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» 2007年12月07日 00時00分 UPDATE

「YouTubeは世界共通語」――角川会長の考える“次の著作権” (1/2)

ネットのうねりにうまく乗り、「ハルヒ」「らき☆すた」のヒットを生んだ角川グループ。角川歴彦会長は「ネット時代に合った新しい著作権の仕組みを作るべき」と主張する。

[岡田有花,ITmedia]

 YouTubeが火付け役となり、米国でもDVDがヒットした「涼宮ハルヒの憂鬱」、「ニコニコ動画」で人気を集め、台湾や韓国にも人気が広がっている「らき☆すた」――それぞれ、角川グループが手がけてきた作品だ。

 「YouTubeは今や、世界の映像の共通言語」――「電撃」ブランドを擁するメディアワークスの設立者で、角川グループホールディングスの角川歴彦会長は言う。「YouTubeには確かに、角川の作品を含め、著作権をクリアしていない動画がたくさん上がっている。日本の権利者はすぐに訴えてやめさせようとするが、日本の起業マインドを萎縮させるだけ。日本の競争力強化にもつながらない」

 角川会長は新技術や著作権に明るく、文化庁文化審議会著作権分科会の委員も務める。12月6日、早稲田大学知的財産本部が主催した「知的財産セミナー」で「“著作権” 実効性確立への熱い思い −ネット社会のデジタルコンテンツ−」と題して講演し、著作権についての考え方を披露。「国益の視点からも著作権法の制度改革が必要」と説き、新たな権利「閲覧権」の創設を主張した。

Appleスタッフが欲しがった「時かけ」

画像 「グーテンベルク以来、著作権が最も保護される時代を迎えようとしている」というローレンス・レッシグ教授の文章を引用しつつ、「コモンズ」「CODE」を推薦する角川歴彦会長

 角川会長は昨年秋に米国を訪れ、Google、Apple、BitTorrent、YouTubeを訪問したという。「米国で何か新しいことが起きていて、日本ではそれが分からないのでは――という焦りがあった」

 Googleに買収される前のYouTubeは、小さなビルの2階にあり、外観だけを確認した。「こんな小さな会社かと驚いたが、今は世界で10億人が見るサイトだ」。Googleは「なぜこんなに大きな会社になったのか」と訪問。BitTorrentは「Winny問題もあって“P2P=悪者”という偏見があったが、『著作権管理もきちんとできる、ネットの発展型』という説明を受けて納得し、日本に持ってこようと努力している」

 AppleはiTunesでビデオ配信を始めようとしていたころ。「Appleのスタッフに『角川のどんなコンテンツが欲しい? と聞いたとき、1つめは黒澤明の『羅生門』と聞いて納得。だが2つめに驚いた。劇場アニメ『時をかける少女』だったから」

YouTubeでコンテンツ流通が「フラット化」

画像 政府はコンテンツ立国をかかげ、2010年までに、コンテンツ市場を2006年約3割増・18兆7000億円にまで拡大することを目指している。だが日本のコンテンツ市場は縮小傾向。出版市場は1996年から右肩下がり。1996年はYahoo!JAPANができ、日本のネットが普及し始めた時期と重なる。「僕は、出版に元気がない理由をネットのせいにする人を批判してきたが、ネットの成長と出版界縮小があまりにパラレル。ネットの影響は大きいと言わざるをえない」

 日本で人気を集めたコンテンツは、海外でもすぐに話題になる。「最近流行の言葉で言えば、地球はフラット化している」。動画コンテンツの世界レベルでの流通を促進するYouTubeも、フラット化を加速する1つの媒体だ。

 角川会長はその一例として「ファンサブ」を紹介する。「米国西海岸の大学には、日本の動画コンテンツにいち早く英語字幕(ファンサブ)を付け、自分たちがいかに日本文化を知っているかを誇り・広める学生がいて、『ダークエナジー』と自称している。他社の作品だが『サムライチャンプルー』のファンサブは、『正式版よりも自分たちが付けた字幕のほうがいい』と自慢していた」

 YouTubeは、アラブ首長国連邦のアブダビにまで角川コンテンツを伝えていたという。「アブダビを訪れた際、ビデオ店から『角川作品を使いたい』と言われた。なぜ知っていたか尋ねるとYouTubeだった。日本の衛星放送が始まった時、日本のコンテンツが衛星放送を通じてアジアなどに広まっていったが、今はYouTubeがその役割を果たしている」

著作権法が萎縮効果を生んでいる

 米国ではAmazon.comやGoogleといった革命的な企業が次々に誕生した。それは「時代の要請」だという。「『ネット上にぼう大なコンテンツを集積したい』という要請がAmazonを生み、その知識を再編成したいという要請がGoogleを生んだ。Amazonのジェフ・ベゾスがいなくても、Google創業者の2人がいなくても、誰かがやっていただろう」

 米国企業が時代の要請に応えられたのは、米国の知財戦略の結果と話す。「米国は『20世紀は知識・情報・コンテンツの時代』ととらえ、1980年代から知財に着目して法整備してきた。日本がバブルに浮かれて『米国に勝った』と勘違いしていた時に差をつけられたのだ。今日本は、競争力が下がっている」

 知財戦略――中でも著作権法の違いが、革命的な企業の誕生を左右するという。「米国は、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)など、ゆるやかな著作権の仕組みに支えられてYouTubeがある。日本だと、YouTubeに権利をクリアしていないコンテンツが上がっているとすぐに訴える、という話になるが、DMCA法なら権利者から権利侵害を指摘された際にコンテンツを下げれば問題ない」

 また、著作権法の複製権・公衆送信権の問題から検索サーバを日本に置けないなどの理由で、日本のサービスのサーバですら米国に一極集中しているという点にも言及。日本では、ネットを活用した革新的なサービスが著作権法に触れ、訴えられて停止に追い込まれるという例も多くある。「日本の著作権法は、萎縮効果を生んでいる」

 ネットに対する「2つの誤認」も、日本での革新をはばんでいるという。1つ目は、GoogleやYouTubeといったWeb2.0企業が「誰もかなわないような技術力を持っている」という誤認。2つめが「ネット上は海賊版がはんらんする違法コピーの巣窟」という誤認だ。

 「GoogleやYouTubeは、すでにある技術を組み合わせた。誰もついて行けないというほどの技術力ではない」。2社のような革新的な企業が日本に誕生するために必要になるのが「制度イノベーション」――著作権法の見直しだという。

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