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「売り上げは1円もない」──ニュース閲覧アプリ「SmartNews」、まずはユーザーと提携メディア拡大へ

» 2013年10月18日 20時33分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

 スマホ向けニュース閲覧アプリ「SmartNews」の現状と今後の展望について、社名を「ゴクロ」からサービス名と同じ「スマートニュース」に変更した同社が説明した。ユーザーや提携メディアは順調に増えているが、収益化の目処はまだ立てておらず、「まずは読者の利便性、次に媒体社への金銭的な還元を優先したい」という。

photo 「SmartNews」でニュースを読む際の3階層

 「SmartNews」は、Twitterのパブリックストリームを解析し、よくつぶやかれている話題の記事を中心に配信するニュースアプリ。昨年12月にiOSアプリをリリースし、3月にはAndroid版の提供も始めた。App Storeでは1万件以上のレビューが付き、平均は4.64点と高い。

 提携メディアによる「チャンネルプラス」の読者は今月、200万(複数メディアによる重複含む)を突破。ユーザー層は20代後半が中心で、男性が全体の7割という。芸能系ニュースなどが読まれているといい、テクノロジーに敏感なユーザー(アーリーアダプター)が飛びついたステージからは既に先に進んだとしている。

 8月には、グロービス・キャピタル・パートナーズが引受先となった第三者割当増資で4.2億円を調達し、話題になった。

メディアとの協業が拡大

photo “違い棚”方式のレイアウト。一画面で9記事が一覧できる

 SmartNewsの強みの1つは、有益なコンテンツを自動で選び出す技術。URL付きのツイートを1日1000万件以上取得し、独自のアルゴリズムによる言語判定やカテゴリ分類などを経て、注目度の高い「いま話題の記事」をリアルタイムに解析、配信している。

 快適に読めるインタフェースも評価が高いポイント。ページめくりの挙動はOSのデフォルトのものを使わずに独自開発し、ストレスなく「雑誌や新聞の感覚でザッピングできる」ことを目指したと浜本階生社長は話す。記事のレイアウトは、縦横をあえてそろえずボックス型に配置する“違い棚”方式。写真を多様しながら一覧性も維持する。

 4月から着手したメディア各社との協業関係構築も順調に拡大。同アプリからのトラフィックを計測できるツールや埋め込みコードの提供など、10月時点で36社54媒体と提携や協業が進行しているという。今後も提携メディアは増やす予定で、大手新聞社などとの協議も進めているという。

photo 「チャンネルプラス」の選択画面

 ユーザーがオプトイン形式でメニューに追加し、ワンタップで特定メディア記事を一覧できる「チャンネルプラス」は、現在13社の20チャンネルを開設。5月末の導入から4カ月強で200万人(重複含む)を突破した。最も多い「ギズモード」チャンネルは18万人強が登録しているという。

 藤村厚夫執行役員は「チャンネルプラスのパートナーメディアには通常の記事配信時よりもかなり多いトラフィックを送れている。各メディアで行うTwitterやFacebookアカウントに比べ、より広い読者層にリーチできるのが強み」という。

 収益化の目処は現時点では未定という。各媒体社の記事ページに広告を入れ、全額を各社の収益とするモデルを試験的に導入しているものの、自社のマネタイズは「現在議論中」とした。

 「正直に言うとそこまで急いでいない。まずはユーザーの利便性を高めていくこと、メディア各社にトラフィックだけでなく収益面でも還元し、魅力あるプラットフォームとして育てることが優先」(藤村執行役員)

photo 鈴木健取締役(左)、浜本階生社長(中央)、藤村厚夫執行役員。最近、シェアオフィスから渋谷の新オフィスに移った。「売り上げが1円もないのに移転してしまいました」(鈴木さん)

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