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» 2008年04月15日 16時49分 UPDATE

おもしろさは誰のものか:「コピーされ、2次創作されてこそ売れる時代」――伊藤穣一氏に聞く著作権のこれから (1/2)

「誰にもコピーされなければ、作品は広がらない」――CCのCEOに就任した伊藤穣一さんは、コンテンツビジネスが変革期にあると語る。

[岡田有花,ITmedia]

 「誰にもコピーされなければ、作品は広がらない」――クリエイティブ・コモンズのCEOに就任した伊藤穣一さんは、ネット上にコンテンツを開放することの意義を語る(関連記事:新CEO 伊藤穣一氏に聞く、クリエイティブ・コモンズとは)。

 P2Pファイル交換ソフトを通じてアニメや楽曲ファイルが出回り、YouTubeや「ニコニコ動画」などにもテレビ番組が無断でアップされる。アニメなどを素材に、ユーザーが別の素材を組み合わせて“マッシュアップ”作品を作る。ネット以前にはなかったこういった動きに、権利者が手を焼いている。

 その一方で、楽曲のMP3を無料で配布するアーティストや、YouTubeをプロモーションに活用しようという動き、「マッシュアップ用」に公式コンテンツを開放する例も出てきた。

 「今後は、コンテンツのデータは、CCのようなルールに則った上で、できるだけネットに開放し、2次創作を奨励した方が収益にもつながる」と伊藤さんは指摘。DRMで守ったデータを販売するといった従来のモデルが、変化していくとみている。

コピーされなければ、作品は広がらない

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――CCライセンスは、コンテンツのコピーをネット上で無料で開放できる。従来の「コピーを守って対価を得る。コピーをOKするかどうかは、相手を見て決める」といった考え方とは逆だ。クリエイターにとってメリットはあるのか。

 CCの「非営利」ライセンスを使えば、一般の人が口コミで利用する際は自由に使え、営利目的で利用する際は、著作者がちゃんとお金をもらえる。

 ほとんどのアーティストは「作品を人に見てもらいたい」と思っている。今のネットワークだと、誰もコピーしなければ、作品を知られることは難しいと思う。要はトラフィックの問題だ。

 インターネットは単純に言えば、トラフィックがメインの財産。基本的には、トラフィックがないものは価値がほとんどない。

 GoogleがなぜMozilla Foundationに年間何十億も払っているかというと、FirefoxからGoogleにトラフィックを送っていて、それがネット広告からの収入につながるからだ。昔のInfoseekは、1回検索したらいくら、とお金を取ろうとしていたが、それは意味がない、というかネット上では動かない。

 アーティストから言えば、マーケットがグローバル化、ニッチ化し、マスコミの力がだんだん落ちている中で、どうやって自分のサイトにトラフィックを持ってくるかとか、どうやってコラボレーションパートナーを探すか――つまりどうやってインターネットに参加するかが一番難しい。どうやって売るか、運ぶかは、問題ではなくなっている。

流通コストとプロモーションコストが逆転した

 昔は流通コストが高くてプロモーションコストが安かった。以前は、CDを出すにはまず、有名になってレコード会社と契約し、業界の玄人にゴマをすって好かれる必要があった。99%のアーティストは、CDを出すほどのコネを業界に持っていないのが現状だ。

 反面、一度業界に入ると、プロモーションは簡単だった。音楽なら、MTVなどに出してしまえば下手でも人気が出た。日本だとドラマのテーマ曲になれば、すぐに投資回収できた。

 だが今は逆。メディアにとって、プロモーションコストが無限に高くなり、お金があっても有名になれなくなった。その一方で、アーティストが自分でプロモーションして自分で売ることができる時代。流通コストも、ネットを使えば無料だ。有名にさえなってしまえば、アーティストは自分で直接販売できる。

 有名になるためには、みんなに聴いてもらうことが必要。そのためには、BitTorrentに楽曲をガンガン上げて聴いてもらう、といったことに意味が出てくる。有名になって話題さえ取ってしまえば、流通コストはゼロに近い。

 昔は米国のアニメコンベンションなどにも、やくざっぽい「物流屋さん」がいたが、そういう人たちは不要になった。「インテリが書いてやくざが売る」とも言われるが、やくざがいらなくなった時代。日本のアニメも、CCの非商用ライセンスでばんばん出すべきだと思う。

――CCでデータを無料開放してしまうと、コンテンツ販売から収益を得られなくなるが。

 データそのものの販売は難しくなると思う。ミュージシャンのMP3は「アーティストのメタデータ」だと思っている。

 データの中に「リレーションシップ」があれば――例えば希少性があったり、ユーザーIDとひも付いている自分だけのものになっていたりするデータは、価値があると思う。ファンはみんなアーティストの“一部”がほしい。それは、限定CDやサイン入りのグッズや、イベント、という形で販売できる。

 ネットのおかげで、アーティストは自分のサイトから直販できるようになった。ファンも、アーティストのサイトから買う方が、Amazonで買うよりも価値を感じる。アーティストとの“関係性”のあるコンテンツの価値はすごく高まる。

 MP3データの価値は下がり、関係性の価値が高まる時代だ。ビジネスモデルは変えなくてはならない。

CCでMP3公開、1億6000万円の収益につながる

 CCで楽曲を無料開放することでプロモーションし、CCで楽曲を公開したナイン・インチ・ネイルズの場合は、300ドルの限定版のCDのボックスセット2500個が、すぐに売り切れた。

 彼らはECサイトはほとんど使わず、自分たちのサイトでCDを売っている。収入の1億6000万円はほとんど自分たちに入っている。昔は大部分を、仲介業者にもってかれていたものだが。

――物流の中心にいたレコード会社や出版社などは、今後縮小していくのか。

 物流がメインで残ることはないだろう。だがプロデューサーや、ファイナンスができる人、編集者、ライターは必要だ。物流を持ってるだけで生き残っている人たちが中にはいて、そういう人たちは厳しいんじゃないかと思う。

コンテンツ無断利用の功罪

――YouTubeやニコニコ動画、P2Pファイル交換ソフト上のコンテンツの無断コピーが問題になっている。

 ニコニコ動画やYouTube、BitTorrentなどに勝手にコンテンツをアップしている人たちには、重要な役割がある。「放っておくと今の若い人たちはこういうことをしたがる」とビジネスや世間に知らせているという役割だ。

 だがその結果、著作権保護者対ハッカーたちという対決が起きて、うまく着陸する場合もあれば、米国みたいに裁判になることもある。お客さんのことを「犯罪者」と呼んじゃった時、音楽業界は損したと思う。

 メディア側もそれを見て、彼らがやっていることを合法化するにはどうすればいいか考えるべき。「このコンテンツは非商用利用ならコピーOK、でも利用したらきちんと報告してね」などと出していくべきだろう。ユーザー側もちょっと大人になって、ライセンスの範囲内でコンテンツを楽しもう、というサイトも出てくるかなと。

 ただ、お互いが近づこうとした時、法律の下でやらないと、最終的に契約もできない。本来のクリエイティブには契約もビジネスモデルもお金も不要だが、作品が一般化するときには必要になってくる。

 著作権を無視する実験もすごく大事だけど、コンテンツをグローバルにして投資家を集めるとか、違法行為を犯す心配なくみんなで使うためには、最後は法的なバックグラウンドが必要だ。

 CCは今の著作権法をもとに作っているが、中長期的には、それによって法律そのものも変わる必要があると思う。それは、CC自身の役割ではないと思うが。

2次創作を許可すれば、売り上げも上がる

――漫画やアニメ、楽曲の2次創作が「ニコニコ動画」などで盛り上がっている。

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