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エプソン、ピエゾヘッド開発者の碓井氏が新社長に

» 2008年05月01日 09時02分 公開
[宮本真希,ITmedia]

 セイコーエプソンは4月30日、技術畑の碓井稔常務(53)が代表取締役社長に昇格する人事を発表した。6月25日の定時株主総会を経て正式決定する。花岡清二社長(60)は代表取締役会長に就任する。

画像 碓井稔新社長(左)と花岡清二新会長(右)

 碓井氏は、東京大学工学部卒業後、1979年に信州精器(現セイコーエプソン)に入社。07年10月に常務に就任した。同社のインクジェット技術に使われているマイクロピエゾヘッドの開発者で、研究開発本部長、生産技術開発本部長も兼任している。

 碓井氏は「独創の技術とものづくりを徹底的に強化していく」と意気込む。「これまでコンシューマー事業に偏りすぎていた。独自技術を応用展開できる領域はコンシューマー以外にさまざまある」とし、ビジネス・産業分野に積極的に事業を広げていく方針を掲げた。

 社長就任の打診を受けたのは1カ月半ほど前といい「青天の霹靂(へきれき)だった。もう少し研究開発本部長としてやらなきゃいけないと思っていたところだった」と話した。

 花岡社長は「技術を語らせたら碓井さんの右に出る者はいない」と評価。「新事業領域を育てるのが急務。次の世代を切り開く技術を育てていく」とし、技術に明るい碓井氏を後任に選んだ。

 花岡社長は05年に社長に就任し、プリンタなどをビジネス・産業分野に拡大する事業に注力してきた。「3年前はデバイス事業と完成品事業という両輪がどちらも変調をきたしていたが、現在では方向感がなんとか見えてきた」ため交代を決めたと説明した。

 ピエゾ方式は、電圧をかけると変形するピエゾ素子を使ってインクを射出する技術。これに対し、キヤノンなどが採用しているサーマル方式は、加熱でインクに生じた気泡によりインクを射出する。

営業益は14.4%増

 同社が4月30日発表した2008年3月期の連結決算は、営業利益が前期比14.4%増の575億円だった。

 売上高は4.8%減の1兆3478億円。複合機へのシフトが進むインクジェットで低価格機種の増加に影響を受けるなどし、プリンタ事業全体では若干の減収に。ディスプレイ事業は大幅な減収だったが、同事業を含む電子デバイス部門の営業損益は171億円の赤字と、前期から約90億円改善した。

 経常利益は28.9%増の632億円、純利益は190億円(前期は70億円の赤字)だった。

 今期の連結業績予想は、売上高が1兆3000億円(3.5%減)、営業利益が610億円(5.9%減)、経常利益は6300億円(0.4%減)、純利益は310億円(62.4%増)。

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