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「市場のスピードとギャップがあった」──パイオニアがPDP生産から撤退、松下から調達へ

» 2008年03月07日 19時44分 公開
[ITmedia]

 「パイオニアのリソースと世の中のスピードが同期していなかった」──パイオニアは3月7日、プラズマディスプレイパネル(PDP)の自社生産からの撤退を正式発表した。今後は松下電器産業からの調達に切り替える方向で協議するほか、資本・業務提携したシャープから液晶パネルの供給を受けて液晶テレビ販売にも乗り出す方針だ。

 その一方、ディスプレイ事業は「売り上げ規模に見合った体制」へのリストラに踏み切る。PDP生産に関わってきた国内3工場の社員約1500人は配置転換などで最大限雇用確保を図る方針だが、来期はリストラ関連で費用計上を見込む。須藤民彦社長は「社員のことを考えると苦しい。だが事業を考えると撤退せざるを得なかった」と語った。

photo PDP生産撤退を発表する須藤社長

 同社は2007年度(08年3月期)のプラズマテレビ出荷目標を72万台としていたが、世界市場で販売が伸び悩み、48万台へと大幅に下方修正していた。大型市場で液晶との競合が激化したた上、米国景気の減速も直撃。「今後想定される販売数量でコスト競争力を維持することが難しい」と判断、撤退を決めた。

 PDP調達先として松下と協議を開始した。パイオニアの技術を開示するなどして高画質化したパネルの供給を受け、さらに独自技術を加える差別化する付加価値型ビジネスに転換する。シャープから調達するパネルを搭載した液晶テレビも今秋、欧州市場を皮切りに販売を始める計画だ。50インチ以上の大型はプラズマ、それ以下は液晶というイメージで、高画質な「KURO」を軸にしたマーケティングは継続する。

 PDP事業の人員はカーエレクトロニクス事業、DJ機器などのプロSV事業、Blu-ray DiscなどのAV事業などに振り分ける計画だが、「現時点では詳細は白紙」としている。

 PDP生産撤退に伴い、設備の減損処理による損失を今期に計上する。このため08年3月期の業績見通し(米国会計基準)を修正し、税引き前利益は70億円(前回予想は260億円)、純損益は150億円の赤字(前回予想は60億円の黒字)に。最終赤字は4期連続。

何が何でも一番になる気構えが薄弱だった

 社名の通り、プラズマテレビや世界初のDVDレコーダー、DVD-RWなどでデジタル家電に早くから取り組んできた同社。だが普及が進めば進むほど、後から参入してきた競合大手に追い抜かれていくという悲哀も繰り返し味わい、ついにPDPの生産撤退に追い込まれた。

 「(経営リソースと世の中のスピードとの)ギャップは感じていたわけだが、求められる『パイオニアらしさ』とどう整合をとるか苦労してきた。しかしその苦労がなかなか成果に結びつかなかった」と須藤社長は自己分析する。

 「一概には言いにくいが、新しい商品やメディアを開発したら何が何でもそこで一番になる気構えや資金などが薄弱だったと思う。ポテンシャルの高い事業があれば徹底的にそこにかけて、1位の座を譲らないくらいの構えがないと市場ではダメかなと、一般論としては思う」(須藤社長)。経営全体についても「市場の変化のスピードに対して戦略固めが遅いということがあった」とも反省する。

 現在、シャープが投入予定の超薄型液晶テレビ用の音響部分の共同開発を進めているほか、「KURO」シリーズを継承する高品位な液晶テレビや、BD用ピックアップ・ドライブなどの共同開発も進める計画。ホームエレクトロニクス事業は10年3月期の黒字化を目指す。

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