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スク・エニ、Eidos買収完了 「トゥームレイダー」ブランド回復も課題

» 2009年04月23日 07時00分 公開
[ITmedia]
photo 和田社長

 スクウェア・エニックスは4月22日、「トゥームレイダー」シリーズなどで知られる英ゲームソフト会社・Eidosの買収を完了し、完全子会社化したと発表した。グローバル展開を課題に掲げてきた和田洋一社長は「完成形ではないが、グループの骨格ができた。今後はこれに肉付けしていくことが課題だ」と語り、Eidosコンテンツの多メディア化やネット展開などで相乗効果を見込む。

 Eidos買収は英会社法に基づくスキームオブアレンジメントで実施。英裁判所の認可を受けて全株式買い付けの効力が発生し、買収が完了した。全株式の買い付け額は約8430万ポンド(約121億円)。

 トゥームレイダー(Tomb Raider)や「Hitman」などで知られるEidosだが、売り上げ減少と多額のリストラ費用計上が響き、2008年6月期は税引き前損益が1億3600万ポンドの赤字に陥るなど、経営再建が急務だった。和田社長は「規模が中途半端だったにもかかわらず、他社から仕入れたIPを小売りに安く卸すなど、セールスのためにかなり無理をしていた」と見る。こうした部分を改革すれば「十分黒字を確保できると思う」という。

 Eidosが欧米パブリッシャーの中でも、オリジナル大型タイトルを開発する能力が高い点も評価した。トゥームレイダーはシリーズ累計3000万本以上、Hitmanは累計800万本以上など、「ファイナルファンタジー」(8500万本)や「ドラゴンクエスト」(4700万本)を持つスク・エニグループに大型タイトルがさらに加わることになる。アクションに強いEidosと技術面などで補完できるのも魅力。単なる提携では技術はブラックボックス化されがちだが、100%保有によるグループ化で「隅々まで共有できる」と期待する。

 ただ、トゥームレイダーシリーズの最新作「Underworld」(2008年)は販売本数でダブルミリオンを達成してはいるものの、1996〜98年に発売した初期3作が各700万〜600万本以上を売り上げたのに比べると、落ち込みは顕著だ。

 和田社長は「グローバルに販売するならある程度金をかける必要があり、今後は1タイトルの開発費が10億〜20億円くらいになっていくだろうが、200万本くらいは売れる必要がある」と見ており、トゥームレイダーはこれをクリアできるタイトルとして評価する。一方で「かなりブランドがいたんでいる」とも認識。「Eidosも重要なテーマだと考えており、どう回復するか考えて着手している」という。

統合で非常に有効なネットビジネスができる

 「CEOとしては、ちょっとほっとしている」──社長就任以来、グローバル化を掲げてきた和田社長は記者会見で「枠組みを作るのに大変な労力が必要だった」と振り返りながら、「当面の骨組みはできた」と繰り返した。日米欧の3極にビジネス基盤を築けた上、Eidosが欧米に持つ開発拠点を手に入れたことで「優秀なクリエイターが集まっているところにウインドウが開いた。これが非常に大きい」と、グローバルパブリッシャーとしての認知向上に期待をかける。

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 今後、コンテンツを多様なメディアや端末にマルチ展開していく同社の戦略のもと、多メディア展開が進んでいないEidosコンテンツの収益化を図っていく。また、国内未発売のEidosタイトルを2009年度中にも販売したい考えだ。

 将来戦略のカギとして、「収益が一番眠っている分野」と見る「ネットワーク」も挙げる。ファイナルファンタジーXI」や、急成長中の「ニコッとタウン」など、スク・エニグループが手がけるコミュニティーなどは「部品として散っている」状態だが、「今年には戦略をとりまとめて展開する」という。Eidosもネット戦略の重要な要素として「両社の統合で非常に有効なネットビジネスができる。収益機会は大きい」と和田社長は期待している。

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