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「量子コンピュータを実用性で超える」 富士通研、新たな計算機アーキテクチャ開発

» 2016年10月21日 15時45分 公開
[ITmedia]

 富士通研究所は10月20日、トロント大学と共同で、膨大な組み合わせから適した解を導く「組み合わせ最適化問題」を解く新しい計算機アーキテクチャを開発したと発表した。半導体技術を用い、柔軟な回路構成を採用することで、現行の量子コンピュータより多様な問題を扱え、「量子コンピュータを実用性で超える」としている。

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 組み合わせ最適化問題は、複数都市をまわる場合の最短経路を求める「巡回セールスマン問題」で知られ、数千拠点ある世界的な輸送システムや投資ポートフォリオの最適化など、社会システムの課題解決にも重要だ。

 従来のプロセッサは扱える問題の自由度は高い反面、高速に解くことはできず、現行の量子コンピュータは高速に解けるが、近接した素子同士でしか接続できないため多様な問題を扱えないという問題があった。

 新技術では、デジタル回路を用いた「基本最適化回路」を複数個利用し、高密度に並列実装。回路の内外で信号のやりとりができる全結合の構造を採用し、多様な問題を扱えるようにした。

 問題を解く際は、複数ある次の状態の候補に対する評価結果を一括して並列計算。探索の途中で局所的な解にたどり着いて膠着(こうちゃく)状態になった場合、脱出する確率を高める技術も採用した。

 1024ビットの組み合せを扱える基本最適化回路をFPGAに実装して評価したところ、一般的なコンピュータによる従来のソフトウェア処理より約1万倍高速に動作したという。

 今後、アーキテクチャの改良を進め、2018年度までに、10万ビットから100万ビットの計算システムを試作し、実用化に向けて実証を進める。

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