「Pokemon GO」の次は? “玩具化”したARはどこへ行くのか(1/2 ページ)
AR(拡張現実)技術を活用し、現実の世界に重なるようにポケモンが現れる――スマートフォン向けゲーム「Pokemon GO」に世界中が熱狂している。7月6日に米国などで先行公開(iOS/Android)されると、Android版のアクティブユーザー(DAU)は3日間で600万人を突破。12日には2000万人超と、米国で歴代最多の記録を塗り替えた。
こうしたAR技術の研究は、つい最近始まったものではない。これほど一般に浸透するまでには20年来の研究の歴史があった。1999年、加藤博一氏(奈良先端科学技術大学院大学教授)が、白黒のマーカーを使ったARアプリを開発できる「ARToolKit」を発表すると、さまざまなユーザーがARアプリを作成・公開。2007年、ニコニコ動画に投稿された動画「ARToolKitで初音ミク」などが話題を呼んだ。08年にiPhoneが国内で発売されると、そのカメラ機能を生かしたアプリ「セカイカメラ」が09年に登場。スマホのカメラ越しに見ると、空間上に文字や画像を「エアタグ」で付与・共有するアプリだ。iPhoneの初期の人気を支え、ARの可能性を垣間見る草分け的存在だった。
近年は、初音ミクなどのバーチャルキャラクターが舞台上のスクリーンに登場し、歌声やダンスを披露するイベントが開催されているほか、ロート製薬や森永製菓などは製品のパッケージを使ってARコンテンツを提供している。さまざまな企業がプロモーションに活用するほど、ARは身近な存在になっているようだ。
一方、ARは「ゲームに使われる技術」「キャラクターが踊るもの」――など“玩具”のように思われるケースも少なくない。だがARの研究はさらに進み、企業プロモーションの用途を越え、ビジネスの現場や日常生活を変えようとしている。そんな未来の可能性を説明するキーワードが、MR(Mixed Reality、複合現実)という言葉だ。
MRとは、現実世界に映像を重ね合わせて見せるだけでなく、実際に触ったり、動かしたりできる技術を指す。広義にはARに含まれる概念だが、従来の「映像をオーバーレイ表示するだけ」の技術ではなく、操作が映像に反映されることで、現実世界と仮想世界がより融合(Mixed)したかのように体感できることが特徴だ。
現在、MRの技術はどれほど開発が進んでいるのだろうか。実用化されると私たちの世界はどう変わるのだろうか――長年「MacUser」編集長を務め、IT業界のトレンドを追い続けてきた松尾公也(ITmedia ニュース編集部)が語る。
MRは「時を越える」
――MRは現実世界に映像を重ねるだけでなく、インタラクティブな操作が可能になるという。MRの技術は、どんな場所でどのような活用が期待されているのか
松尾: 従来のARは「玩具」と思われるかもしれないが、MRという言葉にはそうしたイメージを払しょくし、ビジネス面での実用性をアピールしたい狙いがあるように思う。例えば、キヤノンITソリューションズは「MREAL」という技術を開発している。現実の空間をビデオカメラで撮影して位置情報を計測しながら、CGを合成してディスプレイに見せる技術で、保守・点検などの現場で活用を見込んでいるようだ。作業のマニュアルを画面にオーバーレイ表示すれば、両手がふさがらない上に、手のジェスチャーでページをめくるなどの操作も可能になるだろう。
それから、米Microsoftはヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」を開発している。同社が日本航空(JAL)と共同開発したアプリは、整備士がエンジンの構造を学んだり、パイロットが操縦を訓練したりできるものだ。
――点検や整備の現場だけで使われるのか
松尾: 米Microsoftはそれだけにとどまらず、オフィスにもMRを導入したいという意欲が見える。例えば現状の会議だと、プロジェクターを使って1つの画面に映して、皆が「画面が小さい」と文句を言っている場面をよく目する。だが、皆がHoloLensをかけて、空間上に浮かぶバーチャルな情報を一緒に見られるとどうだろうか。映画「アイアンマン」には、設計図が空間に浮かび上がっていて、皆が同じように見えるシーンがある。平面図と比べると、立体物のイメージを共有しやすくなる上に、指で回転させたり、拡大表示させたりと、より直感的なコミュニケーションが可能になるだろう。
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