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» 2007年11月02日 00時00分 UPDATE

開発者が明かす「ニコニコ動画」人気の“キモ”

たった1人で始まったニコニコ動画の開発。人気の秘密は「みんながちょっとずつ参加できる」こと──そう開発者は話し、サービスの“キモ”であるコメント機能の作り方を明かした。

[岡田有花,ITmedia]
画像 300人を収容する会場はほぼ満席に

 「動画上で行う非同期コミュニケーションを普及させたい」――ニコニコ動画開発の出発点は、そんな思いだったという。「でも、流行るかどうかわからなかったので」開発は小さくスタートした。ドワンゴの戀塚(こいづか)昭彦さんが、1人でプロトタイプを開発。昨年末、最初に公開した「ニコニコ動画(仮)」は、戀塚さんと、同社の鈴木慎之介さんの2人で開発した。

 アドビシステムズが11月1日開いた開発者向けイベント「Adobe MAX Japan 2007」に戀塚さんが登場し、Flashを使ったサービスとしてニコニコ動画を紹介。「みんながちょっとずつ参加できる」のが人気の秘密と語り、コメント機能がサービスのキモだと位置づける。「アイデア一発のサービスにしては、細かい調整に手間がかかってます」

ニコニコ動画は「視聴者の力が大きい」メディア

画像 普段は在宅勤務の戀塚さん。ニコニコ動画の初期コンセプトデザインからリリースまでを担当。プロトタイプは1人で開発した

 ニコニコ動画の人気の秘密は「みんながいろんな手段で少しずつ参加できる」ことだと戀塚さんは言う。動画を投稿するだけでなく、コメントを付ける、「ニコニコ市場」に商品を掲載する、市場の商品を買う、タグを付ける――それぞれ気軽に参加することもできるし、高度な手法で参加する専門の“職人”も現れる。「ニコニコ動画は、視聴者の力が強いメディア」

 動画投稿のハードルも、他サービスより低いという。「未完成の動画を投稿してもコメントで意見をもらい、改良していける」ためで、コメントがもらえればモチベーションも高まる。

 動画を作る技術がなくても、他ユーザーの動画を借りて音声を付け加えたり、編集を施したり――お互いに素材を利用しあう「マッシュアップ」文化があり「個別の手間だけで参加できる」。

画像 「孔明の罠」タグ

 タグの作られ方も独特だ。「音楽」「ゲーム」など動画の種類を分類するタグに加え「才能の無駄遣い」「吹いたら負け」「孔明の罠」など、ヒネリの効いたタグが付けられ、広がっていく。タグは誰でも追加・削除できるため、ひたすら削除しまくる「タグ荒らし」もいるが、それを修復していくボランティア職人もおり、一定の秩序が保たれている。

 ニコニコ市場への商品貼り付けの1つの「芸」だという。「いかにひねった商品を貼り、誰も買いそうにない商品を買ってしまうかも、芸になっている」

 参加手段の幅広さに加え、匿名性がハードルをさらに下げる。「2ちゃんねると同じで、自己紹介などでコミュニティーにとけ込む必要なく、いきなりコメントが書ける」

コメントがメインコンテンツ

 ニコニコ動画は昨年末に発表した(仮)に始まり、(β)(γ)(RC)(RC2)と進化してきた。進化の過程で、動画サーバがYouTubeから自前に変わったり、有料会員制が追加されたりと機能も変化してきたが、コメント機能だけは変わっていない。「コメントはニコニコ動画のメインコンテンツで“キモ”。思ったことを思ったタイミングで投稿できるよう設計した」


画像 ニコニコ動画開発過程
画像 RC2で「ニコニコニュース」を設置した動画直上のスペースは、RC時代に広告を配置して「大ブーイングが」起きたため広告は載せないことにしたという

 気軽で楽しいコメント機能にするために、(1)プレーヤーの画面サイズ、(2)コメント欄の位置、(3)コメントが流れるスピード、(4)コメントと動画の対応――それぞれで細かく調整してきた。

画像

 画面サイズは952×540ピクセル、動画は512×384ピクセル。「できるだけ多くの環境に対応し、たくさんの人に見てもらえるよう」、XGA(1024×768ピクセル)以内に収めつつ、「コメントの文字が読みやすいよう」動画エリアを広く取った。

 動画直下の入力フォームは「コメント」「コマンド」の2つだけ。「画面上に選択肢がたくさんあると迷ってコメントを書きづらくなるから」できるだけシンプルにした。コメントは書き入れてEnterキーを押せばすぐ入力の簡単操作で、気軽に書いてもらえるようにした。

 コマンド欄は「分かる人だけに使ってもらえる機能だから」簡易入力にも2クリック要求するなどコメントよりも複雑な操作にした。

「ちょっと早くてちょっと多すぎる」のがいい

 コメントは右から左に流れるが、そのスピードと量にも配慮した。「ちょっと早すぎてちょっと多すぎる」が基準。人間の処理量ギリギリの量とスピードで表示することでチャレンジ精神に訴えかける「適度に刺激的な情報量」を目指した。

 1画面に表示される最大のコメント数は「十分に混雑している感じが出る」よう30個。1動画当たりのコメント許容数は、動画の長さによって250〜1000にした。これを超えそうになった場合は、古いコメントから半透明になり、消えていく。

 1画面を横断する標準スピードは5秒。短いコメントはゆっくり、長いコメントは高速に動く。

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 投稿直後、コメントは動画の一番右から1秒分進んだ位置に表示される。ユーザーは直前に見たシーンに対してコメント投稿するため、投稿したタイミングぴったりで一番右のスタートラインに表示させると、動画に遅れてコメントがやってくることになり、動画の内容とずれてしまうためだ。

 コメント同士が重ならないよう、縦のどの位置に表示するかも瞬時に計算する。ゆっくり動く短いコメントの後に、高速に動く長いコメントが来ると追いついてぶつかってしまうため、これも回避できるようプログラムを組んでいる。

画像

 同じタイミングでコメントが増えすぎて衝突を回避できなくなった場合は「弾幕モード」に突入。縦位置は乱数で決めてあえてコメントを重ね、大合唱のような感じが出るようにした。

 弾幕モードはニコニコ動画のコメントポリシーである「同じ動画を後から見ても、コメントが流れる位置は同じ」に反しているが、みんなで盛り上がっている感じを出すために採用したという。

 解決できていない課題もある。動画の最後に入力したコメントを表示するタイミングだ。例えば、動画が終った瞬間に入力されたコメントは、標準の仕様のままでは最後まで表示できずに切れてしまう。

 それを避けるために今は、最後に付いたコメントは強制的に早めのタイミングにずらし、動画終了とともに全コメントの表示が終了するようにしているが、最後から約3秒前のタイミングで一斉にコメントが表示されるなど不自然になってしまうため、解決策を模索中だ。

日々進化するニコ動

 「ニコニコ動画は日々進化している」――メインの開発メンバーは5〜6人程度だが、モチベーションが高く、毎日のようにブラッシュアップしているという。「2ちゃんねるで採用した2人もとても能力が高く、彼らのおかげで機能も充実していく」

 ユーザー目線で開発できるのが強み。個々の開発者が自主的に機能を追加していくといい、バージョン管理はSubvirsionで、ドキュメント管理はWikiで行っている。「今後はH.264対応も試していきたい」といい、ニコニコ動画はまだまだ進化しそうだ。

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