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録音録画補償金問題、来期に持ち越しへ私的録音録画小委員会

» 2008年01月23日 16時23分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会の最終会合(第17回)が1月23日に開かれ、著作権分科会に提出する経過報告案の文面について議論したが、結論を来期に持ち越すことを確認し、10分ほどで終了した。

 報告案では「DRMと補償金の関係など一部の論点について関係者間で意見がまとまらず、今期は報告書を提出できない。来期も継続して議論する必要がある」などとまとめた。来期の小委員会は2月以降に始め、早期に報告書をまとめる方針だ。

DRMが普及すれば補償金廃止? 継続議論へ

 今期の私的録音録画小委員会は2006年4月に第1回を開催し、2年後をめどに結論を出す予定だったが、一部の論点について関係者間で意見がまとまらず、議論がこう着していた。

 違法にアップロードされたコンテンツのダウンロードを違法とする著作権法改正案については「反対意見はあったものの、委員間でおおむね意見一致を得た」(文化庁の川瀬真・著作物流通推進室長)が、肝心の補償金制度については、制度の維持を主張する権利者側と、撤廃を主張する電子情報技術産業協会(JEITA)などメーカー側の意見対立が続いていた。

 文化庁は07年12月の会合(第15回)で「DRMによってコンテンツの複製回数を完全にコントロールできれば、補償金は不要になる」という前提に立ち、補償金制度撤廃に向けた案を提示。1月17日の会合(第16回)では、権利者側・メーカー側双方に大幅な譲歩をしてもらった結果として、(1)DRMの動向を見ながら、私的録音録画補償金を順次縮小していく、(2)ただし、事実上コピーフリーとなっているCDと、「権利者が意図しない」DRMが採用されている「ダビング10」は、補償金でカバーする――といった方向性を示した

 川瀬室長によると、文化庁が提示したこれらの案は「各団体に持ち帰って検討する価値があると評価してもらった段階」という認識。来期は各団体の検討結果を小委員会に持ち寄り、議論を継続していく方針だ。

結論を急ぐべき

画像 10月11日に公開された「中間まとめ」以降の議論の経緯を、A4サイズ2枚にまとめた経過報告案
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 これまでの経緯をまとめた報告案の文章について、委員からは大きな異論は出なかった。ただ「利用者に大きな不利益を与えないことを前提として、可能な分野(例えば適法配信)から30条の適用範囲を段階的に縮小していく」という文言について、野原佐和子委員(イプシ・マーケティング研究所社長)から「利用者に大きな不利益がなければそれでいいのか。『利用者の利便性確保を前提として』などといった表現に書き換えるべきでは」という意見が出た。

 小委員会を来期も継続することについても異論はなかったが、実演家著作隣接権センターの椎名和夫さんが「補償金制度が機能不全に陥る中、4年にわたって議論し、いたずらに時間が過ぎた。『ダビング10実施』というタイムリミットがあるということを指摘しておきたい」と話すなど、来期の議論はできるだけ迅速に進めて早期に結論を出すべき――という意見が複数の委員から出た。

 今回まとめた経過報告書は、1月30日に開かれる予定の文化審議会著作権分科会に提出。来期の小委員会については2月の同分科会で決まり、早ければ2月終わりから3月上旬に、第1回の小委員会が開かれる予定だ。

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