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» 2008年03月25日 13時00分 UPDATE

より多くのPCユーザーに“HD Ready”を――日本AMD

日本AMDは先ごろ、コンシューマー向けの新しいマーケティングプログラムとして“AMD HD! Experience”を発表した。PCによるHDコンテンツの再生・編集にスポットを当てたこのプログラムの詳細について日本AMDに尋ねた。

[笠原一輝,ITmedia]

 日本AMDは3月12日に行われた発表会で今後“AMD HD! Experience”というマーケティングプログラムを展開していくと明らかにした。このAMD HD! Experienceによって、AMDはユーザーが手軽にHDのコンテンツを再生したり、編集したりできるような環境を分かりやすい形で提供し、新しい市場の構築を目指していくという。

 その第1弾として同社は、デジタルビデオカメラ“Xacti”シリーズを展開する三洋電機とHDビデオの普及で協業していくことを明らかにし、Xactiのハイエンドモデルである「DMX-HD1000」に付属の動画再生ソフトウェアの、AMDのGPUや統合型チップセットに内蔵されているHD動画ハードウェアデコーダ機能“UVD”(Universal Video Decoder)に対応するバージョンへのアップデート版を無償で提供することなどを明らかにした。

 さらに第2四半期にAMDが投入する予定の次世代ノートPCプラットフォームの“Puma”ではUVD機能をノートPCにも実装し、デスクトップPCだけでなくノートPCでもAMD HD! Experienceを積極的に推進していくとしている。

既存のPCには荷が重いMPEG4 AVC/VC1のHD動画再生

 東芝がHD DVD事業の終息を宣言したことで、次世代DVDはBlu-rayに一本化され、本格的な普及がこれから開始されるものと見込まれている。また、HD動画が撮影可能なデジタルビデオカメラも急速に普及が進んでおり、すでにビデオカメラの売れ筋はHD対応製品になりつつある。

 Blu-rayやHD対応ビデオカメラなどの動画ファイルでは、従来のMPEG2だけでなく、より圧縮率の高いMPEG4 AVC(H.264)とVC1というコーデックが採用されている。コーデックとは、動画をデジタル化する時に利用されるルールのことで、MPEG4 AVC/VC1ではより高度な演算を行うことで、クオリティーを保ちつつ動画のファイルサイズをより小さくできるため、HD動画で利用され始めている。

 しかし、MPEG4 AVC/VC1コーデックの動画ファイルをPCで再生するには、処理能力上の問題があった。MPEG4 AVC/VC1で使われている演算方式が、現行のPC用CPUが得意とする種類の演算ではないため、非力なCPU、特にローエンド向けのシングルコアCPUを搭載したPCで再生した場合には、コマ落ちが発生したりCPU使用率が100%近くになりほかの処理ができなくなったりするなどの問題が発生していた。

 実際、AMDが発表会で行ったデモでは、Athlon X2 1.8GHzというローエンド向けのCPUをシミュレートしXactiで撮影したHD動画を再生したところ、CPU使用率は80〜90%近くになっており、PCがバックグランドで他の処理(例えばウイルススキャンなど)を行うと、100%に達して結果的にコマ落ちなどが発生してしまう可能性がある。

UVDのデモ画面 AMDの発表会で行われたUVDのデモ。左側がPhenom 9600+AMD 780G(UVD対応)、右側がAthlon X2 4200(2.2GHzをダウンクロックし1.8GHzで動作させた)+AMD 690G(UVD未対応)。右側のUVD未対応ではCPU負荷率が80〜90%になっていることが分かる

AMDの課題:780Gをメインストリームユーザーにどうアピールするか

 そうした問題はより高速なCPU、例えばクアッドコアCPUのPhenomなどを利用することで解決できる。ハイエンドユーザーであればそれでよいのだが、メインストリームユーザー、特にPCメーカー製PCを購入するようなユーザー層では、それほど高速なCPUが搭載されていない場合が多い。かといってメーカー製PCの場合にはCPUを交換という訳にもいかないだろう。

 この問題に対してAMDがエンドユーザーに提供しているソリューションがUVD(Universal Video Decoder)だ。UVDはAMDが提供するRADEON HD 3000シリーズなどに搭載しており、MPEG4 AVC/VC1、MPEG2をUVDを利用してデコードすることでCPUに負荷をかけることなく動画を再生できる。UVDはAMDが今月発表したばかりのAMD 780GというGPU統合型チップセットのGPUであるRADEON HD 3200にも搭載されており、今後OEMメーカーなどからチップセットにAMD 780Gを採用した製品が登場すれば、エンドユーザーは高価なハイエンドCPUを選択しなくてもMPEG4 AVC/VC1コーデックのHD動画の再生が楽々可能になる。

日本AMD 土居憲太郎氏 日本AMD マーケティング本部 PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング部 マネージャー 土居憲太郎氏

