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2017年05月19日 08時00分 UPDATE

STORIA法律事務所ブログ:人工知能を利用した「ビジネスモデル」 弁護士が考えてみた (1/3)

「人工知能を使ったビジネスモデルは?」「AIを作った人、流通させた人、それぞれの権利配分は?」──AIと著作権に詳しい弁護士の柿沼太一さんが考えます。

[柿沼太一,ITmedia]

この記事は、「STORIA法律事務所」のブログに掲載された「人工知能(AI)を利用したビジネスモデルを考えてみた」(2016年6月1日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 前回の記事「人工知能が作った創作物、現行の法律ではどうなる?」の続きです。前回は次のところまで書きました。

  • 人が創作的な関与をしないAI創作物は、現行著作権法を前提とすると誰にも権利が発生しないことになる
  • しかし、そうするとAI創作物生成のインセンティブが失われる可能性があることから、適切な法的保護は必要
  • その際には「AI創作物を利用したビジネスモデルとしてどのようなものがあって、そのビジネスモデルにおいて誰に、どのような権利を与えることが、最もプレーヤーのインセンティブを増し、それによって豊かなコンテンツが世の中に流通することになるのか」という視点でこの問題を考えなければならない

 では、AI創作物を利用したビジネスモデルとは、どのようなものでしょうか。具体的に考えてみます。

AI創作物を利用したビジネスモデルはどういうものか

 AI創作物を利用したビジネスモデルを考えてみましょう。AI創作物の生成・利用にはさまざまな役割を持つ人が関与しています。非常に単純なビジネスモデルで考えてみましょう。下の図を見てください。

photo

 A:AIプログラムを制作した人

 B:Aが制作したAIプログラムに対してビッグデータによる教育を施した人

 C:学習済みのAIプログラムにAI創作物の創作指示をする人/完成したAI創作物を流通させる人

 「学習済みのAIプログラムにAI創作物の創作指示をする人」と「完成したAI創作物を流通させる人」は通常一致すると思うので、いずれもCとしてあります。

 まずAがAIプログラムを制作し、それにBがビッグデータによる教育を施す、この段階で「学習済みAIプログラム」が完成し、誰かがそのプログラムに創作指示をすればAI創作物が創作される状態になります。

 そこでCが「創作指示」、具体的には単に“創作ボタン”を押す行為かもしれないし、あるいは何かの材料を与えたうえでの“創作ボタン”を押す行為かもしれません、そういう行為をするとします。いずれにしても、Cさん自身は何ら創作的な行為を行っていないとします。

 それによってたくさんのAI創作物ができるわけですが、Cとしては当然、当該するAI創作物を利用して商売をしなければならないので、AI創作物を世の中で流通させる行為をします。例えば音楽であれば、レコード会社が著名歌手に歌わせたりプロモーション活動をしたりするでしょうし、文学であれば出版社が出版(リアル・電子書籍双方)活動を行うと思われます。

 そのような経路を経て、最終ユーザー(市場)がAI創作物を利用・消費することになります。

 この非常にシンプルなビジネスモデルを前提としたときに、インセンティブという観点から見ると誰にどのような権利を与える必要があるか、ということです。

 AI創作物に関する権利を与えなくても、別の方法で投資を回収できるのであれば、新しく権利を与える必要は無いのではないかということですね。

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