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「実際に一人負けだった」──「新ドコモ宣言」と新ロゴに込める変化の意識

» 2008年04月18日 17時42分 公開
[ITmedia]

 NTTドコモは4月18日、企業ロゴを一新し、7月1日から新ロゴに切り替えると発表した。「お客さまとの絆(きずな)を深めます」などとする「新ドコモ宣言」も発表、新ロゴとともに新たなブランド戦略を展開する。純増数を競い合い、新規顧客を優先してきた従来の姿勢を改め、既存顧客を重視する成熟時代のマーケティングに舵を切る。

 15年間使ってきた現在の「ループロゴ」に代わる新ロゴでは、アルファベットの小文字で「docomo」と表記し、親しみやすさなどを込めた。特に決まっていなかったコーポレートカラーも、あたたかさや情熱を表す赤に設定し、ロゴに採用した。7月1日以降、ドコモショップの看板などを順次新ロゴに切り替えていく。

photo 新ロゴに採用した赤は、特色の「ドコモレッド」(C15%+M100%+Y80%、R204:G0:B51)

 「新ドコモ宣言」は、(1)ブランドを磨き直し、お客さまとの絆を深めます、(2)お客さまの声をしっかり受け止め、その期待を上回る会社に変わります──など4カ条。国内契約数の合計が1億を超えるなど、携帯電話市場の成熟に対応し、新規獲得に血道を上げてきた従来の姿勢を転換。番号ポータビリティ(MNP)で流出が続く現状もあり、5300万契約の既存顧客のリテンションと、長期的な関係の構築を重視するマーケティング戦略をとる。

 まず具体的に、FOMA端末を1年間利用した場合に電池パックを無料提供するなど、「プレミアクラブ」を強化。今秋以降、電波状況についてユーザーから連絡を受けた場合、48時間以内にユーザー宅を訪問して改善に努める取り組みを始めるなど、顧客対応にも力を入れていく。

 端末では、顧客のライフスタイルやニーズに応じた新たなラインアップを構築する。またユーザーごとに機能・サービスをカスタマイズした端末提供も検討する。今後の成長のドライバーとなるデータ通信の利用増加に向け、iMenuのリニューアルやパーソナライズド機能の向上、情報配信コンテンツのリッチ化、PCとの共有・連携サービスの発展──などを進めていく。

「MNPは大きなインパクトだった」

photo 新ブランドサイトでは、「手のひらに、明日をのせて。」という新スローガンを説明

 「ドコモのブランド力が落ちている。危機だと感じていた」──中村維夫社長は1年ほど前、自販機との連携サービスなどで提携関係にあった日本コカ・コーラ会長の魚谷雅彦氏にブランド刷新への支援を依頼。「強い情熱を感じて引き受けた」という魚谷氏には、「新規顧客獲得に過度に集中」しているドコモの姿は「市場環境の変化への対応に遅れている」と映った。

 中村社長はブランド刷新について、「MNPは大きなインパクトだった。新聞などに『独り負け』と書かれたが、実際その通りだった」と、06年秋スタートのMNPがきっかけになったと話した。ソフトバンクモバイルの低価格攻勢で顧客を奪われ、同社は07年度、11年ぶりに国内シェアが50%を割り込む事態に陥っている。

 市場が成熟化し、豪華なタレントを使ったテレビCMに多額の予算をつぎ込んでも、新規獲得が思うように進まなくなってきている。その一方、販売奨励金とマーケティング費用の原資となってきた既存顧客は、新規獲得に血道を上げる戦略からは置き去りにされてきた。

 「新規は0円、機種変更は3万円。既存のお客の不満はよく知っていた」と中村社長も認める。「信頼」「安心」といったキーワードでは今もトップブランドだが、料金が割高といったイメージも定着してしまった。「反撃してもいいですか?」──「ドコモ2.0」ではこう宣言してみせたが、実際にはMNP流出という形で既存顧客からの「反撃」にあったとも見える。

 魚谷氏には、「社員が過去の成功体験にとらわれていた」とも映った。社内の変革活動は「ONE docomo」と名付け、新ブランド戦略は社員への浸透を優先。1月から3カ月間かけ、社内向けに説明を繰り返してきたという。新戦略の対外発表を前に、iモードサービスの進化を率いてきた夏野剛氏の退社が報じられたのは象徴的でもある。

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