 AMDにとって大きな課題となっていたのは、この利点をどのようにエンドユーザーにアピールするかだ。日本AMD マーケティング本部 PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング部 マネージャー 土居憲太郎氏は「秋葉原などを中心とした自作PC市場に対しては、イベントを開催するなどしてアピールを行ってきたこともあり、UVDの魅力はある程度浸透していると考えている」と話し、ハイエンドユーザーが多い自作PCユーザーに関してはより理解を深めてもらうための工夫をしてきたという。確かに秋葉原などではBlu-ray Discドライブとハードウェアデコード対応GPUを搭載したビデオカードがセットで購入されるのも当たり前の風景になってきており、そうした意味で、UVDの利点は自作PCユーザーに関しては受け入れられていると言ってよい。

 問題は、AMD 780Gがターゲットにしているようなメインストリームユーザーだ。なぜなら、こうしたユーザーのほとんどはPC購入に当たって細かいスペックをあまり気にしていない。CPUのモデルぐらいであれば調べるものの、チップセットまでは確認しないことがほとんどだ。従って、AMD 780Gをメインストリームユーザーにどうやってアピールするのか、それがAMDにとっての課題となっていたのだ。

ビデオカメラメーカーも歓迎 PCが“HD Ready”になること

 そこでAMDが打ち出したのが、PCにおけるHD動画の利用を増やすことでAMD 780Gのメリットを訴えていこうという戦略だ。AMDは、PCでHDコンテンツを再生・編集することの楽しさを訴えていくマーケティングプログラムを展開していく。

 その第1弾となるのが三洋電機との提携だ。三洋電機は1080pのHD動画を撮影できるXacti DMX-HD1000のユーザーに、バンドルしているPC用再生ソフトウェアをUVD対応版にする無償アップグレードを提供する。これにより、RADEON HDシリーズやAMD 780Gを搭載したPCで、DMX-HD1000で撮影したMPGE4 AVCの動画を快適に再生できるようになる。

三洋電機 豊田秀樹氏 三洋電機 パーソナルモバイルグループ DI事業部 DI企画部 部長の豊田秀樹氏

 先日の発表会で三洋電機 パーソナルモバイルグループ DI事業部 DI企画部 部長の豊田秀樹氏は、「せっかくカメラがHD動画を撮れるようになっていても、これまではPC側の準備が整っていなかった。しかし、こうしたAMDのソリューションが登場することで、本格的に利用できる環境が整ってきたと感じている」と述べている。

 対するAMDも「今回の提携については、弊社の側から積極的にアプローチした。ご存じのように三洋電機様のXactiはPCに近い製品。両社の思惑はぴったり一致して、共同マーケティングの話をスムーズに進めさせていただけた」(土居氏)と、HD動画に対する両社の思いが結実したものであると強調している。

 また、日本AMDにとってもAMD HD! Experienceを推進することは大きな意味がある。「今回のプログラムは日本の発案で始まった。これまでは米国のマーケティングチームで考えたプログラムを各国で展開するという形だったが、今回のAMD HD! Experienceは日本のチームのアイデアから始まっている。特に主要なビデオカメラメーカーのほとんどが日本企業であり、米国のチームもそうした事情を勘案してくれた」(土居氏)との言葉の通り、今回のAMD HD! Experienceプログラムは日本のマーケットの事情を反映したものとなっている。

さらなるAMD HD! Experienceの推進、ノートPCにもUVDを実装

Better by Designロゴの例 AMDによるBetter by Designのロゴシールの1例。1つめはCPU、2つめがGPU、3つめはフリーで、無線LANが入ったり、そのほかのベンダのロゴが入ったりする。AMD HD! Experienceのロゴはここの3つめに入る場合と、HD単独の場合の2つのパターンでのロゴ展開を予定しているという

 AMDは三洋電機との協業に続き、第2、第3の矢を放つ予定だ。まず、AMD HD! Experienceに関するサイトを開設し、3月31日午後1時1分に公開する予定だ。

 さらに、近い将来にはAMD HD! Experienceロゴを作成し、PCや外箱などに貼付する予定もある。「エンドユーザーにHD対応製品をより簡単に分かってもらい、HDの楽しさを理解してもらうためにロゴシールは必要だと考えている。現在ロゴは制作中で、現在メーカーに提供している“Better by Design(ベター・バイ・デザイン)”ロゴシールの中にはいるのか、あるいは独立するのかは未定だが、できれば独立したロゴにしたい」(土居氏)と、何らかの形でAMD HD! Experienceをアピールするロゴを作成したいという意向を明らかにした。

 AMDでは今後もUVDに対応したハードウェアをリリースしていくが、次の製品が第2四半期に投入が予定されているノートPCプラットフォームPuma(開発コード名)だ。このPumaではチップセットとしてAMD 780GのノートPC向けバージョンRS780Mを提供する。RS780MはもちろんUVD対応で、これまでHD動画の再生などが苦手と考えられていたノートPCでも軽々とHD動画の再生が可能になるはずだ。

 さらに、今年の後半には45nmプロセスルールで製造されたCPUの投入も計画されている。3月初旬にドイツで開かれたCeBITでは、45nmプロセスルールのPhenomのウエハーを公開したほか、45nm版Phenomの動作する様子がデモされた。これによってより高いパフォーマンスのPCが市場に登場することになる。

 PCでのHD動画視聴というスタイルが広がるかどうか、AMD HD! Experienceプログラムを通じたAMDの動きに注目していきたい。

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