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» 2012年10月01日 21時44分 UPDATE

買収を急がせた「LTE」「テザリング」「iPhone 5」 ソフトバンク、イー・アクセス買収の狙い

「経営統合を提案しようと腹をくくったのは『テザリングやりましょう』と言った、その瞬間だった」──ソフトバンクは2.1GHz帯と1.7GHz帯の「LTEのダブルエンジン」でドコモ、KDDIへの対抗を強化する。

[ITmedia]
photo 統合を発表する孫社長(左)と千本会長

 「経営統合を提案しようと腹をくくったのは『テザリングやりましょう』と言った、その瞬間だった」──イー・アクセスの完全子会社化を発表したソフトバンクの孫正義社長は、大型買収が十数日という電撃的スピードで進んだことを示唆した。イー・アクセスが持つ1.7GHz帯のLTEネットワークは、先月発売したばかりのiPhone 5でも利用でき、自前の2.1GHz帯サービスと合わせた「LTEのダブルエンジン」でNTTドコモ、KDDIへの対抗をさらに強化する計画だ。

 買収は株式交換で行う。イー・アクセス株式を1株当たり5万2000円と評価し、ソフトバンク株式(1株当たり3108円)16.74株を割り当てる。イー・アクセスは年内にもソフトバンクの完全子会社になる見通し。イー・アクセスの東証1部上場は2月25日付けで廃止となる予定。

photo 買収額は妥当だと説明する

 直近のイー・アクセス株価は1万4000円〜1万5000円。今回の評価額から3倍以上となり、取得額は1802億円に上る。孫社長は、イー・アクセスが持つ基地局設備や420万のモバイル契約に加え、LTE強化による顧客獲得などシナジー効果だけで3600億円を見込めるとして、買収額は妥当だと説明している。

 ソフトバンクモバイルとイー・アクセスは今後、携帯ネットワークを相互に活用。ソフトバンクモバイルはイー・アクセスに対し900MHz帯/2.1GHz帯ネットワークを提供し、イー・アクセスは1.7GHz帯のLTEネットワークを提供。ソフトバンクモバイルは2.1GHz帯と1.7GHz帯の両方でLTEを展開できるようになる。基地局ロケーションやバックボーンの共用なども進める。「イー・モバイル」ブランドは存続し、販売でも相互協力する。

 ネットワークにめどが付いたとして、来年1月15日に予定していたiPhone 5でのテザリングサービス開始を1カ月前倒しし、12月15日にスタート。またiPhone 5のパケット定額(月額5460円)では月間1.2Gバイト超の場合は速度制限をかける場合があるとしていたが、この制限を取りやめ、1Gバイト/3日間超過時に速度制限をかける場合がある、と他社と同等の条件にする。

 iPhone 5は1.7GHz帯のLTEに対応しているが、LTEに接続した状態で音声通信を3Gで行う「CS Fallback」の実装や、両社のネットワーク設計のインテグレーション、iPhoneにネットワークを認識させるためのファイルをAppleを通じて配布するなどの作業があり、利用できるのは「おそらく来春になるのでは」(孫社長)という。

「iPhone 5はそれだけ大きい」

 「カギは1.7GHz帯だ」「ソフトバンクが強烈なラブコールをしたのには『テザリング』というキーワードがあった」「iPhone 5が大きな影響与えたのかといえば、イエス」──都内で1日夕に開かれた記者会見で、孫社長は買収の理由についてこう説明した。

 「前々から深い経営の関係になりたいと思っていた」が、経営統合の提案を決断したのは「テザリングやりましょう」と言った9月19日のことだったという。「その日にその場で、イー・アクセスと経営統合して、構造的にテザリングを受けてもなりたつネットワークを作らなければいけないと考えた」。それだけiPhone 5は大きいのかと孫社長は記者に問われ、「はい」と答えた。

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 iPhone 5とLTEにここまで猛スピードでのめり込むほど、ソフトバンクは「LTEが一気に大きく花咲く、そのタイミング」にチャンスを見ている。「世界のLTE標準バンドになっている1.7GHz帯の意味は、LTE以前と以後では全然価値が違う。基地局の数が競合する会社に比べ、数も多いが電波の受信も良くなる。LTEのサービスエリアが一気に広がる」。特にKDDIとiPhone 5をめぐって競争が激化する中、「iPhone 5なら一切ハードを変えずに両方の電波を受けることができる」ことは、2.1GHzのみのKDDIへの対抗上、意味は大きい。

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 LTE基地局は来年3月時点で、ソフトバンクの2.1GHz帯の2万局に加え、イー・アクセスが展開する1.7GHz帯の1万局を合わせ、3万局に拡大する計画だ。「業務提携はこれまでもやってるいるが、より深いネットワーク統合をしていかないとユーザーに本当に快適なデータ通信提供できず、企業の根っこまで入らないと難しい。経営統合が最もお客にいいサービス提供できると判断した」と説明する。

photo ソフトバンク(500万超のウィルコムの契約者数含む)とイー・アクセスの統合で、移動体通信サービスの契約者数ではKDDIを抜いて2位になったと説明する

「別のところからも提案あったが」──千本氏

 ソフトバンクとイー・アクセスはデータ通信サービスのMVNOのほか、高速無線通信(WiMAX)の免許獲得レースではタッグを組んでKDDI連合やドコモ連合と争うなど、イー・アクセスの千本倖生会長は「一番大切なお客様だった」と振り返る。

 「最近になって孫社長から大変強い熱意のある提案をしていただいた。別のところからも提案があったが、ソフトバンクはゼロからリスクをとって挑戦していくという企業のDNAが似ている。われわれが持つ1.7GHzのLTEネットワークとiPhone5、テザリングが合致したら、われわれが自ら自分の力で成長していくよりははるかに高い価値生み出すことができるのではないかという結論になった」。

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