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「他社には絶対追いつかれない」「ようやくメディア企業になった」──「Amebaスマホ」、藤田社長の狙い(1/2 ページ)

» 2012年12月26日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo Amebaスマホ

 サイバーエージェントのスマートフォン向けサービス「Amebaスマホ」が成長している。大規模なテレビCMや交通広告などを展開し始めた11月以降、1日4万人以上のペースで会員数が急増。日別のユニークブラウザ数も1100万を超えているという。

 Amebaスマホは、多数のコミュニティーサービスやソーシャルゲームを共通ID「Ameba ID」で利用できるサービス。スマートフォンのWebブラウザやiOS/Androidアプリ経由で利用でき、12月現在で23のコミュニティーサービスと66のソーシャルゲームを展開している。

 提供中のサービスは全て同社による内製だ。ブログサービス「アメーバブログ」からスタートしたAmebaだが、現在ではPC向けサービスの新規開発を全てストップ。必要最低限の保守と運用だけにとどめ、社内のエンジニアのほとんどをAmebaスマホの開発・運営に割り当てているという。

 「GREE」や「Mobage」などの先行者がひしめくスマートフォンサービス市場で、後発とも言えるAmebaスマホはどのようにサービスを拡大していくのか。サイバーエージェントの藤田晋社長に聞いた。

30億円の大規模プロモーションを展開、成果は「合格点」

――11月からAmebaスマホの広告費に約30億円を投入し、テレビCMや交通広告など大規模なプロモーションを展開している。Amebaスマホ自体がリニューアルしたのは今年の夏だが、このタイミングで大々的な露出に踏み切ったのはなぜか。

photo 藤田社長

藤田社長 まず1つ目は、スマートフォン向けサービスがマスプロモーションに耐え得るタイミングを待っていました。ユーザーへのスマートフォン普及率が、テレビCMをやってもロスが少ない3〜4割を少なくとも超えている状態に達したのが1つの理由です。

 もう1つは、ネットサービスは品質が伴えばテレビCMをすればするほど伸びますが、逆につまらないとCMを見て来てくれたユーザーが初回で帰ってしまいます。そこで、サービスを初めて触ったユーザーの継続率(翌日以降も使う割合)が40%以上という目標を決め、それを超えると分かったタイミングで大規模プロモーションに踏み切りました。

――広告費の内訳と、実際に得られた成果は。

photo テレビCMでは、サービス開発者を放送作家の鈴木おさむさんがインタビューする「顔が見えるCM」を展開

藤田社長 テレビCMが最も多く、次にネット広告、交通広告という順番です。テレビCMはスマートフォンの普及率を考慮し、東京、大阪、福岡などの都心部を中心に流しています。

 広告の成果は、われわれの中では既に合格点に達していると考えています。テレビCMのスタート後、新規会員が1日当たり4万人ずつ増えていますし、1日当たりのユニークブラウザ数も1100万に達しました。来年3月末までに月間10億円の課金売り上げを目指す予定でしたが、この目標も前倒しで達成できそうです。

スマホサービスに全力投資

――今年は提供予定のサービスを一気に数十個告知するなど、スマートフォン向けのサービス開発を加速させている。社内の体制をどの程度、スマートフォンサービスの開発に向けているのか。

藤田社長 PC向けサービスを運営していてiモードなどのモバイルインターネットが登場した際にも経験しましたが、既存のサービスがあると、どうしても中途半端にしか新しいものに着手できません。今でいえばPC向けサービスとスマートフォン向けサービスを両方バランスを取りながらやっていっても、せいぜい現状維持になるだけです。

 当社はスマートフォンの登場を通じ、これまでとは違う爆発的な飛躍を遂げたいと思っているので、今はスマートフォン向けサービスの開発や運営に極端なほど体重をかけています。わたし自身も社長業をあえておろそかにし、仕事の95%をスマートフォンサービスのプロデュース業にあてている。全サービスのアイデア出しから開発、運用まで全てを見ています。

 Ameba全体でも、PC向けサービスの開発は全てストップし、保守と運用程度にとどめています。フィーチャーフォン(従来型携帯電話)については全く見なくなりました。そうして最低限残す以外の人員と今年入社したエンジニアは全員、スマートフォン向けサービスの開発と運営にあてています。

――Amebaスマホのサービスは、社内に88の開発ラインを敷いて開発しているというが、サービスの開発や運営に当たって共通のルールはあるのか。

藤田社長 まず、ゼロから新しく作るサービスは6カ月以内、既存のサービスの枠組みを利用して展開するサービスは4カ月以内にリリースしないといけないというルールで開発しています。

photo K点チェック会議の様子

 開発の進ちょくは毎週のように見ていますが、リリース直前には幹部を集めて「K点チェック会議」というものを行います。ここでサービスの品質がある一定のレベルを超えていると判断されればリリース可能になりますが、下回るとリリースを延期して再び開発することになります。

 チェックを通過するようなサービスであれば、最初にユーザーがある程度集まると考えられるので、あとは運用しながら成長させることができます。リリース後も月に2回開発者向けの合宿を義務付け、2週間集中的に運用してから“打開”と“改善”を図るというサイクルを繰り返しています。

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