ハルナが行く!
キラキラ少女漫画の生まれる現場 「なかよし」「りぼん」編集部に行ってきた
小学生のころ、毎月楽しみに読んでいた少女漫画雑誌。裏側はどんな風にできてるの? 編集者ってどんな仕事? 漫画家のみなさんのお仕事のサイクルは? ――ワコムのペンタブレットユーザー向け企画「なかよし」「りぼん」編集部ツアーに潜入してきました。
おじゃまします、「なかよし」編集部
というわけで、やってきました、講談社「なかよし」編集部。「セーラームーン」「カードキャプターさくら」など、自分が読んでいた作品のグッズや付録が並ぶ編集部にいきなりドキドキします。
まずは編集部のお仕事紹介ということで「スタジオ棟」へ。サイズや用途もさまざまなスタジオが並び、「ViVi」などファッション誌も含め、雑誌や書籍の写真の多くはここで撮られているそうです。
取材した日は「なかよし」巻頭カラーページの撮影日でした。連載作品だけでなく、カラーページの企画進行をするのも編集部の役目なんですね。衣装も小道具もかわいいものばかり……何気なく見ているページもこうやって細かく作られていることが改めて分かります。
続いて隣の部屋は何やら趣が違う様子。いくつかパターンの違うキッチンがある、料理撮影用のスタジオでした。パティシエを目指す女子高生が主人公の作品「伯爵さまは甘い夜がお好き」のカラー口絵用のスイーツを作っているのは担当編集さんです。へ、編集者はお菓子も作れなくてはいけないんですね……?
講談社の発行書籍が集められた「資料閲覧室」は、図書館のような立派なたたずまいです。普段見ることの少ない大型本が並んでいるのが圧巻でした。
少女漫画の魅力は「男の子のかっこよさ」 鳥海ペドロ先生
今回の編集部ツアー、ペンタブレットユーザーを対象にしているということで、メインイベントはプロの漫画家によるデジタル作画レクチャーです。連載作品「百鬼恋乱」が5月号で最終回を迎えた鳥海ペドロ先生に来ていただきました。あのきれいな絵がこの指先から……!
鳥海先生がデジタルで描き始めたのは中3~高1のころ。現在、カラーイラストはラフから下絵までアナログで塗りはデジタル、漫画原稿はメインはアナログ、トーンや仕上げ部分で少しずつデジタルを試している過程だそうです。小中学生の参加者を前に、ペンタブ初心者にも役立つような上達の方法、おすすめのソフトなど具体的に細かく話していました。
続いて、より実践的なプロの技を聞くことに。これまでのコミックスの表紙を並べ、それぞれの塗り方や構図の決め方の思考回路、描き方の変化を解説。読者として読みながら「この作家さん、絵が変わったなぁ」と思うことはあっても、改めて言葉で説明されると新鮮です。
扉絵を描く時に意識しているのは「キャラ単体では成立しないもの」。1枚の絵だけで物語を感じるような、関係性が分かるようなものにしたい――表紙だけ見ても、前作と比較して複雑な色使い、構図が増えているのが分かります。
せっかくなら実際に描いているところも見たい……ということで、ワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq Companion 2」を使って、参加者のリクエストに応えながら、その場で女の子の絵を描いてもらいました。細かい部分の描き込み方、色の重ね方のコツ、ペンの設定などもレクチャーしていました。
鳥海先生の思う少女漫画の魅力は「かっこいい男の子が描けること」! 「絵にすると自分の想像の7割くらいに抑えられてしまうので、冷静になると『ちょっとやりすぎじゃない?』と思っちゃうくらいキメキメにするのがコツ。照れをいかに捨てられるかが勝負!」と参加者にアドバイスしていました。
鳥海先生のライブペインティングは動画でも公開されています。ラフから塗り、仕上げまでの全プロセスが収められています。
「りぼん」新連載の作り方
さて、続いて集英社「りぼん」編集部へ。他の女性向け漫画誌も同じフロアですね。
5月号掲載の柚木ウタノ先生の新連載「いろはにれんげ」の第1話生原稿を元に、漫画家と編集者が2人3脚で取り組むプロセスを聞きます。
まずは物語の根幹となるキャラクターデザインや設定を何度も検討した上で、プロットとネームを繰り返しブラッシュアップ。初回は当然考えなければいけないことも多く、ネーム段階で何度もやりとりしたそうです。
ラフ状態のネーム、トーンを貼った完成原稿、文字が入った実際の本誌を比較すると、違いは一目瞭然ですね。
こちらのカラー原稿はアナログ塗り。実際のサイズより少し大きめのサイズで仕上げるのは、縮小することで密度を高く見せるため。特に和柄は描き込みが多く細かいので、原画を目にするとため息が……。きれいです。「りぼん」読者には華やかでかわいらしいテイストが好まれることもあり、付録や扉絵などカラー原稿を描くチャンスが多いのも特徴なんだそうですよ。
連載作家陣にデジタルですべて描き上げる人はまだ少ないものの、アナログトーンを取り込んでデジタルでも使えるようにしたり、自分の描きたい雰囲気に合わせてページごとにデジタルとアナログを切り替えたり、それぞれのスタイルで活用しているとのことでした。
“キラキラ少女漫画目”を魅力的に 酒井まゆ先生
作画レクチャーには「シュガー*ソルジャー」を連載中の酒井まゆ先生が登場。酒井先生がデジタル作画を取り入れたのは2009年、新連載開始をきっかけに、読者にも視覚的に気持ちを切り替えてもらえるよう、カラーイラストをデジタルに切り替えたそうです。
現在は本誌掲載時の扉絵を元にコミックスの表紙を作る時、ベースの線画はそのままに、キャラクターの表情や光の入れ方を変えて新たなバリエーションを生むというデジタルだからこそできる工夫もしています。オリジナルとは別のバージョンが見られるなんて、ファンにはうれしいですね。
参加者から「質感を描き分けるのが苦手」という相談を受け、その場で即興勉強会がスタート。楕円ツールや直線ツールを使ったコップの描き方、ガラスの厚みや硬さをどう出すか――ポイントを解説しながら描いていきます。コップを満たすオレンジジュース、炭酸の泡の雰囲気の出し方、細かいところもプロの技が光ります。
「人物はみんな放っておいても練習するもんね、小物や背景をかっこよく描けると全体がぎゅっとしまるよ」と漫画家志望の参加者に向けてアドバイスしていました。
「とにかくキラキラの目が大好き!」と少女漫画の魅力を語る酒井先生。「ほんの少しパーツがずれるだけで全体の印象が変わってしまうので、瞳には一番時間をかけます」「華やかな絵が描けると『少女漫画楽しい!』とテンションが上がります」と笑顔で教えてくれました。
「『そんなにぐるぐる回すんですか』とよく驚かれる」と笑うように、酒井先生の描き方の特徴は、自分が一番動かしやすい腕の動きで描き上げられるよう、回転や反転を繰り返すこと。その様子がよく分かるライブペインティングは動画でどうぞ。
作品を生み出す側の人たちの情熱に触れながら「なかよし」「りぼん」の最新号をめくり、またこの甘い世界に浸りたい気持ちがわきあがってくる1日でした。大人になってから読む“キラキラ少女漫画”、新鮮な発見がありそうです。
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