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脳波で念力ゲーム――シリコンバレーの起業アイデア創造する人々(2/2 ページ)

» 2009年01月09日 21時50分 公開
[石井力重,ITmedia]
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ゲームのコツは集中力とリラックス

 早速ゲームをしてみる。小さな島にたつ主人公をキーボードで操作して、移動する。イルカがいる。海に帰してあげるには、主人公がおして海に入れてあげるしかない。

 そこで、意識を集中させる。プレイヤーがすうっと集中力を高めると、画面下のゲージが高まってきて、ゲームの中の主人公は念力を出して、イルカをはるか沖まで押してあげられる。念力なので、海に入ったイルカも押し続けられるのだ。

 島の別の場所には、大中小の3つのキューブがある。そこではプレイヤーが十分にリラックスすることで、ゲージが上がり、ゲーム中の主人公がキューブを空中に浮遊させることができる。キーとなる局面では、このなにも具体的な操作をせずに「集中する」「リラックスする」という行為だけでゲームをするわけだ。

 このゲームを筆者と、それからたまたま同行したカヤックの柳澤CEOらが体験した。筆者は集中力に自信があったが、柳澤さんには負けた。彼はNeuroSkyのシステムのエンジニアが驚くほどだった。

 柳澤さんに「集中」と「リラックス」のゲージを上げるコツを聞いた。

柳澤さんいわく

 「どうやってやったのかと言われるとよく分からないのですが、集中するときはその1点をみつめてそのことだけを考えます。リラックスのときは、腹式呼吸をして、水の中にいるように想像しました」

とのこと。なるほど、なるほど。これは参考に……できるような、できないような(苦笑)。そこで筆者の“念力初体験”を説明したい。

 ゲームの中で主人公が手をかざす。よし、じゃあ集中するぞ、と思って、でも、集中するってどういうことかな、と思いつつも、とりあえず、握りこぶしにぐっと力をいれてみる。するとゲージがすこし上がる。

 イルカを見つめて集中しようとすると無意識のうちに「動け」と思わず念じている自分に気が付く。集中が成功するとゲームの中で物体がズズズと動き、まるで本当に念力を使っているような不思議な気持ちになってくる。

 しかし、体に力を入れて“力む”ことと集中とは本質的に違うようで、力むだけではゲージを気持ちよく上げることはできない。リラックスも初めは難しかった。浮かべ、と躍起になるのではなく、すううっと、軽やかな自然な心持ちにしていく。するとリラックスして、ゲームの中で次第に物体が浮かぶようになった。

集中のゲージをあげるコツ

 ゲームの後半、筆者がつかんだコツは、こうであった。

 まず、動けと考えるのをやめること。動け、と強く考えていくだけでもある程度動く。しかしつい力んでしまう。そこでまず「動け!」と考えるのをやめることにした。

 次いで、周りに人がいても没頭できるような、好きで得意なことを思い出すことにした。具体的には、筆者が好きで得意なことであるアイデア出しを仮想的に行うことにした。発想カードをめくりながらアイデアを列挙するシーンを、思い描いてみた。

 さらに、その行為を頭の中で実際にグングン実行する。筆者は頭の中で、カードを次々とめくり実際にアイデア出しを行った。カードを頭の中で次々にめくる。うまく直感的な思考状態に入りはじめ、それにつれて周囲が静かになったように感じられた。たぶん、かなり集中している状態になったのだと思われる。その段階になると、ゲーム中の集中ゲージはぐんぐん上がった。

 集中が何となく分かってきたら、リラックスのゲージもコントロールできるようになってきた。まずつかんだコツは、必死にリラックスしようとするのをやめることだ。筆者は、このゲームをうまくクリアしてやろう、という気持ちを捨てた。

 遠い目をしてみるのも効果があった。画面の中の遠くの山を遠い目をして「ああ、あそこでハンモックでゆられたら気持ちいいだろうな」と考えたのである。さらに、リラックスしている自分を明確に思い描くといい。木漏れ日のそそぐ中で、ハンモックに体を預けている状態を想像してみた。ゆらゆら。ゆらゆら。そよやかな風がおでこを吹き抜けていく。そんなことを思い描いていたらゲージは次第に上がっていった。


 筆者は「これ、自分だったら欲しいだろうか」と自問してみた。答えは「YES」だ。というのも、自分の集中している状態をこれまで自分では知らなかったが、それを今回知ることができたからだ。その上、若干訓練的な使い方もできた。

 発想カードをめくっている時、周囲の音が静かになった気がした。これまでは、集中した時に起こる意識の変化に集中しているがゆえに気付けなかったのだ。このゲームを持っていたら、書斎で原稿を書いている時など、どうも波に乗らないなと思ったら、しばらくゲームをして「すうっと集中する」ことをやるかもしれない。

 こうした脳波で操作するゲーム、NeuroSkyによると2009年早々には実用化が決まっているとのこと。更に、ゲーム以外の分野でも、脳波を新たなインタフェースとして利用するアプリケーションの開発が進んでいるという。

著者紹介 石井力重(いしい・りきえ)

著者近影

 事業のアイデア創造支援や技術開発をサポートする事業化コーディネーター。仙台のベンチャー企業デュナミスが事務局を務める創造性育成ツール開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた。このプロジェクトで誕生した新商品が「ブレスター」である。みやぎものづくり大賞(2007)で優秀賞を受賞。社会人院生として、東北大の博士課程にも在籍、新事業創造マネジメントや創造工学を研究。Webサイトは「石井力重の活動報告」


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