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» 2012年08月07日 11時00分 UPDATE

ネットが教えてくれた“書店員の力” ジュンク堂が取り組む、ネット×書店の姿 (1/2)

書店員手作りの閉店フェアがネットで話題になり、ジュンク堂新宿店の売り上げが過去最高を更新した。書店員の力に気づいたジュンク堂は、ネット書店にもリアル店舗の強みを組み込んでいく。

[岡田有花,ITmedia]

 3月末、「ジュンク堂書店 新宿店」の閉店に伴って行われた最後のフェアで、同店の売り上げが過去最高を更新した。書店員がそれぞれ、おすすめの1冊を手書きPOPで紹介したフェア。思いのこもった“魂のPOP”が顧客の心を打ち、「書店員の最後の本気」とネットで話題に。多くの客を引き寄せた。

画像 HON代表取締役の工藤氏。丸善&ジュンク堂書店 渋谷店のフェア棚前で

 これがきっかけとなってジュンク堂は、ネットと書店の融合を加速。閉店フェア対象書籍と手書きPOPのネット掲載を手始めに、リアル店舗のフェアをネットに再現できるインフラを整備した。ネットストアで品切れの書籍を店頭在庫から取り寄せて発送するサービスなど、店舗を持つからこそできる新サービスも矢継ぎ早に投入している

 「お店でできることが、ネットでできない理由がない」と工藤淳也氏(22)は言う。ジュンク堂創業者・工藤恭孝氏の長男で、グループで書籍のネット通販事業を担うHON、洋書取次の洋販新社の代表取締役と、ジュンク堂プレスセンター店(東京都千代田区)店長を兼任。この春大学を卒業したばかりだが、大学1年から店長、3年から両社の代表を務め、書店の現場感を持ちながらネットストアを統括している。

「近すぎて分からなかった」書店員の情報価値

 新宿店閉店フェアのネットでの反響は「アクシデントだった」と振り返る。「そもそも、フェアに反響があるというイメージを持っていなかった。こんなに話題になるもんだと驚いたのが、正直な感想です」

 ジュンク堂は専門書に強く、顧客もその道の専門家が多い。書店員は、顧客の眼鏡にかなうよう担当分野を必死で学び、時には客に教えられながら品ぞろえしていく。「自信満々に並べているというより、不安を抱えているのが本音」。POPやフェアも控えめで、図書館のように整然とした印象の店舗だ。

 それだけに、新宿店の閉店フェアは異例だった。各売り場を担当する書店員が、20近いフェアを企画。感情のこもった手書きPOPを書き、手作りのデコレーションで台を彩り、熱い思いが店内を包んだ。店を訪れた顧客は、いつもと違う熱量を感じ取ったのだろう。何人かがネットにフェアの様子や感想、写真を投稿。それをネットユーザーが「NAVERまとめ」でまとめ、「閉店する「ジュンク堂」書店員の最後の本気」という見出でアップ。これが呼び水となり、ネットで話題が沸騰した。


画像 ジュンク堂書店 新宿店の閉店フェアの様子
画像 NAVERまとめの「閉店する『ジュンク堂』書店員の最後の本気」は68万ページビューを超え、ツイート数も8000近い

 「書店員が発信する情報に、こんなにインパクトがあるとは。近すぎて分からなかった」と工藤氏は振り返る。本のプロである書店員による目利きは、ネット書店にはない、店舗ならではの魅力だ。「SNSで知人がすすめる本に信用力があるのは分かるが、書店員の情報にも信用力を感じてもらえるんだなと」

 HONは、フェアの反響を後追いする形でネットでの取り組みを加速。「新宿店のフェアに行きたかったが行けなかった」という声にこたえ、フェアの選書とPOPを、ネット店舗「丸善&ジュンク堂ネットストアHON」に再現できるインフラを整備し、店舗に行かずしてフェアを体験できるようにした。新宿店のフェアの振り返りを「ニコニコ生放送」で放送したほか、「ニコニコ動画」には公式チャンネルを設置。出版イベントの動画などを配信するなど、リアル店舗の資産を、ネットでいかす取り組みを進めている。

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