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進研ゼミがWeb化 教科書準拠のDSソフトも

» 2007年11月22日 20時18分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「紙の教材だけでは多様化する学習ニーズに応えられない」――ベネッセコーポーレーションは11月22日、中学生向け通信教育講座「進研ゼミ 中学講座」の1年生向け講座で来年4月から、Webを使った教材を提供すると発表した。紙の教材の一部を電子化し、Webブラウザから見られるようにするほか、動画や音声入りの解説、コミュニティー機能などを備える。

 また、中学校教科書に準拠したニンテンドーDSの学習ソフト「得点力学習DS」も来年1月に発売する。教科書に沿って5教科を学習でき、定期試験対策などに利用できる。

 それぞれ、Webやゲームと相性のいい中学生向けにまず展開。反響を見て高校生など向けへの対応を検討する。紙の教材も並行して提供を続け、紙とWebを組み合わせた「ブレンド学習」を提案する。「紙の教材の割合は少なくなるかもしれないが、今後数年で紙がなくなる、ということはない」(同社の的場一成デジタル事業開発本部長)

Webで教材閲覧、アバターやゲームも

 Webを使った講座は「進研ゼミ中学講座 +i(プラスアイ)」。紙の進研ゼミでの学習を補完する教材、という位置づけだ。紙の教材の料金に、月額820円程度の追加料金を支払えば利用できる。


画像 進研ゼミの教材をそのままWebで見られる。キーワードを赤く塗りつぶし、暗記問題にすることも可能
画像 レンズの仕組みを動画で紹介

 進研ゼミ教材の一部を電子書籍化し、Webブラウザで閲覧できるようにした。動画や音声を使った解説も収録。例えば、理科のレンズの働きの解説では、レンズの画像とぬいぐるみの画像を表示。ぬいぐるみをマウスドラッグで動かしながら、ぬいぐるみの像が拡大・縮小・反転する様子を確認できる。

 クイズ形式の練習問題にもトライできる。紙の教材とは異なる問題を出題する予定で、その場で正解・不正解を確認でき、成果は成績表にまとめられる。

 「eラーニングの一番の問題は孤独感」(開発に協力した東京工業大学教授の赤堀侃司教授)といい、コミュニティー機能を取り入れた。学習ペースや目的などに応じて生徒を「クラス」に分類。クラスごとに「メンター」を付け、メンターのブログを開設。メンターは、生徒の学習の状態を見ながら励ましのメールを送る。

 生徒はオリジナルのアバターを作成でき、生徒同士がコミュニケーションできる「サークル」も備えるが「コミュニケーションリスクがあるため、生徒同士の直接対話は避ける」という。直接メールなどはできないようにし、掲示板のようなオープンな場に、スタッフがチェックした上で発言を掲載する――といった形式を想定している。生徒同士が学習ゲームで対戦できる機能も備えた。

 音声認識機能を活用した英会話を練習や、マイクロソフトのオンライン百科事典「エンカルタ」も利用できる。


画像 コミュニティー機能トップページでは、同時にログインしている生徒数と、アクセス元を日本地図上に表示
画像 オリジナルアバター機能を設定できる

 実験では、+iで学習した生徒は、通常の教材を利用した生徒よりも25%試験の成績が良かったという。まず、2008年度に中学講座の1年生会員向けに提供し、翌年度は2年生、その翌年度は3年生にまで拡大。2012年度には全会員の加入を目指す。

 「+i」は、紙とWebを組み合わせた「ブレンド学習」と名付け、紙の進研ゼミも当面は残すという。「学習内容を定着させるには、紙に手で書くという作業が重要。Webと組み合わせることで学習意欲や効率を高めたい。紙の教材の割合は少なくなるかもしれないが、ここ数年でなくなる、ということはない」(的場デジタル事業開発本部長)

教科書準拠の問題演習できる「得点力学習DS」

 「得点力学習DS」は、英語・国語・数学・理科・社会の5教科それぞれについて、教科書に準拠した問題演習ができるDSソフト。中学3学年分をそろえており、設定画面で教科書メーカーを選べば、教科書の章立てに合わせて問題演習できる。

 


画像 教科書を設定する
画像 3択問題のほか、記述式問題もある

 定期試験対策用メニューでは、試験範囲を設定すれば、出題可能性の高い問題から順に出題。間違えた問題を重点的に学ぶこともできる。

 同社の携帯型学習端末「ポケットチャレンジ」(ハード123万台、ソフト703万本を販売)で培ったノウハウを投入した。同社の調査によると、中学生のDS普及率は8割。DSの学習ソフトは「保護者にも受け入れられやすい」(田中隆章モバイル事業開発部担当執行役員補)という。

 ソフトは、1教科当たり3390円。「中1の英数国」(1万1550円)、「中3の5教科」(1万5400円)といったパックセットもあり、全18種類をそろえた。会員向けに販売するほか、電話やWebを通じた通販も行う。12月3日から予約受付を始め、来年1月下旬に発送する。初年度約13万人、30億円・2010年度50億円の販売を目指す。

紙だけでのサポートは困難

 進研ゼミでは学校別に教材を作成し、それぞれの生徒に合わせて教材を送付してきた。だが「保護者の学習に対するニーズも変化してきており、学校によって進度や学習内容も変わっている。プリントメディアだけでサポートするのは困難。新指導要領への対応などを考えても、ネットを使った新たな学習の仕組みを提供していきたい」と同社の福島保社長は話す。

 印刷・郵送も不要でコンテンツを随時更新できるWebを活用することで、柔軟に教材提供できるようにするほか、音声や動画を活用し、紙ではできない分かりやすい解説を目指す。加えて、ゲーム形式の教材なら、子どもたちの集中力も高められるとしている。

 また、同社が2004年に始めた中学受験向けeラーニングサービスは利用者が伸び悩み、すでに終了した。

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