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セカイカメラがどんなトンチでできているのか、中の人に話してもらった(2/2 ページ)

» 2009年02月19日 13時40分 公開
[松尾公也,ITmedia]
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 iPhone SDKの制限の1つであった、カメラでのライブビューについてもセカイカメラはブレイクスルーをやり遂げていた。正規のiPhoneアプリの中で、カメラでのライブ映像と別の画像をリアルタイムでオーバーレイ表示させたものはごく最近までなかった。その1つが、赤松氏が昨年末に個人名義でリリースしたDecorRealityというカメラアプリだ。新しいことや複雑なこと、APIの制限に抵触しそうなものをアプリの中でやろうとしたときにAppleがそれを通すかどうかは、その時点での彼らの判断に依存する。赤松氏もこれが観測気球であることを認めている。観測気球はこれ以外にもあったようだ。

 iPhoneアプリのプログラミングでもこのようにさまざまな実験をしながら徐々にセカイカメラに近づけていったのだ。その結果、セカイカメラのβ版は見事にエアタグがライブビューにオーバーレイされていて、エアタグは半透明処理までされている。エアタグが動いても、背後の画面描画が処理落ちしている感じはしない。iPhoneアプリの限界を知る人がこのアプリを見たら驚くに違いない。

 TechCrunch 50のときにはなかった新機能も追加されていく。今回はテキストと写真のみエアタグ可能になっていたが、アプリケーションのメニューには多くのアイコンが並んでいた。それらはこれから追加されるそうだ。プレゼン時にも、「こういう機能があったら」という意見があると、井口氏が「それ、採用します」とノリのいいところを見せていた。セカイカメラはさらに多機能なものになりそうだ。

画像 井口氏

 エアシャウト、エアメール、エアポケットといった機能は、今回盛り込むことができなかった新アイデアだ。エアタグはその場所にひも付けされているスタティックなものだが、ネットを介してほかのユーザーとコミュニケートするためのさまざまな仕掛けが用意される予定だ。

 さらにTwitterへの対応も視野に入っている。「既存のネットサービスはたくさんありますが、それを無視して新たなものを作ろうとは思わない。むしろそれをうまく使うことで、セカイカメラをフロントエンドにする。デスクトップで行われていたことを街の中に持ち出す。逆に、街の中で蓄えられている情報をデスクトップの世界にフィードバックすることもできる」と赤松氏は語る。

 フロントエンドとしてのセカイカメラが普及すれば、広告関連は別にして、エアタグの情報が統制されずにあふれてくることになる。エアフィルターという、フィルタリングサービスも提供する予定だ。ただ、アナーキーな状態が作れることを否定するわけではない。「危険情報とかおかしな情報とかばかり入ってくる裏セカイカメラとかでてくると面白いと思うんですけどね」と赤松氏は笑う。クリーンな状態のものを作りたいというわけではないのだ。

 「ぼく自身はエアタグがどんどん増えていって真っ黒になってわけが分からなくなることが理想だと思ってるんです。そうなって初めてフィルターの意味が出てくる」という赤松氏。

 このエアタグだが、簡単に増やしていく方法がないわけではない。Googleにバイアウトされればいいのだ。Google Maps、Googleストリートビュー、Google Earth。これらにエアタグを貼り付ける仕組みはGoogleがまさに望んでいるだろうし、頓知・もその話を聞いたことがあるという。しかし、彼らはその道を選ばない。ソフトバンクテレコムやクウジットとの提携、APIの公開、Twitter対応といった新戦略を次々と打ち出しており、専用デバイスの話も複数舞い込んでいるという。しかし、巨大ネット企業の一部になることは考えていないのだ。

 「買収されたらその先が見えないじゃないですか」と井口氏は言う。同氏が「クリッカブル・ワールド」と表現するセカイカメラの先にあるもの……。彼らとともにわれわれは見ることができるだろうか。

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