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「論文のSTAP細胞、なかったことはほぼ確実」と調査委 小保方氏、実験データほとんど提出せず(2/4 ページ)

» 2014年12月26日 16時34分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 調査対象は、論文著者の小保方氏と若山氏、理研の丹羽仁史チームリーダーで、聞き取りや質問状送付で調査した。小保方氏への聞き取り調査は3回行われたという。また、理研内部の研究者が解析したSTAP細胞関連データなどを検証し、論文に記載されたSTAP細胞とは何だったのか調べたほか、理研内外から論文に指摘された新たな疑義も調べた。

STAP幹細胞やキメラ、すべてES細胞由来 誰が混入したかは不明

画像 残されたSTAP幹細胞、FI細胞(5列目まで)と、既存のES細胞(6列目以降)の対応表。右側の青線が由来を示している

 論文に記載された「STAP幹細胞」(STAP細胞に増殖能を持たせたとされる細胞)とは何だったのか――小保方氏の実験室などに残されていた3種類のSTAP幹細胞と、1種類の「FI幹細胞」(STAP細胞から作ったとされる多能性細胞)の遺伝子を理研の研究者が解析し、調査委が検証した。

 その結果、4種類すべてについて、若山研で過去に作成されたES細胞や、小保方氏の研究室にあった由来不明のES細胞に由来するか、由来する可能性が高いと判明。論文にはもう1種類のFI幹細胞が記載されていたが、残存ストックがなく、実際に作成されたかどうかも分からなかった。

 また、STAP幹細胞から作ったとされるキメラマウス「STAP 2Nキメラ」も、若山研で過去に作成されたES細胞に由来すると断定。STAP細胞移植でできたとされるテラトーマも、同じES細胞に由来する可能性が非常に高いと分かった。

画像 STAP細胞研究当時の若山研究室の見取り図
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 報告書ではES細胞の混入理由について、「研究者の常識としては、誰かが故意に混入した可能性を否定できない」と指摘。関係者に聞き取りを行ったが全員が混入を否認しており、目撃者も直接の証拠もないため、「誰が混入したか、故意か過失かは決定できない」としている。STAP細胞を培養していた理研CDB若山研のインキュベーターのある部屋は、CDBの人なら誰でも入ることができ、夜間に入ること可能だった人も多かったという。

 また論文では、ES細胞にはないSTAP細胞の性質として胎盤への寄与が挙げられており、緑色に光るSTAP細胞から作成したとされるキメラマウスは、胎盤も緑色に光っていた。この写真についての見解を問われた桂委員長は、「われわれは疑っている。光る胎盤は、血液や胎盤以外のものだった可能性がかなりある。胎盤だと証明されたとは思っていない」と述べた。

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