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“電波圏外”のロボット、ドローン経由で遠隔制御 災害現場・山間部で活用へ

» 2016年07月25日 18時26分 公開
[ITmedia]

 情報通信研究機構(NICT)、産業技術総合研究所(産総研)などは7月25日、制御用の電波が直接届かない場所にあるロボットを、中継装置を積んだドローンを経由して遠隔操作・監視する技術を開発したと発表した。災害現場や山間部などでの活用を見込む。

photo 制御用の電波が直接届かない場所にあるロボットを、中継装置を積んだドローンを経由して遠隔操作・監視する

 建物や山といった障害物の反対側にロボットが回り込むと、電波が遮られるため遠隔制御できなくなる。これまでも他のロボット経由で電波を送って制御する方法はあったが、通信経路が切り替わるたびに通信が途切れ、制御できなくなってしまう問題があった。また従来の技術は、インターネット用の無線LANに使われる2.4GHzの周波数帯を利用していたため、混信のリスクもあったという。

 研究チームは、応答の遅延や通信信号同士の干渉を抑えた新たなアクセス制御プロトコルを設計・開発。制御局とドローンに載せた中継局、ロボットの間で通信信号をやり取りするタイミングを事前に割り振る「時分割多元接続」方式を採用し、無線制御の安定感を高めたという。通信の周波数帯は、2.4GHz帯と比べて遠くまで電波を飛ばせる920MHz帯を採用している。

 今年5〜6月に行った実証実験では、中継装置を搭載したドローンを上空約20〜30メートルに滞空させ、電波が届かない位置にある小型四輪ロボットを遠隔制御した。ドローンによって他のロボットを制御し、中継経路が途中で切り替わっても通信を切断させない技術は「世界でもまだ実現した例がない」(研究チーム)としている。

photo ドローンに中継装置を搭載
photo 実証実験の様子

 今後は地上のロボットに限らず、飛行するドローンの制御実験に取り組むほか、920Mhz帯よりも遠くに電波を飛ばせるVHF帯(300MHz以下)を追加する予定。災害時のロボットによる調査や、山間部でのドローンによるモニタリング調査、物資の配送などに応用するという。将来は、複数のロボットやドローンが自律的に動き、互いを認識しながら無線ネットワークを構成するシステムも期待できるとしている。

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