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2chにスレ立ち「びっくり」 10万円台の国産3Dプリンタ組み立てキット「Cell P」ができるまで(1/2 ページ)

» 2013年08月28日 11時09分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 3Dプリンタを使って個人がハードを自作する――米国のジャーナリスト・クリス・アンダーソン氏が提唱した「MAKERS革命」ムーブメントを受け、国内でも低価格な3Dプリンタへの注目が高まっている。

 岡田商店が運営するホビーロボット専門店「Robotma.com」(東京・板橋)が6月に受注を始めた3Dプリンタ組み立てキット「CellP 3Dプリンター」は、純国産ながら14万7000円(発売当初のキャンペーン価格は9万8000円)と低価格に抑えたプリンタだ。組み立てると最大で200(幅)×180(奥行き)×180(高さ)ミリまでの“3Dプリントが可能(積層ピッチは最小0.1ミリ)。剛性とデザイン性を高めたのが特徴だ。


画像 CellP 3Dプリンタ
画像 後ろからみたところ。リールに巻き付いているのが素材のPLAフィラメント

画像 プリンティング中。小さなものなら数十分程度、大きなものは数時間でプリントできる
画像 複雑な形状のものもプリント可能だ

 開発の理由はちょっと変わっている。日本テレビの特別番組「リアルロボットバトル日本一決定戦!」(12月上旬に放送予定)で戦わせるロボット開発の予算を抑えるため――というのが直接のきっかけだ。同店には業務用の3Dプリンタもあるのだが、業務用プリンタで使える素材は高額。番組で決められた予算をオーバーしてしまうため、「廉価な素材を使える3Dプリンタを新しく作ってしまおう」と、オリジナルで設計・開発したという。

 「せっかく作ったのだから」と試しに発売してみたところ、反響は予想を大きく上回った。7月末までに100台近くを受注。8月初旬にビックカメラ店頭で実演販売したところ注目を集め、その場で購入を決める人もいたという。

低価格ながら剛性にこだわり 設計は大学院生

画像 左から二瓶さん、岡田さん、Robotma.comのロボットエバンジェリスト・内村弘人さん

 「リアルロボットバトル日本一決定戦!」は、出場8チームが身長2メートルの2足歩行型ロボットを作って戦わせる番組。Robotma.comは「世界まる見え!テレビ特捜部」チームの制作を担当しており、ロボットを開発中。外装を凝ったデザインにするため、3Dプリンタで外装パーツを出力しようと考えたが、予算の壁にぶち当たった。

 同店では以前から、顧客が持ち込んだ3Dデータを3Dプリンタで出力できるサービスを提供しており、業務用のプリンタを保有している。だが、業務用プリンタで使える素材は高額で、「外装だけで予算ショートしてしまう」(岡田商店の岡田昇一社長)ほど。そこで、低価格な素材が利用できる3Dプリンタを自ら作ることにした。

画像 二瓶さんが3DCADで作った完成予想図

 設計を担当したのは、趣味のホビーロボット開発を通じて同店と縁のあった電気通信大学大学院生の二瓶陽介さん。ロボットの設計・開発経験はあるが、3Dプリンタを作るのは初めてだ。オープンソースの3Dプリンタプロジェクト「RepRap」で公開されている仕様をベースに、試行錯誤しながら設計したという。

 こだわったのは剛性だ。他社の安価なプリンタは剛性が低いものが多いが、正確なプリンティングを行うには、プリンタヘッドの揺れなどを最小限に抑えられる高い剛性が必要。外装に木材を固めたMDF板を採用し、板同士をはめ込んで箱形構造にすることで、デザイン性と剛性を両立させた。当初はねじの回転で送り出す仕組みを試したが、プリントスピードが遅すぎて断念、ベルトで送り出す機構に変えるなど機構も試行錯誤したという。

画像 PCとつなぎ、制御ソフトで出力する

 制御用のソフトウェアは、オープンソースソフトをベースに日本語化。データ加工とプリンタ出力を1つのソフトで行え、細かい設定なしで使えるようにした。マニュアルは動画で整備するなど使いやすさに配慮した。有料(3万5000円)の組み立てサービスも用意しているが、基本的には購入者に自ら組み立ててもらう想定だ。

 ユーザーが自ら組み立てることが重要だと、岡田社長は言う。3Dプリンタは、ベルトやヘッドなどのメンテナンスが不可欠。「キットの組み立てぐらいは自力でできないと、せっかく買っていただいたのに使われないということになる可能性がある」ためだ。

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