初音ミク5周年(2)
「世界のファンとムーブメントを作りたい」――初音ミクのネクストステージ(1/2 ページ)
初音ミクの人気は国内にとどまらない。アジアや北米、欧州など世界各国で人気が拡大。動画サイトや現地のファンによるイベントなどで、じわじわと人気が広がっている。開発元のクリプトン・フューチャー・メディアは、海外のファン活動をサポートしながら、日本発の創作文化を世界に広げようと挑む。
海外のファンはいつの間にか増えていた
「海外事業は『さあやるぞ!』という感じで始めたのではない」と、同社の伊藤博之社長は言う。YouTubeに投稿されたミク曲や、ライブ「ミクの日感謝祭」の映像などを通じ、人気がじわじわ広がっていったようだ。世界のiTunesやAmazon MP3に楽曲配信できる同社の独自レーベル「KARENT」の売り上げは半分が海外から。中国向けに販売したミクのCDがAmazonチャイナで売り上げ1位になったこともある。海外ファンも国内と同様、多くが10代の若い女性。2011年7月に米国ロサンゼルスで開いた初の海外ライブは、米国ファンからの要望に応えるかたちで実現したという。
せっかくファンがいるのだから、海外でも“みんなで作る”ムーブメントを盛り上げられないか。同社は模索を始めている。昨年から、海外ファン向けサイトの運営を始めたほか、グローバルなSNSを利用してミク関連情報を発信。「ソーシャルメディアやCGMで生まれたコンテンツが増幅してクリエイターとファンが盛り上がり、結果として何らかのかたちでマネタイズできるようなサイクルを、海外でも実現できれば面白い」(伊藤社長)
海外ファンとサポートしあえる関係に
昨年7月、「Mikubook.com」というサイトを始めた。投稿サイト「ピアプロ」で公開されている人気イラストや、YouTubeのボカロ曲、Amazon.co.jpのボカロ商品などに英語タイトルを付け、Pinterestのようなユーザーインタフェースでまとめて見ることができる。各コンテンツで「FAVE」(お気に入り)をクリックすると傾向を学習し、似たコンテンツをレコメンドする機能を備え、日本のサイトからボカロコンテンツを探し出せない海外の人でも、多様なコンテンツに出会えるようになっている。開始から1年間あまりで、累計約130万以上のFAVEが付いた。
初音ミクの公式Facebookページも2010年3月に開設。英語で運営している。「KARENT」の新譜情報や海外イベントの情報、海外で販売するグッズの情報などを配信している。ページへの「いいね!」数は60万以上に上り、1投稿あたり500~4000の「いいね!」と、数十から数百のコメントが付く。中国版Twitter「Sina Weibo」にも、最新情報を中国語でつぶやくミクアカウントを設置。10万以上のユーザーにフォローされている。
Mikubook.comやソーシャルメディアをハブに同社は、ファンとの相互作用を生み出そうとしている。例えば、海外ユーザーから「ファンイベントをやりたい」と連絡を受けると、ミクの公式Facebookページでイベントを告知するとともに、Mikubook.comのURLが記された特製ミクステッカーを用意して主催者に送る。同社がFacebookを通じてイベントの集客を手伝う代わりに、ファンにはMikubook.comの宣伝をしてもらい、お互いに盛りあげようという試みだ。
IDを付与したミクステッカーをイベントで配ってもらい、Mikubookサイト上でIDを登録すると、イベントに行ったことを証明するオンラインスタンプがもらえるなど、リアルとネットを連携させることも検討。「今後どうなるか分からないが、今できることは、ファンとサポートし合える関係にして、盛り上げること。ビジネスのアイデアは後で考える」(伊藤社長)
「海外で、日本のコンテンツがあまりにも注目されていない」――仕事でひんぱんに海外出る伊藤社長には、そんな実感がある。政府が主導する「クールジャパン」政策に沿い、ミク海外進出の話が寄せられることもあるが、「クールジャパンでビジネスになっているところはないのでは」(伊藤社長)。海外で注目されていなかったり、すでにピークを過ぎたコンテンツを「海外で人気」とあおるような偽物のクールジャパンにはうんざりしている。「VOCALOIDやミクで同じ道をたどりたくない」からこそ、独自のやり方を模索。「単に初音ミクを広げていくだけでなく、ミクへのアテンションの先に、日本の製品や文化とつなげていけないか考えている」(伊藤社長)
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