ITmedia NEWS > ネットの話題 >

カドカワ、ネットの高校「N高等学校」来春開校へ プログラミング、アニメの課外授業も

» 2015年10月14日 16時49分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 カドカワ(KADOKAWA・DWANGOから社名変更)は10月14日、通信制高校「N高等学校」を来年4月に開校すると発表した。授業をインターネット上で受講でき、修了者には高校の卒業資格が授与される。通常のカリキュラムに加え、プログラミングや小説など様々な課外授業も受けられるほか、自治体と連携して「職業体験」などの学校行事も実施する。

photo N高等学校の制服

好きな時間、場所からネットで授業に参加でき、3年間で高卒資格を取得できる通信制高校。生徒には担任教師が付き、授業の動画を見るだけでなく、質問や進路相談もできる。カドカワの川上量生社長は「従来のネット授業にはなかった“双方向的な”コミュニケーションを取り入れる」と意気込む。

 身支度や通学に時間がかからない分、通常科目以外に課外授業を豊富に用意するのが特徴。受験勉強やプログラミング、文芸小説、アニメやゲーム、ファッションなど様々なジャンルの授業をネットで受講でき、追加の受講料もない。

photo プログラミングやアニメなど、課外授業は様々

 大学進学を目指す学生には、KADOKAWAのブランド「中経出版」がオリジナル教材を提供。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」の著者・坪田信貴さんをはじめとする講師陣の指導で進学をサポートする。川上社長は「本来、通信制は大学進学のサポートに優れているはず。初年度から東大生を出す」と意気込む。

 プログラミングやIT業界の基礎知識を教える課外授業も実施する。ドワンゴのトップエンジニアが教鞭をとり、「初心者でもニコニコ動画のシステムを1から自分で作れるようになる」という。「世界ではプログラミングは必須の教養と言われている。社会に出ても、必ず食っていける人材を育てる」(川上社長)。

 作家の森村誠一さんらが教える「文芸小説創作授業」、KADOKAWA「電撃レーベル」で活躍する川原礫さん(ライトノベル)、いとうのいぢさん(イラスト)などが教えるエンターテインメントの授業も開講する。カドカワの佐藤辰男会長は「私自身が受けたいほど。クリエイティブのノウハウやハウツーだけでなく、心構えまで学べるのは貴重な経験になるはず」と自信を見せる。

 カドカワ傘下で各種スクールを運営するバンタングループとも協業し、ネット受講に限らず週1〜5回でバンタン東京校、大阪校に実際に通学できる「マイセレクトコース」も用意。通学を希望すれば、ファッションやゲーム開発、声優など全33分野の授業も選択が可能だ。

 自治体や企業団体とも協力し、マタギ(熊狩猟)や刀鍛冶、イカ釣り漁業などの職業体験も行う。N高等学校の奥平博一校長は「職業体験は単なる見学ではない。社会で自立できるように、知識や技術、コミュニケーション能力を養う」という。“文化祭”として「ニコニコ超会議」や「闘会議」などniconicoのリアルイベントも活用したり、校舎がある沖縄県うるま市でのスクーリングも開催する。

photo 職業体験の一覧

 生徒全員にはメールアドレスに加え、チャットツール「Slack」やソースコード共有ツール「GitHub」のアカウントも発行。日常のコミュニケーションやレポートの共有に活用してもらい、同級生との学園生活を充実させる狙いだ。「通信制の学生は勉強よりも『友達ができないこと』に悩むケースが多い。社会性を学ぶ機会をネットで提供し、リアルの場に広げていければ」(川上社長)

 授業料は1単位あたり5000円で、3年間で約29万3912円を想定。初年度の募集人員は1万人を予定する。10月14日から出願の受け付けを開始し、学校説明会(11月1日・東京、3日・大阪)やネット上でオープンキャンパス(11月9日)も開催する。

photo 授業料は3年間で約29万円を想定。
photo 学校説明会も予定

 「今のドワンゴを作ったのは、引きこもりや不登校で行き場をなくした人たちだった。一見、落ちこぼれに見えるかもしれないが、彼らには潜在的な可能性がある。教育の現場から社会との接点を作ることで、生徒たちが社会の主役に育ってくれれば」(川上社長)

photo N高等学校の奥平博一校長、カドカワの川上量生社長、佐藤辰男会長(左から)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.