彼は、その理不尽さでネットの話題をさらったWindowsゲーム「上原テトリス」の作者でもある。普通のテトリスブロックに加え、「上」や「原」の形の巨大ブロックなどが落ちてくるシュールなテトリスで、初めて自力で1から作ったゲームだ。
当時は大学を卒業した直後の20代前半。プログラミングの練習がてら、友だちに遊んでもらうために“身内ノリ”で作ったゲームだったが、「上」や「原」などオリジナルブロックの珍妙さと、頑張ればクリアできそうなゲームバランスが受け、「ニコニコ動画」のプレイ動画は150万再生を超え、テレビや新聞にも取り上げられて話題になった。
会社員として、ゲームとは関係ない組み込み系のプログラマーの仕事をしていた当時。Windows向けミニゲーム制作は趣味だったが、「作ったものがお金になるという感覚がなかった」し、遊んでくれる人もそれほど多くなかった。だが、iPhoneの普及でゲームプレイヤーが増えたことをきっかけに、「本格的にゲームを作ってみたい」と会社を辞め、スマートフォンアプリ開発の勉強を始めた。
最初に作ったスマートフォンゲームは、「上」の文字が走ったりジャンプしながら冒険する横スクロールアクション「上原の冒険」(当初は350円。現在は無料)と、「上」の文字が動き回って爆弾を仕掛け、仕掛けた爆弾が「上」や「原」型に爆発する「上原ボンバーマン」だ。
上原ボンバーマンはデータが破損してお蔵入りになったが、上原の冒険は「それなりに売れた」ため、「アプリ開発で生活できるかもしれない」と専業で独立をすることを決心した。
プログラミングは独学。Amazonで手引き書を買い、ネット検索しながら学んだという。最初は、分からないことがあっても質問できる人がおらず「きつかった」が、その後、都内のゲームメディアが開いた個人開発者のオフ会を通じてほかの開発者と知り合い、彼らにTwitterで相談できるようになったため、「かなり助かってます」。
以前は有料版ゲームも販売していたが、現在は出しているアプリすべてが無料だ。個人開発者の間では「1ダウンロード当たり10円ぐらいは稼ごう」という雰囲気があるといい、1カ月当たり2万本ほどダウンロードされれば、生活費は稼げる計算。サラリーマン時代と違い、好きな時に遊び、働き、寝て食べられる生活に「すごく満足しています」。
東京には開発者仲間も多く、沖縄よりも「楽しい」。ただ、「寒いんですよね……」。夏だけ東京に移ることも考えたが、「夏は沖縄より東京の方が暑くて。だから、住めないですよね、あっちは……」
ネットさえあれば仲間と簡単につながれるため、沖縄で開発していて困ることはないという。ただ、都内の会社に呼ばれても行けなかったり、都内で行われる開発者の集まりなどに行きづらいのは難点だ。
沖縄は比較的物価が安く、東京より生活コストが低いが、開発したゲームは東京を含む全国、ひいては世界中に配信できる点が「オイシイ」と思っている。「新宿ダンジョン」は英語版もあり、台湾で数千本ダウンロードされているという。
サクサク遊べるソーシャルゲームやカジュアルゲームが人気を集める中、上原さんはあえて「イライラさせる」ゲームを狙って開発している。
「大企業は多分、イライラするゲームはあまり出してこない。同じように勝負しても勝てないので、ニッチな方向を狙いたい。狭い世界で、敵がないところでやっていこうかなと」
開発者としての目標は? そう尋ねると、こんな答えが返ってきた。「売り上げや流行を気にせず、好きなゲームを好きなように作って生きていける開発者になりたいです」
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