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» 2014年06月05日 18時56分 UPDATE

“空気を読む”人型ロボット、ソフトバンクから20万円で登場 開発者向けSDK公開、プラットフォーム世界展開

「人類史上初めて、われわれはロボットに心を与える」――ソフトバンクがロボット事業に参入。価格は約20万円に抑え、ロボットプラットフォームとしてグローバルでの普及を狙う。

[岡田有花,ITmedia]
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 「人類史上初めて、われわれはロボットに心を与える」――ソフトバンクモバイルの孫正義社長は6月5日、ヒューマノイドロボット「Pepper」を都内で披露し、ロボット事業への参入を発表した。家庭など一般の利用を想定したパーソナルロボットで、相手の表情や声色から感情を推測する「感情エンジン」を備え、“空気を読み”ながらコミュニケーションできるのが特徴だ。

 まず6日から、都内のソフトバンク表参道店と銀座店に接客クルーとして設置し、顧客とコミュニケーションさせる。来年2月に一般発売。価格は19万8000円(税別)と“PCと同等”に抑え、ロボットプラットフォームとして普及させる狙いだ。開発者向けSDKも配布し、自由にアプリを開発してもらう計画。海外展開も予定している。

空気を読む「感情エンジン」搭載 クラウドで学習効率アップ

 Pepperは、同社が出資するフランスのロボットメーカーALDEBARAN Roboticsと共同で開発した高さ121センチ、重さ28キロの真っ白なロボットで、胸部にタブレット型のディスプレイを装備している。

 マイクやカメラ、タッチセンサー、ジャイロセンサーなどで周囲の状況を把握し、自律的に行動する独自のアルゴリズムを搭載した。独自の関節技術により、首や手、腰をなめらかに動かすことが可能。2足歩行機能を省き、ホイールで移動させることで、バッテリー消費を抑え、12時間以上連続稼働できるという。衝突回避機能やオートバランス機能も備えている。


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 音声認識機能を使った会話も可能。カメラでとらえた表情と、マイクでとらえた声のトーンを分析し、人の感情を推定するという独自の「感情エンジン」を搭載。“空気を読み”ながらコミュニケーションできるという。

 会話などで感情エンジンを学習させ、クラウド上のデータベースに蓄積。各Pepperの学習内容をクラウドで統合することで、学習をスピードアップさせる。感情エンジンのクラウドサービスを展開する新会社「CocoroSB」も設立した。

 「喜んでいるとかつまらなそうなどの感情は、今でもそれなりに理解できるが、もっと深く掘り下げ、最終的には人の愛まで理解できるようにしたい。人が操作するのではなく、自らが意志をもって家族を楽しませたい」と孫社長は意気込む。

外部開発者による「ロボアプリ」に対応 SDK公開へ

 外部開発者が開発したさまざまなアプリ「ロボアプリ」を適用できるのも特徴で、開発者向けサイトもオープンした。

 簡単な動作の作成から、一般的な開発言語を使った高度なカスタマイズまで可能というソフトウエア開発キット(SDK)を提供する予定。9月に開発者イベントを開き、技術仕様や開発方法の詳細を公開する。今夏には開発者向け「アトリエ」を表参道と秋葉原にオープンし、開発者にPepperを体験したり、情報共有してもらう。

 Pepperの主な仕様は以下の通り。

  Pepper
サイズ(高さ×奥行×幅) 1210ミリ×425ミリ×485ミリ
重さ 28キロ
バッテリー リチウムイオンバッテリー(30.0Ah/795Wh)、稼働時間約12時間以上(ショップでの利用を想定した場合)
頭部センサー マイク×4、RGBカメラ×2、3Dセンサー×1、タッチセンサー×3
胸部センサー ジャイロセンサー×1
手部センサー タッチセンサー×2
脚部センサー ソナーセンサー×2、レーザーセンサー×6、バンパーセンサー×3、ジャイロセンサー×1
可動部の自由度 頭:2、肩:2×2(L/R)、肘:2×2(L/R)、手首:1×2(L/R)、手:1×2(L/R)、腰:2、膝:1、ホイール:3
可動部のモーター 20個
ディスプレイ 10.1インチタッチディスプレイ
プラットフォーム NAOqi OS
通信 Wi-Fi:IEEE 802.11 a/b/g/n(2.4GHz/5GHz)、Ethernetポート×1(10/100/1000 base T)
移動速度 最大3キロ/時
移動可能段差 最大1.5センチ

