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福島第1原発ライブカメラに写り込んだ人物? ネットで名乗り出る 指さしの「意図」を説明

» 2011年09月08日 15時21分 公開
[ITmedia]
photo 写り込んだ状況を説明するイラスト

 東京電力福島第1原子力発電所のネットライブカメラに8月下旬、防護服姿でカメラに向かって指をさす人が写り込んだが、その本人だという男性がネットに現れた。男性は同原発で働く下請け作業員で、下請け作業員の雇用状況の改善を訴える意図があったことなどを、同原発での作業に関連する施設内とみられる写真などを交えて説明している。

 防護服姿の人物がライブカメラに写り込んだのは8月28日午前10時10分過ぎ。右手で上空を指し、ゆっくり回してから、カメラを指さした。左手に持ったメモか携帯電話のようなものを見ながら呼びかけるようなしぐさを見せた。

 東京電力は外部の人物が侵入した可能性については「セキュリティー状況からしてあり得ない」としており、同社や協力会社の関係者の可能性が高いと指摘されていた。

 9月8日午後になって、本人を名乗る人物が2ちゃんねるに現れ、WebサイトのURLを書き込んだ。Webサイトでは、福島第1原発での作業に関連する施設内を写したとみられる多数の写真とともに、カメラに写り込んだ意図が述べられている。英語版も公開されている。

 Webページでは男性の顔の一部などを掲載。「東京電力さんの方針を確認せずに私が完全に身元を明かすと、制裁を加える口実を作るだけになってしまう」として名前や所属は明かしていない。

 この男性は「カメラの存在に関しては会社に面接を申し込む以前から知っており、 その位置などはインターネットや免震棟内の掲示物の情報で概ね把握しておりました」という。「当日は線量計を持ちマスクと防護服を着用した上で、スマートフォンでライブカメラの配信を見ながら接近し、当該行為を起こしました」と当日の様子をイラストも交えて説明している。

 男性がカメラに写り込んだのは、東京電力と政府に対し「下請け会社への業務委託、全ての作業員の雇用状況の把握について現状の具体的な是正」を求めてのことだという。

 原発労働者の中にはアウトローな領域とされる方々により手配された、止むに止まれぬ事情の方々が少なからずおられ、不当あるいは厳しい雇用条件の元、それを元請けに偽装しながら働いておられるという問題があります。

 ハローワークに求人を出している会社でさえ、労働者の本当の契約先の実在を元請け会社が知らないということもあります。

過度な多重下請けは低賃金や保険未加入、 あるいは契約書を書いてもらえないといった待遇の問題として現れることは報道されるとおりだと思います。

photo 作業員証などの写真も

 男性はライブカメラに向かって指さした意図について、「観察するという方向→に←指差すという反対の方向を向けたいと思いました。言葉を『下層労働者』から『英雄』『作業員さん』に替えただけで、作業員の方々を"私たちとは違う特別な対象"にしてる点で変わらないよね、ということを指摘したいと思いました」と、モニターの向こう側にいる人々への問題提起だったと説明する。「「観ることと差別、差別と原発が切り離せない関係にあると考えたからです」という。

 一方でスマートフォンを持って自分を指さしたのは「短期間原発で働くという私の行動はスラックティビスト的であるとして常に監視して批判し続けなければならないと考えていました」と、自分も「観る側」の1人であることを逃れられないという自己批判を忘れないためだったと説明している。

 写り込んだ結果、「テレビ番組でホラー映画のようなBGMがついたり、ネット上にここまで非現実的な捉え方の意見が横行するとは予想外でした」。現場の情報が国民にあまりにも伝わっていないことがその一因だとして、マスメディアに対し作業員を取材してほしいと訴える。

 メディアの方々には免震棟で作業員の方々を取材する番組を作って欲しいと思います。東京電力さんも協力して欲しいと思います。

彼らが英雄であるならばモザイクは必要ないでしょう。

 そういうことが当たり前になれば、「指差し作業員」に対しては大スクープやオカルティックなハプニングを期待するコメントではなく、いち社会人として会社や多くの方に迷惑をかけることについての当たり前の批判と罵倒のコメントがもっと溢れるでしょう。

そうした健全な日常が戻ることを願います。

photo 「現場には全国から届けられた子供に書かせた寄せ書きの応援メッセージが、色紙や旗が、FAXやメールのコピーが、千羽鶴が、たくさん飾られています。そうしたたくさんの声が『残酷な自己犠牲を強いる声』になってしまわぬよう、是非とも考えて欲しいところです」

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