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» 2011年12月28日 17時14分 UPDATE

震災の記憶、未来へいかにつなぐか──デジタルアーカイブの挑戦 (2/3)

[榊原有希,ITmedia]

避けて通れない著作権問題

 しかし、デジタルアーカイブの利活用は、著作権問題と背中合わせでもある。1995年に発生した阪神・淡路大震災に関する資料を収集している神戸大学附属図書館の「震災文庫」。日ごろの防災教育を始め、震災が起こった際には有益な情報を提供し、国内外から高い評価を得ているが、デジタルアーカイブの公開にあたっては著作権許諾処理に追われてきた。

photo 震災文庫でデジタル化した資料のリスト

 「震災文庫では、パンフレットやチラシ、ポスターなど紙1枚の資料も収集してきましたが、インフルエンザの予防接種やお風呂の案内など、避難所で配られて発行者の分からないものもある。発行者を推測して住所を調べ、著作権の許諾を得る文書を送りました。大変な作業です」と神戸大附属図書館情報管理課長、稲葉洋子さんは話す。

 例えば、震災で亡くなった方への鎮魂の意を込めて1995年に始まった「神戸ルミナリエ」。そのポスターやチラシは震災資料にあたるが、公開するにはルミナリエのデザイナーの許諾まで必要となる。「ルミナリエは一般に公開されていますが、著作権法では権利者とコンタクトを取って処理しなければなりません。復興支援コンサートのポスターに顔写真が掲載されていれば、その許可も必要。サイトで公開するということは、並大抵ではありません」

 許諾が得られなかった場合は著作権法の公衆送信権侵害にあたるため、デジタルアーカイブでの公開はできない。震災文庫では現在、4万8000件の資料を所蔵しているが、ネットで公開されているのは1割だ。

 こうした著作権問題に対し、ヤフーの「写真保存プロジェクト」では、独自のガイドラインを設けた。あらかじめ、「非営利の復興や学術目的に限り、第三者が利用してよい」といった条件を投稿者に許諾してもらい、デジタルアーカイブの利活用を促している。

 ヤフーの高田さんは、「わたしたちは広範囲に呼びかけできるネット企業という立ち位置で、最初の保存先として存在しているイメージ。ここに蓄積されたものを復興支援や防災教育に使ってもらうことが大事なので、独自の規約を作って投稿者の方に著作者人格権を行使しないことをお願いしました」。これまで「写真保存プロジェクト」の写真は、海外での復興支援写真展や海上保安本部の防災講習会で活用されるなど、活発に2次利用が行われているという。

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