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「NAVERまとめ」と著作権 LINEに法的責任を問えるか? 弁護士が考察するSTORIA法律事務所ブログ(3/5 ページ)

» 2017年01月31日 09時30分 公開
[杉浦健二ITmedia]

ではLINE社への法的責任追及は可能か

 以上の状況のもとで、LINE社への法的責任を追及することは可能でしょうか。あるNAVERまとめ記事が他人の著作権を侵害していたとします。この場合、誰が著作権を侵害しているのでしょうか? 著作権侵害の主体は誰かの問題です。

 まず実際に著作権侵害となる、まとめ記事を書いた作成者が著作権侵害の主体であることは明らかです。ではNAVERまとめという著作権侵害がなされた「場」を提供しているLINE社も、著作権侵害の主体に含まれるのでしょうか?

 この点を判断するにあたってはTVブレイク事件判決(東京地裁平成21年11月13日判決、知財高裁平成22年9月8日判決)が参考になります。

 TVブレイク事件は、動画投稿サイト「TVブレイク」において、権利者に無許諾で動画がアップロードされていた場合、動画投稿サイト自体は責任を負うかどうかが問題となった事件でした。ちなみに原告はJASRACで、判決文はこちらです。

 この判決では、著作権法上の侵害主体が誰かを判断する場合、単に物理的、外形的な観点のみから見るべきではなく

1 問題とされる行為の内容・性質

2 侵害の過程における支配管理の程度

3 当該行為により生じた利益の帰属等

 の点を考慮して、著作権侵害行為を直接行う者(アップロードした者)とサイト運営者を同視できるかどうかを判断すべきとしました。

 そのうえで、動画投稿サイトTVブレイクは

・匿名で投稿できるため著作権侵害コンテンツを投稿しても投稿者は責任を問われにくいシステム(TVブレイクの内容・性質)

・サイト管理者は投稿動画が記録されるサーバを管理支配し、かつメインページからリンクを貼るなどして一定の動画の視聴を推奨したりしている(支配管理の程度)

・サイトにバナーや検索連動型広告を貼っておりPVが増えればサイト管理者も収入が得られる仕組み(利益の帰属)

・TVブレイクの全カテゴリーの動画中約半数が著作権侵害コンテンツだった

 などの事情から、TVブレイクは「本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービス」でありサイト管理者も動画投稿者と同様に侵害主体となる、と判断しました。

LINE社は著作権侵害主体にあたるか?

 TVブレイクについては、いわば違法な動画投稿がされるのが前提となっているような仕組みであったため著作権侵害の主体であると判断されましたが、NAVERまとめの場合はどうでしょうか。

 NAVERまとめの場合、

・投稿者は匿名で投稿できる(メールアドレスのみで会員登録可能)

・他人のコンテンツを引用する際、一定量以上の「本文」入力や出典入力が必須ではない仕組み

・引用にあたって主従関係を判断する仕組みもない(ほとんどを引用が占めるページでもアップできてしまう)

・まとめ記事のPVが増えればLINE社は広告収入が得られ、まとめ作成者も報酬を得られる仕組み。これは著作権侵害コンテンツでも同じ。

・利用規約では第三者の権利を侵害する行為を禁止している(利用規約第3条)。また画像アップページでは「著作権や他人の権利を侵害する画像をアップロードした場合、利用規約および関連法規により処罰を受けることがあります」と明記している。もっともこの注意書きはNAVERまとめ自身が著作権侵害コンテンツがアップロードされる可能性が高い旨を認識していたことの裏返しともいえる

 などの事情が認められます。

 NAVERまとめ記事全体のうちどの程度が著作権侵害コンテンツなのかは不明ですし(TVブレイクは約半数だった)、TVブレイク事件については、いわゆるカラオケ法理を安易に適用しすぎているという批判も考えられますが、TVブレイク事件を前提とする限り、著作権侵害コンテンツの割合やその他の事情によってはLINE社も著作権の侵害主体にあたると考えられる余地は残るのではないでしょうか。

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