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» 2013年04月22日 09時37分 UPDATE

「自炊代行業者も土俵に上がって」 蔵書電子化のルール作りは可能か、著者や出版社の代表が議論 (1/2)

蔵書を電子化する“自炊”代行を認めるための仕組み作りに向けたシンポジウムでは、著者と出版社の思惑の違いが浮き彫りに。自炊代行事業者への不信感も強く、合意形成への難しさを感じさせる第一歩となった。

[岡田有花,ITmedia]

 蔵書を電子化する“自炊”を業者などが代行することを許諾する代わりに著作権使用料を徴収するなどのルール作りを検討する「Myブック変換協議会」(正式名称:蔵書電子化事業連絡協議会)が4月19日に初めてのシンポジウムを開き、自炊を認めるためのルールのあり方などについて議論した。

 著作者も出版社の編集者も本を愛する読者であり、読書の利便性を高めたいという思いは一致していることを確認した一方で、著者同士や、著者と出版社の間で思惑の違いがあることも浮き彫りに。また、著者・出版社側には自炊代行事業者への不信感も強く、合意形成の難しさを感じさせる船出となった。

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 パネリストは、Myブック変換協議会会長で、同会の幹事団体・日本文芸家協会で副理事長を務める作家の三田誠広さん、同協議会統括で幹事団体・日本写真著作権協会常務理事の写真家・瀬尾太一さん、日本書籍出版協会副理事長の金原優さん、日本漫画家協会の幸森軍也さん、全盲の社会学者で、90年代半ばから“自炊”と音声読み上げによる読書をしていたという静岡県立大学教授の石川准さん。東洋大学教授の松原聡さんがモデレーターを務めた。

出版社と著作者が一体となって仕組み作りを

画像 三田さん

 蔵書を裁断・スキャンし、電子化する、いわゆる「自炊」は、著作物を利用する本人が行う限りは私的複製に当たり、著作者の許諾を得ずに行えるが、スキャン代行サービスを利用するなど、第三者が代行する場合、著作者の許諾を得ていなければ、著作権侵害となる可能性が高い(「スキャン代行」はなぜいけない?)。

 とはいえ、書籍の電子化のニーズが高まる中で自炊代行事業者の利用は増えており、自炊代行は読書好きに欠かせないサービスにもなっている。「これからのネット社会では、自炊のような“ささいな2次利用”が増えていくだろう。いちいち許諾を求めるのは事実上、不可能だ」と三田さんは指摘。Myブック変換協議会は、第三者による蔵書の電子化を、簡便に許諾できる仕組み作りを目指している。

 仕組みの案として三田さんは、2次利用したい人が簡単な作業で著作者を特定でき、申し込める“書籍版JASRAC”のような、著作権集中管理システムを、瀬尾さんは、著作者をリスト化して許諾の連絡を取りやすくしたり、読み終わった紙の書籍を出版社に送ると、電子化ファイルがもらえる仕組みなどを提案。これらの仕組みを動かす前提として、裁断済み書籍や電子化ファイルが違法に流通しないよう、ファイルに複製者が分かるタイムスタンプを入れるといった工夫も必要と話す。


画像 新スキームの試案
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 1冊当たりの2次利用許諾料について瀬尾さんは、「現状のスキームを基に、邪魔しない金額で発展させる範囲内」が妥当だろうという意見。「金額が一人歩きするのは困る」としつつ、あくまで一例として5円〜50円程度を挙げる。これほど低額だと許諾の仕組みを維持するコストをまかなえない可能性もあるが、「その金額でやっていくとしたらどういう方法があるかは、後付けで考えるしかない」(瀬尾さん)。

 提案された試案は、既存の書籍流通を壊さず、出版社に不利益をもたらさないことに配慮した内容だ。日本の著作権法上、出版社には著作権はないが、「本を作ってくれたのは出版社」と三田さんは強調。「著作者と出版社が一体となって新しい仕組みを作っていきたいと話す。瀬尾さんは「出版社としっかり話し合いをする前に、著作者とどう歩み寄れるかは未知数」とし、まずは方向性とニーズを確認した上で、進めていきたいという。

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