人気バンドSEKAI NO OWARIの所属事務所からヤマハにコンタクトがあったのは3年ほど前。セカオワのボーカルであるFukaseさんをVOCALOID化するプロジェクトはそこから始まり、「VOCALOID4 Library Fukase」として2016年1月に発売された。そこに至るまでの詳しい話をヤマハの担当者、そしてデモ曲を作ったボカロPに聞いてきた。
取材に臨む前に予習として、自分でもVOCALOID Fukaseを実際に試してみた。
公式サイトを見ると、エレクトロニカが得意ということなのだが、あいにくこのジャンルはよくわからない。そこでボカロネットだ。
ヤマハの会員制クラウド音楽制作サービスであるボカロネットには、歌詞を与えれば、作曲してVOCALOIDで歌ってくれるボカロデューサーという機能がある。これの中にエレクトロニカという曲スタイルがあるので、それを使ってみた。
声質が近いソフトボイスのVOCALOIDということで、歌手にZOLA PROJECTのYUUを指定、出来上がったデータをボカロネット経由でMac上のCubaseに組み込まれたVOCALOID Editorに取り込む。
自動作曲されたものはここから聴ける。
同じ演奏で、VOCALOIDの部分だけを編集したのがこれだ。自動作曲されたメロディーラインの不自然なところを修正し、英語歌詞の最後の部分をVOCALOID FukaseのEnglishで歌ってもらった。
これだけやわらかいトーンのVOCALOIDは男声ではなかったように思う。今回はNormalとEnglishを組み合わせてみたが、日本語と英語とのなじみも自然だ。英語交じりの歌詞を多用するボカロPにとっては重要なことだろう。
作例ではこれに「Electronica-Tune」というJob Pluginを適用している。Job Pluginというのは、ヤマハのVOCALOID Editorで利用することができるアドインで、メロディーや各種パラメータを変更することでさまざまな歌唱スタイルに一瞬で変えることができる。小林幸子さんのVOCALOID Sachikoでは、彼女の「こぶし」を見事に再現するプラグインが同梱されていた。
VOCALOID Fukaseの場合はそれが「こぶし」ではなく、あのロボボイス。音楽に詳しい人ならば「あ、オートチューンね」と気づくだろう独特のサウンドだ。作例の後半はこのプラグイン未適用の、「素のまま」のVOCALOID Fukaseも比較用に入れてある。
「なぜこのプラグインなのか?」については、プラグイン開発担当者に話を聞いているので後半で。
「Fukaseなら俺の隣で歌ってるよ」みたいなことをファンの子たちに言ってみたい、そんな気分もありつつ、純粋に男声VOCALOIDとして優秀だという印象を実際に使ってみて感じた。
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