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» 2008年04月09日 15時42分 UPDATE

「青少年ネット規制法案」にMIAUが問題点指摘 イベント開催へ

「検閲に当たる可能性がある」「個人の情報発信を阻害する」――青少年に有害なサイトの閲覧を規制する法案について、MIAUが問題点を指摘した。この問題について考えるイベントも開く。

[ITmedia]

 MIAU(Movements for Internet Active Users:インターネット先進ユーザーの会)は4月9日、自民党と民主党がそれぞれ国会提出を目指して準備している、青少年に有害な内容のサイトの閲覧を規制する法案について、「検閲に当たる可能性がある」「非商業サイトも対象になっており、個人の情報発信を阻害する」といった問題点を指摘し、国会提出は懸念を解決してからにすべきだという見解をWebサイトで公表した

 この問題について考えるイベントを5月1日に開くほか、国会議員へのロビー活動や、対案となる有害情報対策案の研究を行っていく。

 自民党は「青少年の健全な育成のためのインターネットの利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」、民主党は「子どもが安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案」を準備し、今国会への提出を目指している。

 両党の法案はそれぞれ、18歳未満の青少年がネット上の「有害」コンテンツを閲覧することを防ごうという目的。民主案は民間の自主的な取り組みの重視を打ち出しているのに対し、自民案は国の権限や罰則を明確化した、規制色の強い内容になっており、MIAUの主張は自民案をベースに構成されている。

自民案「内閣府の委員会で“有害”の判断基準作成」

 自民案では「有害」と定義する情報として、「人の性交などの情報で、青少年の性に関する価値観に著しく悪影響を及びすもの」「殺人、傷害、暴行などの情報で、青少年の残虐性を著しく助長するもの」「特定の青少年に対するいじめに当たる情報」――などを示し、内閣府に設置する「青少年健全育成推進委員会」(最大5人)が、ネット上の全コンテンツについて、有害か無害かについての判断基準を作成することになっている。

 サイトに有害情報が書き込まれたことを知った場合は、個人を含むWebサイト管理者やISPは、サイトを未成年が入れない会員制にするか、フィルタリングソフトがアクセス制限する対象として申請する――といった対応を義務付ける。

 ISPやコンテンツ事業者には、有害コンテンツの削除やサービス停止を求め、従わない場合には罰則も設ける。市販される携帯電話については、契約者が不要と申し出ない限りフィルタリングサービスに加入。PCなどその他のネット接続機器については、フィルタリングソフトをプリインストールして販売することを努力義務とする。

「情報発信を阻害」「フィルタリングだけに頼るのは問題」

 MIAUは、自民党の法案をベースに、(1)有害の基準を内閣府の委員会が決めるのは検閲に当たる、(2)個人サイトも対象になっており、個人の自由な情報発信を阻害する、(3)ISPが講ずべき対策の範囲が不明確で、広範囲、(4)フィルタリングは技術上問題がある、(5)国民の知る権利を侵害している、(6)子どもの教育について具体策がない、(7)フィルタリングソフトの導入費用を、フィルタリングを利用しないユーザーも支払うことになる――という7点で問題を指摘している。

 MIAUの主張の概要は以下の通り。

(1)有害の基準を内閣府の委員会が決めるのは、検閲に当たる

 法案ではネット上の膨大な情報の有害・無害を、内閣府に設置される少人数の委員会が独占的に決定することになっているが、有害の基準を国が作るのは情報の検閲に当たると思われる。

(2)個人の自由な情報発信を阻害する

 現状の法案は個人サイトも対象。個人サイトに商業サイトと同様の対応が義務づけられ、会員制サイトへの移行などが求められるとすると、個人が自由に情報を発信するという行為自体を阻害することになりかねない。

(3)ISPが講ずべき対策の範囲が不明確で、広範囲

 中小のISPやコンテンツプロバイダにとって、対策への負担は重い。法案には「有害情報が書き込まれたことを知った場合には」対策を義務付けるとしているが、ISPの責任が重く、不明確。

 コンテンツの性質を第三者が判断してレイティングすることは、ユーザーとのトラブルを日常的に発生させる原因になる可能性がある。競合他社のサービスに有害情報を書き込むことで運営を妨害するといった可能性もある。

 法案はこういったトラブルについて紛争処理機関による解決を求めているが、この機関での裁定は「非公開で処理すべき」としており、透明性・公開性への配慮がない。

(4)フィルタリングは技術上問題がある

 フィルタリングの技術は不完全で、大切なサイトを遮断したり、有害サイトを素通しするといった多くの問題が指摘されている。有効性が実証されてもいない段階から義務化するのは誤りでは。年齢に応じたフィルタリングのカスタマイズは親の責務となるが、現時点でそれが可能なのは、一部の親に限られる。

(5)国民の知る権利を侵害している

 国民の知る権利を大きく侵害している。フィルタリングで有益な情報が遮断される可能性が高いほか、コミュニティーサイトがサイト単位でまとめて規制されると、友人とコミュニケーションすることで精神の平衡を保っている青少年にとって、むしろ有害になる。IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)の精神にも反する。

(6)教育について具体策がない

 フィルタリングの運用の具体性に比べて、青少年への教育・啓蒙活動の具体策がない。有害情報に対処するには、青少年に何が危険かを教えていくことが大事なのでは。

(7)フィルタリングソフトの導入費用の問題

 法案では、PCメーカーがフィルタリングソフトをプリインストールすることを努力義務としているが、費用がPC価格に転嫁されれば、フィルタリングを利用しないユーザーの負担も増すことになる上、海外からの輸入PCや、LinuxなどフィルタリングソフトのないOSへの対応が不明確。

 MIAUは、こういった懸念を解決してから法案を国会に提出すべきで、拙速な対応を行うべきではないと主張。今後も法案について検討を行うほか、国会議員へのロビー活動や、法案の問題点の一般への周知活動を行っていく。同時に、有害情報への対策案の研究も行っていく。

 5月1日午後6時30分から、この問題に関するイベントを都内で開く予定。詳細は後日公開する。

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