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目指すは「俺たちのマイクロソフト」 冬コミ初出展にかける“サブカル戦略”(1/2 ページ)

» 2012年12月27日 14時41分 公開
[本宮学,ITmedia]
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 日本マイクロソフトが、“冬コミ”こと「コミックマーケット 83」(12月29〜31日、東京ビッグサイト)に企業出展する。同社が展開する萌えキャラ「クラウディア・窓辺」などの限定グッズのほか、アニメキャラクターとコラボレーションしたカスタムPCなどを販売。コミックマーケット参加者に対するイメージ向上を目指す。

 ブースで販売するのは、オリジナルデザインのクリアファイルや絵馬のほか、センサーデバイス「Kinect for Windows」の“クラウディア3Dモデル”、漫画制作ソフト「コミPo!」の特別版(クラウディア素材付き)、DSP版Windows 8 Pro(64ビット)など。さらにテレビアニメ「新世界より」をモチーフとしたWindows 8搭載Ultrabook(マウスコンピューター製)なども販売する予定だ。

photophotophoto 左から「Kinect for Windowsセット」(2万円)、「DSP版Windows 8 Proセット」(1万5000円)、「コミPo!セット」(1万円)

 「思いつきの企画ではない」――こう話すのは、日本マイクロソフトの砂金信一郎さん。同社は冬コミから導入された「コミケWebカタログ」の基盤にクラウドサービス「Windows Azure Platform」が採用されたことをきっかけに、半年以上前からコミケ出展の準備を進めてきたという。プロジェクトを取りまとめてきた砂金さんに、取り組みの背景と狙いを聞いた。

「俺たちのマイクロソフト」を目指して

――コミケ初出展の狙いは何でしょうか。

砂金さん 日本マイクロソフトとして初のコミケ出展ですが、実はかなり真剣に取り組んでいます。今回は「コミケWebカタログ」の基盤にWindows Azureが採用されたこともあり、コミケという日本が誇る文化的なイベントをマイクロソフトが全力で支援している姿を作り出したいという思いがありました。

photo 「クラウド戦役をZガンダム視点でわかりやすく解説する」というブログ「Azureの鼓動」の著者でもある日本マイクロソフトの砂金信一郎さん(デベロッパー&プラットフォーム統括本部クラウドプラットフォーム推進部エバンジェリスト)

 その行きつく先にあるのは(いわゆるサブカルチャーやオタクコンテンツなどを好む層向けの)“ブランディング”です。例えば、国内の電子書籍はBL(ボーイズラブ)やエロなどのコンテンツばかりが売れているという説がありますが、言い換えれば紙の本には載せられないようなコンテンツが国内で多く流通しているということです。

 そうしたコンテンツを楽しむ上で、デバイスはKindleでもWindows 8端末でもiPad miniでもいいし、プラットフォームもAmazonでもGoogleでもWindows Azureでも何でもいい。このように各社のサービスが“コモディティー化”していくことを考えると、「マイクロソフトは俺たちのことを理解してくれている」という(サブカル層、オタク層向けの)ブランディングが重要になるわけです。

 かつてギャルゲーやエロゲーをやるために「PC-98」を買っていた世代は、自分たちの資産がWindows上でしか動かないために、いまだに古いバージョンのWindowsを一生懸命使っているという人もいます。そういう人から見て「なんだかマイクロソフトは最近ちょっと“スーツ”な感じになって“ギーク”のことを忘れてるんじゃないか」という雰囲気があるかもしれない。それを覆したいと思っています。

 ブランディングさえできれば、マイクロソフトは同人コミックなどの制作から流通までを全て支援できるOSやデバイスを持っています。それにより、同人作家などのクリエイター支援では「マイクロソフトすごくいいぞ!」という状態を作り上げたいと思っています。

――出展の準備はどのように進めてきたのでしょうか。

photo ブースに展示するクラウディアフィギュア(非売品)

砂金さん マイクロソフト社内でコミケなどが好きな人を中心にメンバーを募り、30人ほどのチームを組んで“社内横断的”に準備を進めてきました。わたしなどの中心メンバーを除き、ほとんどのメンバーは有志としての参加なので、業務時間外の時間を使って主にメーリングリストで意見交換を繰り返しています。

 例えば、ブースに当日展示するクラウディアフィギュアのデザインを監修したのは技術サポート部門の有志たちなのですが、デザインの修正のかけ方もソフトウェア製品のサポート業務のような感じで指定が細かくて。この人たち本気でやってるな、という情熱が発揮されています。

――コミケ当日の取り組み内容について教えてください。

砂金さん 当日は、企業ブースの西館に出展します。

 コミケでは企業ブースを出せる場所が東京ビッグサイトの東と西に分かれていて、東館はどちらかというと画材などのクリエイター向けグッズを提供するスペースで、西館はいわゆるアニメコンテンツや版権もののグッズノベルなどを展開する場です。盛り上がるのは圧倒的に西館なのですが、今回どちらに出るかは本当に悩みました。

photo ブースでは70インチのタッチパネル端末を展示。画面上のクラウディアさんがタッチ操作に合わせて反応するという(描画エンジンにはサイバーノイズの「Live2D」技術を採用)

 東館でクリエイター向けの制作環境を全部Windowsで提供したい気持ちもあって、そちらも検討したのですが、今回東館は(漫画制作ソフトを手がける)セルシスにお任せすることにしました。この界隈ではセルシスのソフトとワコムの液晶タブレットを使って絵を描いている人が大半なので、東館はよろしくお願いしますと。

 われわれは西館のほうに出て行って、「マイクロソフトがコミケに乗り込んできて変なことやってるぞ」というように、まずはコミケの住民の方々と仲良くなりたい。「意外と“悪の帝国”ではなく、話の分かるやつらだな」というところを見せられればと思っています。

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