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「あかつき」がとらえた雲の写真に「なんじゃこりゃ」 金星軌道投入に成功、「世界の仲間入り」(2/3 ページ)

» 2015年12月09日 21時56分 公開
[岡田有花ITmedia]

 カメラから届いた写真データを最初に開いた瞬間、今村氏は「雄叫びをあげてメンバーとハイタッチした」という。「十何年かけて準備し、手塩にかけた観測装置の視野いっぱいに、どうしても撮りたかったものが写って、うれしくてしょうがなかった。着いたな、という実感がようやくそこでわいてきた」

 JAXAは、3台のカメラでとらえた写真を1枚ずつ公開した。波長0.9μメートルの近赤外域で撮影した「1μmカメラ」による写真は、白く光る金星をとらえている。波長283ナノメートルの紫外域で撮影した「紫外イメージャ」による写真には、硫酸の雲の生成にかかわる化学物質の分布がとらえられている。それぞれ、金星をとらえた写真として世界最高レベルの解像度という。

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画像 軌道投入後のあかつきが撮影した金星。LIRの写真(3番目の写真)に「0.9μm」とあるが、これは資料の誤記載で、正しくは「8〜12μm」

 金星の雲の温度分布をとらえた「中間赤外カメラ」による写真には、赤道域をまたいで北半球から南半球まで弓のような模様が写っている。「このようなものが見えることは想像もしていなかった」と今村氏は驚き、「新しく見えた謎を解明していくのが宿題として突きつけられた」と述べる。

 中村氏もこの写真を見て「なんじゃこりゃ」と驚いたという。「あんな画像が撮れたのは世界で初めて。これは期待が持てる。いいなと思った」。

 あかつきが投入された軌道は当初予定していたものよりかなり長いが、「観測ができなくなったわけではない」と今村氏。「カメラはもともと、ほかの惑星探査機と比べてもトップレベルの解像度。現在の軌道でも雲の動きを追いかけて風速分布を出していくことはできそう。どこまでの精度でできるかは、やってみないと分からない。これから挑戦していく」(今村氏)。

 軌道は、工学チームの廣瀬史子主任研究員を含む4人のチームで、何万ものケースを「寝ても覚めても計算」して割り出した。「2年間は観測を保証する軌道になっている。その後も、燃料がある限り観測を続けることができる」と廣瀬氏は話す。

 あかつきは今後、継続的に金星を観測。より低い位置にある雲や地表まで含め、連続的な撮影を行い、金星の大気や雲の謎に迫る。金星の「夜側」に回り込んで観測したデータも、近い将来公開できるという。

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