この点については委員会でも熱心に議論が交わされています。その結果、まずCに全てのAI創作物に関する著作権を付与するのは、保護のしすぎという点については意見が一致しています。
著作権というのは、何の登録手続きもなしに権利が発生しますし(無方式主義)、著作者人格権もあるし、保護期間も長く、ほぼあらゆる利用方法についてノーといえる権利だからです。
AI創作物は爆発的に増加する可能性が高いですから、それら全てのAI創作物に著作権が発生するということになると、Cに強すぎる権利を与えるのではないか、インセンティブ付与という観点からも保護過剰ではないか、というのが委員会の結論です。
ではどうするか。この点については知財計画2016に重要な記載があるので、そのまま引用します。
(略)あらゆるAI創作物(著作物に該当するような情報)を知財保護の対象とすることは保護過剰になる可能性がある一方で、フリーライド抑制等の観点から、市場に提供されることで一定の価値(ブランド価値など)が生じたAI創作物については、新たに知的財産として保護が必要となる可能性があり、知財保護の在り方について具体的な検討が必要である(知財計画2016・8頁より)
つまり、「AI創作物を生成したこと」ではなく、「AI創作物を世に広めて一定の価値(ブランド価値など)を生じさせたこと」に対して権利を付与しよう、ということです。
知財計画2016では「知財保護の在り方について具体的な検討が必要」と抽象的に書いてあるのですが、報告書ではこの点について「商標、または不正競争防止法の商品等表示の保護に類するような仕組みが想定される」と明記されています。
つまり、Cが生成したAI創作物全てに権利が付与されるということではなく、「登録されたAI創作物(商標類似)」「流通の結果、周知性や著名性を獲得したAI創作物(不正競争防止法上の商品等表示類似)」のみが保護されることになります。
報告書でこのような方向性が打ち出されたことから、おそらく今後もこの流れに沿った議論になるのではないでしょうか。
以上に述べたことをまとめます。
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弁護士・柿沼太一
1973年生まれ。00年に弁護士資格取得後、著作権に関する事件を数多く取り扱って知識や経験を蓄積し、中小企業診断士の資格取得やコンサル経験を通じて企業経営に関するノウハウを身につける。13年に、あるベンチャーから案件依頼を受けたのをきっかけとしてベンチャー支援に積極的に取り組むようになり、現在ベンチャーや一般企業、著作権関係企業の顧客多数。STORIA法律事務所(ストーリア法律事務所)所属。ブログ更新中。
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