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Googleの出方は? 700MHz無線周波数帯の競売がいよいよ開始

» 2008年01月24日 17時03分 公開
[Roy Mark,eWEEK]
eWEEK

 皆の話からすると、米連邦通信委員会(FCC)が1月24日に開始する700MHz無線周波数帯の競売は歴史に残るものになりそうだ。だがもっと大きな問題は、何十億ドルものコストを投じてこの周波数帯を落札した勝者が果たしてその周波数帯を活用して歴史に残る何かを成し遂げるかどうかだ。

 歴史に残るというのは決して大げさなもの言いではない。まず第一に、この競売ではおそらく100億ドルを超える入札も行われると見られており、その規模はこれまでのFCCの競売の記録を塗り替えることになりそうだ。またこの競売では、従来からの無線通信事業者に対抗する第3のライバルが登場するとみられている。

 そしておそらく最も歴史的なのは、この競売で最も切望されている「ブロックC」の周波数帯には、ネットワークをオープン化するという条件が付随している点だろう。ブロックCは最低入札価格46億ドルからスタートするが、その落札者は消費者が自分の好きな端末を自由にネットワークに接続できるようにしなければならないことになっている。

 そして当然のことながら、この周波数帯の有力な落札候補者とみられているのは、米国の携帯通信業界のトップ2社、AT&TとVerizonだ。この周波数帯はテレビ局がデジタル放送へ移行するのに伴い、明け渡されるものだ。

 ただし従来型の通信事業者と新興のモバイルインターネット勢力との間で繰り広げられるこの700MHz周波数帯の争奪戦には、ほかにも検索・広告大手の米Google、モバイルプロセッサメーカーの米QUALCOMM、衛星テレビサービスの米EchoStarのほか、CATV会社が数社、そしてMicrosoftの共同創設者であるポール・アレン氏なども参加を表明している。

 「現職組が勝てば、既存の市場での利益を守ろうとするだけだろう。使用できる周波数帯は拡大するが、現職組が落札すれば、新規競合の参入を阻止しようとするだろう」とビジネスコンサルティング会社FTIの通信&メディア担当主任、カーリン・テイラー氏はeWEEKの取材に応じ、語っている。

 だがもしAT&TやVerizonが負ければ、「それは歴史的な出来事となるだろう。ビデオや衛星テレビ、CATV、あるいはそのほか何であれ新興の勢力が落札することになれば、それは市場のシフトを促す出来事になるだろう」と同氏。

 新興の勢力に対する憶測の大半はGoogleに関するものだ。同社は2007年夏、ブロックCにはネットワークのオープン化の条項を付すよう、FCCに大々的に働き掛け、FCCを説き伏せた。その目的が果たせた今、この周波数帯を手に入れて全米規模の無線ネットワークを運営したいという気持ちがGoogleに本当にあるのかどうかについては、疑問がくすぶっている。

 「Googleの一番の目的は、既存組の顧客ベースに近付くことなのだろう。この競売は実際のところ、Googleにとっては第2のプランだ。Googleは本当のところ、モバイル市場で権利を主張したがっているだけなのだろう」とテイラー氏。

 テイラー氏によると、FCCがオープンネットワークの条項を設けたことで、一見したところ、Googleはその目的を果たしたようにも見えるが、Googleは競売にも留まることで無言の脅迫を行っているのだという。「Googleは従来からの通信事業者に対し、“もし当社が希望する方針を受け入れないのなら、われわれがその周波数帯を購入するまでだ”と脅しをかけているのだろう」と同氏。

 当初、AT&TとVerizonはFCCの規則に異議を唱え、最高値の入札者にこの周波数帯を何ら条件なしで販売することが連邦議会の意図するところだと主張していた。さらにVerizonはFCCのオープンネットワークの条項は「恣意的かつ気紛れで、法律に反している」と主張し、訴訟まで起こしている。

 だが結局Verizonはこの訴えを取り下げ、ブロックCを落札した場合にはオープンネットワークの条項に従うことに同意しただけでなく、自社のネットワークを開放し、他社の製品も含め任意の携帯端末やソフトウェアを接続する選択肢を顧客に提供する方針まで発表している。

 「無線端末が大衆市場に普及し始めて以来、この20年間の歴史における変換点だ。これを機に、革新と成長を次なるレベルに導くためのおぜん立てが整うことになるだろう」とVerizon Wirelessの社長兼CEO、ローウェル・マカダム氏は声明で語っている。

 テイラー氏は違う考えだ。「Verizonの動きには皆、疑念を抱いている。勝つことが無理ならば、せめて仲間に加わるそぶりを見せておこうということなのだろう」と同氏。

 またテイラー氏は、ブロックCの周波数帯が家庭に第3のブロードバンドへのパイプを開くことになるという考え方にも懐疑的だ。「テレビ番組や動画を無線で見るというのは、多くの人が思っているよりもはるかに高く付く行為だ。たとえ、新世代のネットワークであってもだ。今後、無線ブロードバンドは成長を続けるだろうが、有線の方がはるかに安価であることに変わりはないだろう」と同氏。

 700MHzのブロックCの周波数帯では、電波が壁や山などの障害物を貫通するため、長距離の通信が可能だ。この競売の落札者が明らかになるのは、数週間後の見通し。FCCは最高入札額を毎日公開するが、入札者の名前は明かさないことになっている。また談合排除のため、入札者は競売に関する発言を禁じられている。

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