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「なぜ人気になったか分からない」 「セーラー服おじさん」という“社会実験”から見えたものとは(3/4 ページ)

» 2014年06月30日 07時47分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 カフェ、レストラン、ホテル、空港、裁判の傍聴――さまざまな場所をセーラ服姿で訪れれたが、特に問題は起きなかったという。「面白い」「かわいい」と思った人は声をかけてくれたり、写真をせがまれる。「汚い」「気持ち悪い」など否定的に感じる人もいるだろうが、「そういう人は無反応なので、表面的にはまかり通っちゃうんですよね」。


画像 成田空港でもセーラー服のまま出国審査を受け、パリに飛び立った
画像 裁判の傍聴も。鉢巻きは取るよう言われたが、セーラー服はOKだったという

 フランスを訪れた際は、家を出てから帰るまで、全行程をセーラー服で通した。成田空港の出国審査では「日本から脱出させないぞという勢いで」綿密に身体検査をされたが、もちろん何も出てこない。「通さないわけにはいかないですね」

 出国審査ぐらい普通の格好で受けたほう楽なのでは……記者が問いかけると小林さんは間髪入れず、「いやいや、つまんないつまんない。何も面白くないじゃないですか」。

 今では、会社の飲み会でもセーラー服を着ている。スーツケースにセーラー服を詰め込み、終業後に着替えてから参加。最初は大ウケするのだが、見ている側も慣れてきて、1時間もすれば“普通の風景”になるという。

ファンに支えられている

画像 Twitterで「セーラ服おじさん」を検索した結果の一部

 セーラー服姿で外出した後は、Twitterを「セーラー服おじさん」などのキーワードで検索し、自分の足取りや反応をたどる。「1つのイベントで100枚ぐらい写真が上がることもある。カメラを持って行かなくても写真が拾えて、面白いですね」

 最初は表情もぎこちなかったが、「かわいい」と言われる続けることで、表情やポーズを作れるようになった。「人は周りの期待した通りのものになってくる。ピグマリオン効果ですね」

 セーラー服おじさんは「キャラとして受け入れられている」と感じている。街で会った人が「会っちゃった」とTwitterに投稿し、それを見た人が「どこに行けば会えるの?」と聞き、実際にその場に行ってみる――など「ゲームみたいななものが成り立っている」。会えば幸せになれるという噂も流れ、会った人はみんな喜んでくれるという。

 「アイドルや“ゆるキャラ”のように、ファンに支えられているというか、肯定的に応援してくれるからやれている」。ネットの空気は敏感に読んでおり、「あまり受けが悪かったり風向きが悪くなりそうだったらやめよう」と考えている。

セーラー服おじさんという社会実験

 セーラー服おじさんは、1つの社会実験だという。「社会に異質な物を投下し、周囲がどう反応するかを観察することで、“実験社会学”になっているのでは」。そこから見えた日本社会は、「スルー力が高く、ポーカーフェイスで、何を考えているか分からない」社会だ。


画像 中国では写真攻め、サイン攻めにあった
画像 パリのオープンカフェで。周囲の客も、子供以外は平然としている

 コスプレイベントの審査員として訪れた中国は、「社会が元気だから、人も反応がいい」。ホテルでチェックイン中に声をかけられサイン攻めに。イベント会場では護衛が2人付いたが、ファンが押し寄せたという。中国版Twitter「Weibo」にアカウントを作ってみたところ、1週間で2万5000人にフォローされたという。

 「ジャパンエキスポ」に参加するために訪れたフランスは、「個人主義が進んでいて干渉してこない」。パリ中心街のオープンカフェの一番目立つ場所でお茶してみたが、特に問題は起きなかったという。街角では子供にお尻を叩かれ、スカートをめくられるなど、“いたずらっ子”文化にも触れた。

「実は英語堪能な高学歴エンジニア」と話題 「セーラー服着て歩くより恥ずかしい」

 セーラー服おじさんは、実は高学歴エンジニアだった――今年5月、大学受験予備校「早稲田塾」の公開セミナーの告知で、小林さんの学歴やキャリアが明かされた。セーラー服姿とキャリアとのギャップに驚きの声があがり、ネットで話題になった。

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