カメラで表情とらえ、橋本環奈さんの演技採点 「7〜8割は会話として成立」

画像 左から宮迫博之さん、橋本環奈さん、樋口可南子さん、上戸彩さん、Pepper、ダンテ・カーヴァーさん、“お父さん”

 発表会では、孫社長とジョークを交えて会話したり、孫社長との間の距離をセンサーで測ったり、さまざまなポーズを取って「みなさん、もっと写真を撮ってください」とあおったり、ラップを披露するなど、なめらかな動きやトークを披露。「オーディション」と称し、ゲストの橋本環奈さんなどに指定の演技をさせ、その表情をカメラでとらえて評価する――といったゲームも披露した。

 トークや動きの多くは、事前にプログラムされたシナリオ通りのものだったが、孫社長との距離を測ったり、撮影した写真から相手の感情を推定し、採点するなど一部の動きは、その場で自律的に行っていたという。

 音声認識を活用した会話では、相手に応じて、あらかじめ用意された返答パターンからふさわしいパターンで会話する――といったことが可能。ソフトバンクショップでは、Pepperが来店客に自ら近づき、「今持っているのはスマートフォンですか?」などと語りかけて客とコミュニケーションするほか、ダンスやゲームなどあらかじめプログラムされた動きを披露する。

 発表会場でモデルの女性と会話していたPepperは、時々答えに詰まることもあったが、「7〜8割は会話として成立する」(孫社長)という。「きょうお見せしているPeppaerは、あくまでも第一歩。感情を、心を持ったロボットを作りたい」(同)

コスト度外視で価格設定 グローバル展開へ

 来年2月に発売時は、ソフトバンクショップとネットでの販売を想定。まずはロボットファンや、ロボットアプリ開発者などに買ってもらいたいという。グローバル市場での量産化を前提に、中国Foxconnが製造を担当する。

 19万8000円という価格は製造コストを下回っているという。「目先では利益は出なくていい。コストから決めた価格ではなく、いくらなら買ってもらえるか考えた価格だ」と孫社長は説明。気軽に購入してもらって普及を加速させ、量産効果が出れば、利益も出ると話す。

 感情エンジンのクラウドサービスや、ハード・ソフトのメンテナンスサービスを有料で展開するほか、将来は、Pepper用のコンテンツやアプリ販売を通じ、利益を得ていく計画だ。感情エンジンなどを含め、すでに100件以上の特許を出願しているという。

 Googleもロボット事業に参入しているが、「Googleが狙っているロボットはより生産性を求めている。われわれは生産性というよりは家庭やお店で、人々をもっと楽しませたい」と、孫社長はその違いを説明する。

感情を持ったロボット開発は25年来の夢

画像 左からブルーノCEO、孫社長、Foxconnのテリー・ゴウCEO

 孫社長は、Pepperの開発がコンピュータに感情を与えるきっかけになるとし、「1949年にノイマン型コンピュータが誕生し、人間の“左脳”を受け持ってきた。65年が経った今日は、100、200、300年後の人が、コンピュータがあの日から変わったと言える歴史的な日になる」と語る。

 感情を持ったロボットの開発は、孫社長が25年前から夢見ていた事業という。「鉄腕アトムは人の心が分からず、涙を流せなかったが、人々の感情を数値化することは可能なはず。チップ、通信、クラウドなど要素技術がそろい、ブルーノ(ADLEBARANのブルーノ・メゾニエCEO)との出会いで体も用意できる。今こそ挑戦すべきだ」(孫社長)

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