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「青少年ネット規制法、断固反対」――古川享氏、中村伊知哉氏など共同声明

» 2008年04月23日 10時05分 公開
[ITmedia]

 「法案は、あるべき施策からまったく逆方向を目指したもので、とうてい賛成することはできない」――元米Microsoft副社長の古川享氏や、慶応義塾大学教授の中村伊知哉氏など10人が呼びかけ人となり、自民党が今国会への提出を目指している、青少年に有害な内容のサイトの閲覧を規制する法案(青少年の健全な育成のためのインターネットの利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案)に反対する声明を、4月18日付けで公表した(関連記事:「青少年ネット規制法に反対します」――MIAUとWIDEプロジェクトなど共同声明「青少年ネット規制法」成立はほぼ確実 その背景と問題点 )。

 声明文は「think-filtering.com」名で発表されており、呼びかけ人は2人のほか、劇作家・演出家の平田オリザ氏、京都造形芸術大学教授の椿昇氏、東京大学先端科学技術センター教授の玉井克哉氏、慶応大大学院教授の岸博幸氏など。賛同人として、IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏や、弁護士の福井健策氏、絵本作家の寮美千子氏など28人が名を連ねている。

 声明文では冒頭で、「法案は、政府が恣意的な介入を通じて表現の自由を侵すものであるとともに、デジタル文化の萎縮とデジタル産業の縮小をもたらすものである。断固反対する」と述べ、「『有害情報からの青少年保護』という政策目標には全面的に賛同する」としながらも、以下の3つの問題点を指摘している。

(1)「違法」でない「有害」な情報という主観的であいまいな基準を政府が策定し、主務大臣が恣意的な行政命令権を持つことは、先進各国には類例がなく、利用者と事業者を萎縮させ、「表現の自由」を侵す。

(2)Webサイト管理者に対する有害情報削除を義務付けると、個人のブログに他人が有害情報を書き込んだような場合でさえ対応が強制される。国民の表現活動が制約を受け、デジタル文化を萎縮させ、ネットコンテンツなどデジタル産業を縮小させる。

(3)携帯電話会社に対するフィルタリングの義務化は、有害ではないサイトへのアクセスまでも制限される可能性があり、日本のモバイル産業とモバイル文化の衰退を招く。

 さらに「政府が過剰で誤った介入を行い、憲法が保障する国民の基本的権利を侵害することは許されず、そういった政策は、グローバルなネット社会で日本だけを孤立させ、技術革新を妨げ、競争力を損なう。フィルタリング運用に関する第三者機関設立の動きも無視したもの」と指摘。

 その上で「政府は、フィルタリングやサービスの技術革新を促すなど民間の取り組みを支援し、日本の産業が世界をリードするよう図るべき。法的措置を講じるなら、技術開発の促進や情報リテラシー教育などを充実させるための支援といった手段を考えるべきで、法案は、あるべき施策からまったく逆方向を目指したもので、とうてい賛成することはできない」としている。

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