」と認められる場合のみを非親告罪化するという意見もあったが、「重大」と判断するには微妙な判断が必要な上、同じ形の犯罪について、一部は親告罪とし、一部は非親告罪とするのは法制的にも捜査実務的にも難しいのではという意見があった。

 議論を踏まえ、中間まとめでは「侵害行為の多様性や人格的利益との関係を踏まえると、一律に非親告罪化することは適当でない」とした。一部の犯罪について非親告罪化するとしても、犯罪とする場合の要件の設定が立法技術的に可能かどうか、また非親告罪化した場合の社会的影響も考え、「慎重に検討することが必要」としている。

海賊版のオークション出品は違法化求める

 現在の著作権法では、情を知って海賊版を所持することや販売することを権利侵害行為とみなしているが、ネットオークションなどで「譲渡の告知」──つまりオークションに出品して販売を勧誘すること──は規制の対象外となっている。

 中間まとめでは、「販売の前段階である販売告知行為を抑えなければ、海賊版の流通防止は難しい」として、「情を知って」(例えば海賊版であることを知っている場合)など一定の条件のもと、ネット上に「海賊版の譲渡の告知」を出す行為は著作権侵害行為とみなすべきだとした。つまり海賊版を海賊版と知って出品する行為自体を違法とすべきだとした。ネット以外の広告媒体については今後検討する。

 ネットオークションに絵画などを出品する際、権利者に無断でその商品の画像を掲載することが複製権や公衆送信権の侵害に当たるのではとの議論もある。ただ税金滞納の差し押さえ品を税務署がネット公売にかける場合でも「著作権侵害」と指摘されるのはおかしいのでは、という意見も出ていた。

 中間まとめでは「出品者が商品紹介のために画像を掲載することは必要不可欠なため、許諾なしにできるようにすべき」とした。ただし、掲載した画像が複製され、商品の紹介以外の目的で使われるといった場合も想定されるため、画像のコピーを抑制する保護手段を施すことや、画質や画像の公開期間などを定めたガイドラインを設けるなどし、権利者の利益を侵害しないようにする必要があるという条件を付けた。

 このほか、障害者向けに映像に字幕や手話を付ける場合や、公共図書館が録音図書を作成する際に許諾を不要にしてほしい──という要望を受け、「情報アクセスの権利を保障する観点から、障害者が著作物を利用する可能性をできる限り確保していく」として認める方向を示した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.