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» 2008年10月31日 19時50分 UPDATE

「お前らの作品は所詮コピーだ」――富野由悠季さん、プロ論を語る (3/5)

[岡田有花,ITmedia]

臭くなければ客は付かない

 デジタルやインターネットが決定的に有利なのは、マンツーマンの作業が可能だけれど、そのスタッフが目の前にいる必要がないという部分。それ以上の機能は基本的に認めたくないと思っているぐらいです。便利だから全部利用するのはいかがかと思うが。技術は全否定しているわけではないということも了解していただきたい。

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 その上でどう融合させていくかは、現在から10年、20年後の成功を目指すなら考えて下さい。ぼくは10年後には死んでます。だからもう努力する必要がないんです。が、みなさんがたは不幸にしてまだお若い。不幸にしてあと50年は生きたい。できたら男性も女性も、いい愛人が欲しいと思っているなら、獲得しに行かないといけないんです。

 問題なのは、獲得するためのそのための欲望をどう充足させるか。自分の欲望を素直に見つめないで、迂回路をとってきれいなもの、かわいいだけのものを触っていたらクリエイティブは完成しないんです。生身が匂わなければ、臭くなければ絶対に客は付かないんですよ。

 これだけ技術が発達したにも関わらず、ライブの演奏会や演劇が絶対にすたれないのは一体どういうことかということも思い出してほしい。デジタルワークの時代にそういうものをどう手に入れるのか、どう表現するかは、技術を手に入れたわれわれの永遠のテーマなんです。

初めて手に入れたワープロで、エロ本を書いた

 僕が初めてワープロを手に入れた25年前、最初にやった挑戦はエロ本を書くことなんです。キーボードで「アハン、ウフン、私やってしまいましたわ」って絶対書けないと思ってた。あれは手書きのものと思っていて、キーボードで書けるか本当に恐かった。1年ぐらい、おかあちゃんに隠れてひそかに練習してました。それでキーボードを覚えたんです。

 バットマンシリーズの映画「ダークナイト」のバイクは全部CGなんです。それを考えた時「あんなものをCGでやってる暇あるか」と思ってほしい。もっと上手に人肌を描くこともできるかもしれない、と。人肌を描く、で誤解しないで下さいよ。ヌードがきれいに描ければいいというものではないですよ。

 CGというのは絶対に、触れないわけです。触感も匂いもないわけです。映画というのは、映画的な機能が持っている重要なのは、「触感があるかもしれない、触ったかもしれない、ぞくっとするかもしれない」という体感を感じさせる物語を付け加えられるのが映像の機能なんです。

 そういう映画的な機能を、ただアクション映画、活劇映画ということだけで理解していないか。ハリウッドの大作だけを見て「あれがCGの仕事だよ」と思い過ぎていないか。映画ってそんなチャチなものかということも反問していただきたい。

 客が見たがってるのは何なんだろうかというとき、知った風なモブシーン(群衆が登場するシーン)も、爆発シーンも、人間が飛ばされるようなのも見飽きてるでしょ。見飽きてるのになんでやるの?

 それ以上のことを思いつくクリエイターがいないだけの話です。だからそれをやればいいだけです。だからといって死体ギンギンの映画がいいのか? それが生々しいということではないんですよ。物語ですから。映画ですから。デジタル画像で作る物語というのはどういうものか、改めて自分の中で反問していただきたい。

 そういう反問の中で、10年後か15年後ぐらいにヒットするタイトルなり物語なりを作るのがちょうどいいと思う。こつこつやってると10年ぐらいすぐ。こんな不景気だったら死ぬかもしれない。だが運不運はついて回ります。それは変わりませんから覚悟して下さい。それくらい過酷な職業をみなさん方が選んでしまったんです。

お前程度の技能や能力でメジャーになれると思うな

 チームワークやスタジオワークは決定的に重要です。こういう所に集まって仕事しようとしている人たちはほとんど我が強いんです。隣の人の言うことは絶対聞きたくないという人がほとんど。だからダメなんです。お前程度の技能や能力でメジャーになれると思うな、なんです。

 僕の場合はおもちゃ屋のスポンサー(バンダイ)がいて、安彦(良和)くんというキャラデザイナーがいて、大河原邦男というメカデザイナーがいて、その出会いを許してくれる制作会社というプロダクションがあったから。漫画家主宰の虫プロダクションのような所ならこの出会いはなかったでしょう。そういう基盤になってるものとの出会いが絶対必要です。

 宮崎駿は1人だったらオスカーなんか絶対取れませんよ。個人的に知っているから言えるんですが。彼は鈴木敏夫と組んだからオスカーが取れた。組んだ瞬間僕は「絶対半年後に別れる。こんな違うのにうまくいくわけがない」と思いました。知ってる人はみんなそう思ったんです。

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